カローナの記憶13
アポロ国が戦争に勝利し、3カ国は再びツクヨミ国として集結することになった。
当初ツクヨミ一族がツクヨミ国の運営を行う想定でいたが、
ソフィアたちの提案により、その王族とは別に国の運営機関を設けることにした。
一般市民から優秀な者を選定し、その者を国の統治機関に置くことにしたのだ。彼らを”指導者”と呼ぶ。
指導者を設けた理由は王家一族の絶対的支配を緩和させるためだった。
王家の判断だけではなく、指導者の客観的な判断を入れることで、より現実的で精度の高い決断をさせることが目的だ。
ケプラー国王は、最初はソフィアたちに不信感を抱いていたものの、戦争に勝利してから徐々に彼女たちを信用するようになっていった。ソフィアたちの”信頼ゲーム”は順調に進んでいたのだ。
ソフィアたちの目的は人間たちの信頼を得て、人間を管理下に置くことだ。
最終的にはソフィアたちの存在を人間の宗教とすることで、人間を支配下に置こうとしている。
人間はソフィアたちのために尽くすことが第一であり、ソフィアたちのために生きることが当たり前と教育。そして人間たちを上級魔女たちと戦えるほどの戦力に仕立て上げ、来る日に大ババたちと戦う。
それが彼女たちの計画だった。
ダリア
「計画は順調ね」
カローナ
「うん!このまま人間に魔法を教えて強化していきましょう」
それから数か月後、ソフィアたちはツクヨミ国の兵士たちに魔法を教え始めた。
最初は全然うまくいかず、半ばあきらめ状態であったが、あることをきっかけに人間たちは魔法を使えるようになった。
そのあることとは、ソフィアたちがツクヨミ国に滞在してから1年後に起こった出来事だった。
ある日、アポロ国の研究機関の一つである鉱山部隊が、カグヤ国の不死山から珍しいものをとってきた。
彼らがとってきたのは虹色に輝く石だった。その部隊のリーダーであるスリランカ博士は、今までこのような鉱石は見たことが無いという。ソフィアはその石を見て驚愕した。その石は大量の魔力を帯びていたのだ。ソフィアはその石を取り上げ、まじまじと見つめる。
スリランカ博士
「こらッ!!そんな扱いをするんじゃない!!落としたどうする!?」
ソフィア
「……これは」
ソフィアは片手でその石を砕いた!
スリランカ博士
「おいッ!!?」
スリランカ博士はソフィアがいきなりその石を砕いたことに大声を上げる!
ダリア
「ソフィア……それ……」
ソフィア
「ええ。これはすごいわ」
ソフィアが握りつぶした石は、彼女の手のひらの中に溶け込んだ。
そしてソフィアの手に魔力が注入された。
カローナ
「何この石……?」
ソフィア
「わからない。私も初めて見た。こんなものが人間世界にあるなんて」
スリランカ博士
「おい!!どうしてくれるんだバカ者!!それは我々が決死の想いで拾ってきた石だぞ!!」
研究員
「まあまあ博士。まだ石は大量に残ってますし、落ち着いてください」
ソフィア
「他にもたくさんあるの?」
スリランカ博士
「たくさんあるとかそういう問題じゃない!!これは新種の鉱石だぞ!!ふざけるのもたいがいに……」
ソフィア
「その石。全て私が預かるわ」
スリランカ博士
「なんだと!?」
研究員
「いくらなんでもそれは……」
ソフィア
「あなた方がどうしても反対するというのなら、国王に頼んでみようかしらね」
スリランカ博士
「バカが!!この新種の鉱石をお前らに譲るわけなかろう!!」
しかし、翌日、ケプラー国王はスリランカ博士にその鉱石を全てソフィアに渡すように命令した。
ソフィア
「それではこの石。すべて私がもらい受けますね」
スリランカ博士
「ば……ばかな……」
ソフィアたちはスリランカ博士たちが採ってきた新種の鉱石を全て魔法部隊へ持ち去っていった。
スリランカ博士
「一体……なんだというのだ…いくらなんでもおかしいだろ……」
「なぜ国王は…あんな得体のしれない女どもに貢ぐのだ……おかしい…何かがおかしい」
翌日、ソフィアたちは早速その石を魔法部隊全員に手渡す。
そしてその石を軽く握りつぶし、体内へ取り入れるように指示をする。
兵士たちはソフィアの指示通りに実行する。
ダリア
「え…?」
ダリアは石を取り込んだ兵士たちを見て、少し驚いていた。
ダリア
「兵士たちから魔力を感じるわ……」
ソフィア
「皆の者!昨日教えたやり方で魔法を生成してみろ!」
兵士たちはソフィアたちから教わった魔法生成を試した。
そうすると、何名かの兵士の手に小さな火が灯った!
カローナ
「出た……」
兵士たちは自分たちの手から火を出したことに驚きふためく!
ソフィア
「いい調子よ!そうやって少しずつ前へ前進しなさい!何度も何度もできるまで挑戦しなさい!」
兵士たちはこの後も訓練を続け、そして次第に炎魔法の生成を身に着けることができた。
スリランカ博士が採ってきたこの石は後に魔不死石と呼ばれ、この魔不死石を使って誰でも魔力を帯びることが可能となった。
最初は魔不死石を使って兵士たちが魔法を使っていたが、次第に魔不死石無しでも魔法を生成できるようになった。
魔不死石を使用する過程で、どうやら自分たちで魔法を生成するコツをつかんだようだ。
ソフィアが以前人間の血液を調べた結果の通り、人間の血液にも僅かだが魔法粒子の成分がある。
そのため、魔不死石無しでも魔法を生成することができたのだ。
ソフィア
「これは驚いた……まさか人間が本当に魔法を使えるようになるとは」
「これなら人間どもに魔法文化を根付かせることができそうね」




