カローナの記憶17
ケプラー国王の死後、ツクヨがツクヨミ国の王として継承された。
ソフィアたちの想定通り、ツクヨは魔法文化を否定し、ソフィアたちを王国から地方へ左遷させた。
しかし、王子となったピレネーはツクヨに反発し、ソフィアたちを王国へ戻すように申告をした。
ピレネー
「ツクヨ国王!魔法文化は我々の宝です!ケプラー元国王の御意思を踏みにじるおつもりか!?」
ツクヨ
「ピレネー。お前たちは騙されているのだ。あのソフィアとかいう魔女たちに」
「奴らが何の考えも無しに我々にただで魔法を教えていると思うのか?」
「あのソフィアとかいう奴は一体どこから来たのだ?いつの間にか我が国の中枢に立っている。不思議とは思わないのか?」
ピレネー
「何をおっしゃっているのです国王!!ソフィアたちは我が国の恩人ですぞ?彼女たちがいなければ、今頃この国は存続していなかったでしょうに」
「彼女たちが我々に魔法を教えてくれたが故、我々は戦争に勝つことができた!違いますか?」
ツクヨ
「それは違うぞピレネー」
ピレネー
「!?」
ツクヨ
「我々は胡散臭い魔法なんてものに頼らなくても、十分に戦力を保持していた」
「我々の騎士団は他国より優秀で、少なくとも魔法が無ければ負けるなんてことは無かったはずだ」
ピレネー
「その根拠はどこにあるのでしょうか?フンボルトやクラフトのような機械文化を持ちえず、我々が魔法無しに戦争に勝てたとは思えません!!」
ツクヨ
「黙れピレネー!!貴様は何もわかっていない」
「確かにお前の言うように魔法によって我々は世界でも一目置かれる存在となった…しかしだ」
「その魔法文化は我々の国土からもたらしたものでは無い。あの魔女とやらの得体のしれないものから授かっものだ」
「お前と父上はあの魔女たちを買っていたが、私は違う。奴らには必ず裏がある」
「あいつらが何も考え無しに、利益なしに我々に無償で魔法を教えると思っているのか?」
ピレネー
「またその話ですか…。いいですか国王!ソフィアたちが我々人類に魔法を教えるのは、先々にある魔女たちとの戦争のためです」
ツクヨ
「その話こそどこに根拠がある?魔女が人間を滅ぼしにやってくるという話の根拠はどこにあるのだ?」
ピレネー
「それはありません。ありませんが、そうでもない限りソフィアたちは我々に魔法を教えるメリットは無いと思われます」
「それに私はソフィアがウソをついているようには到底思えません!」
ツクヨ
「バカが…。いいかピレネー。奴らは我々から信頼を得るためなら嘘など簡単につくのだ」
「奴らの目的は我々が想定している以上のものだと思われる。我々人類に何かをさせようとしていることは明白だ」
「お前には分かるまい。奴らの表情を。表に出さないように隠しているあの悍ましい素顔を!」
ピレネー
「わかりません。国王はどこでそんな表情を見たとおっしゃるのですか!?」
ツクヨ
「もうよいピレネー。これ以上の話は無駄だ。下がれ」
「私はお前に何を言われようと、ソフィアたちを戻すつもりも、魔法文化を広めるつもりも更々ない」
ピレネー
「このままでは人類が滅びるかもしれませんよ!?」
「我が国が世界に魔法を広めなかったゆえに人類が滅びるなど、そんな汚名を被ることなどできません!」
ツクヨ
「世迷言を言うな!!さっさと去れ!!」
ピレネーは無念にもツクヨを説得することができず、その場を立ち去っていった。
ソフィアたちはツクヨミ国の外れにあるカグヤへと移籍することになった。
ソフィアたちが出発する前夜、彼女たちはピレネーと顔合わせをしていた。
ソフィア
「誠に残念ではございますが、明日、このアポロからカグヤに移動することになりました」
ピレネー
「ああ……本当に残念だよ」
「もはやあの国王とは話が通じない……このままでは人類がまずい」
ソフィア
「落ち着いてください。ピレネー王子。焦る気持ちもわかりますが、ここは少し時を待ちましょう」
「何事にもタイミングが必要です…時期を見計らって活動を再開しましょう」
ピレネー
「ここで指をくわえて待てというのか……それでは…」
ソフィア
「ここは我慢ですピレネー王子…」
ピレネー
「……」
この日、ソフィアたちはアポロを最後にし、カグヤへと向かった。
カローナ
「これからどうする?」
ソフィア
「ツクヨが倒れるまでは、魔法の研究に専念しましょう。まだまだ試すことはあるわ」
ダリア
「あーあ…せっかく魔法を教えたのに。あいつらはそれを捨てようとする。本当に人間は愚かだね」
カローナ
「なんかここ数年で魔法が絶やされてしまうんじゃないかって、少し心配なのよね」
ソフィア
「大丈夫よきっと。ツクヨは魔法文化を広めない方針だけど、きっとそんなに長くは持たないわ」
「近々アポロに戻れる」
カローナ
「そうなの…?」
ソフィアの口ぶりからはツクヨの時代が長く続かないと言っているように聞こえた。
彼女は何かを確信しているようにカローナは思えたのだ。




