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カローナの記憶20

ソフィアたちが人間世界に来てから約100年近く経った。

ピレネーが治めるこの国は、魔法先進国として謳歌していたが、

他の国も魔法文化のレベルが向上し、徐々にツクヨミ国の魔法先進国のイメージが崩れ始めてきた頃だった。


アポロ国営研究所は名称を変えて国際魔法研究所となった。

以前までは魔法と機械の双方を柱に研究を進めてきたが、

魔法のみに焦点を絞り、さらに魔法文化の研究機関として役割を与えられたのだ。

当時のガゼル所長は魔法のみに特化することに反対をしていた。

彼は宇宙工学の出身のため、機械の研究を止めることに猛反対していたのだ。

ツクヨミ国は容赦なくガゼルを研究所から追い出した。

施設の管理者が少しでも意に反する場合は、容赦なく突き離す。それが国のやり方だった。

こうしてガゼルは国営研究所を去ることになり、代わりにドラフという男が所長を引継ぐことになった。


その頃のソフィアたちは相も変わらず新魔法の開発を行っていた。

彼女たちは魔物を捕まえて、それを実験台に使っていた。


ソフィア

「やっぱこの魔物とかいう奴、実験台には最適よね」


捕まえてきた魔物たちがギャーギャー騒いでいる。

魔物というのは二足歩行もできるし、人の言葉も話すことができる。


ダリア

「まるで人間みたいね」


カローナ

「そうね。こいつらどっから湧いて出てきたのかしら?私たちがここに来た時はこんな奴らいなかったのに」


ダリア

「確かに不自然ね。なんかここ最近パッと出てきた新種の生物みたいだし」


ソフィア

「……ちょっと出元を調べてみようかしら。少し興味が湧いてきたわ」


ソフィアは水晶を取り出し、魔物たちにそれを向ける。

そして水晶には魔物たちの出生の頃の記憶が映し出された。


ダリア

「なんだこれ?生物の腹の中?」


カローナ

「全然そうには見えないわね」


ダリア

「どちらかというと、フンボルトやクラフトにある機械文明の設備に似ている気がする」


ソフィア

「そうねえ……。その直感は正しいかもしれないわね」

「この子たちはどうやら、このカプセルから出てきたみたいだし」


水晶には巨大なカプセルが映っており、その中にはたくさんの魔物が入っていた。


ソフィア

「どうやら、この魔物って奴は人間がつくったものみたいね」


ダリア

「人間が?人為的に生命体なんて作れないでしょう?」


ソフィア

「どうかしらね?」

「こんなに世界中に大量発生し始めたということは、何かしら意図があってこの子たちは生み出されたに違いないわ」

「だってこの子たち人間っぽいもん。人間の上位互換といったところかしら」


カローナ

「確かに人間っぽいって言えば人間っぽいけど」


ソフィア

「実験も疲れたことだし、気晴らしに見に行きましょうか?」


ダリア

「そこへ行くの?」


ソフィア

「うん。だって気にならない?」


ダリア

「うーん。まああんまり興味ないけど、暇だから見に行こうかな」


ソフィア

「よし。じゃあ決まりね」


ソフィアたちは転送魔法を生成し、この水晶に映っている場所へ移動した。

彼女たちがたどり着いた場所は魔物の発生地だ。

ソフィアたちは辺りを見渡す。

そこには水晶で見た大きなカプセルがたくさん設置されていた。


ソフィア

「たくさん魔物が入っているわね」


ダリア

「本当に人為的に作られているのかしら?」


暫く彼女たちは周りをうろついた。


ダリア

「どこを見渡しても魔物だらけ」


カローナ

「誰もいないね。留守なのかな?」


グオオオオ!!


遠くから魔物の鳴き声が聞こえてきた。


ダリア

「何かしら?」


ソフィア

「あっちに魔物がいるみたいね」


ソフィアたちは声が聞こえたほうへと歩いていく。

すると、その先には男性が二人、魔物に襲われていた。


「ダマ様!?」


一人の男が倒れた男の元へと駆け寄る。


「意識がない……。でもまだ呼吸はあるな!!」


男は倒れた男を担ぎ上げ、魔物から逃げようとする。

しかし、2体の魔物が男たちの前に立ちふさがった。逃げられそうにない。


グオオオオ!!!


魔物が男たちへ襲い掛かる!

男は片手に持っていた銃で攻撃するものの、

魔物たちはびくともしない。

そして男は魔物の鋭い牙で首を噛まれてしまった。


ダリア

「あーあ」


カローナ

「魔物は銃が効かないのね」


「あ…ぐああ……」


グオオオオ!!


魔物たちは男たちを捕食しようともう一度噛みつこうとした。

ソフィアは氷魔法を生成して、それを魔物へと放つ!

氷魔法は魔物たちの頭を吹っ飛ばした!


グシャア……


二体の魔物は倒れ、そしてソフィアは男たちの前まで歩き出す。


カローナ

「ソフィア?」


ソフィアは倒れた男性の体に回復魔法を唱える。

みるみる男の傷が塞がっていく……!


「ぐう……」


二人の内一人が意識を取り戻した。


「何者……?」


ソフィア

「あなたたち面白いことをしているのね」

「この動物たちは貴方が作ったの?」


「そうだ……」

「お前は…魔法使いか?」


ソフィア

「いいえ。私たちは魔女よ」


「魔女……?」


ソフィア

「少し貴方たちに興味が湧いてきたわ」

「貴方の名前は?」


ダマ

「俺の名前はダマ……お前は?」


ソフィア

「私はソフィア。よろしくね」


ダリア

「ソフィアー。そろそろピレネーとの約束の時間になりそうだよ」


ソフィア

「そうだった。忘れるところだったわ」

「ダマ……また会いに来るわ」


ソフィアはそう言い残し、ダリアとカローナを連れてその場を立ち去った。


ダマ

「……なんだあいつらは?」


ノーズ

「ごほッ……ごほッ……」


もう一人倒れていた男が血反吐を吐き散らした。


ダマ

「ノーズ!?」


ダマは起き上がり、もう一人の男の助けに入った。

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