カローナの記憶7
ソフィア
「この人間世界は見ての通り、私たちの世界と似ていて、場所自体が広大で、さらに人間もいっぱいいる」
「彼らを味方につけることができれば、戦力に申し分は無いんじゃないかしら」
カローナ
「人間を味方に!?それは無理よソフィア」
「人間は確かに多くいるけど、上級魔女に一瞬で消されてしまうわ!」
「人間がどんなに数がいようと、大ババには勝てないよ!」
ソフィア
「それはわかっているわカローナ。だから……」
「だから人間を魔女と戦えるレベルまで強くするのよ!」
カローナ
「人間を……強く……そんなこと」
ソフィア
「できるわ」
カローナ
「!?」
ソフィア
「人間は確かに魔法が使えなくて、復活することもできないけれど、人間の体の構造はほとんど私たち魔女と一緒だわ」
「私がもっと詳細に人間の体を調べたら、人間にも魔法粒子を生成する血液がわずかだけど存在しているの」
「だから、もしかしたら人間も魔法が使えるのかもしれない……いや、たとえ使えなかったとしても、人間が魔法を使えるように強化してしまえばいいの」
「私たちはいずれ、大ババを殺せるほどの魔法を生み出さなければならない。その一環で人間を強化できる魔法ができれば、それに越したことはない」
「どう?そう思わない?」
ダリア
「……」
カローナ
「……な…なるほど」
「確かに人間を魔女と戦えるレベルまで強化できれば、上級魔女たちとも戦えるのかもしれない」
ソフィア
「そう。だからまずは人間と仲良くするの」
「人間を味方につけて、そして大ババを倒す生物兵器へと育て上げるの」
「人間たちには魔女という脅威が迫っていることを教えて、そして私たちと共に戦うように促すの」
カローナ
「うんうん……なるほどなるほど……」
「じゃあ、まずは人間を支配して、奴らを支配下に置くことから始まるのね」
ソフィア
「いいえ……カローナ。人間を配下に置くことは確かだけど、"やり方"ってものがあるのよ」
カローナ
「やり方?」
ソフィア
「そう。やり方。ただ力づくで人間を支配しようっていうのはド三流のやることよ」
「人間は弱いから、一見簡単に支配できそうに思えるけど、なかなかうまくいかないと思うのよね」
「私たちは魔女と言えど3名しかいないの。人間を恐怖で支配するには中々骨が折れると思うわ」
「それに支配している間に何回か、人間たちが結束して歯向かってくるに違いない。そうなるとせっかく人間を支配下に置いたとしても、組織としてはぜい弱なものになってしまうわ」
「だから力で抑えるのはだめよ。力ではなく"信頼"を勝ち取るの」
ダリア
「……信頼」
ソフィア
「そう。人間は力あるものを中心に集団を成す生き物なの。その人間の習性を利用して私たちの仲間につけようってわけよ」
カローナ
「なるほど……人間どもを欺いて、人間から信頼を得ると……」
「そして人間から信頼されれば、仲間として認識されるというわけね」
ソフィア
「仲間として認識されるのもいいけど、さらにもう一歩踏み込みたいところだわ」
「人間と我々は対等。だけど私たちは人間たちにとって頼れる存在にならないといけないの」
「私たちがいれば人間は豊かに暮らせる。私たちがいれば、脅威の魔女と戦える」
「逆に私たちがいなければ、生きることができない」
「ここまで持ってくれば、私たちの勝ちよ」
「人間にとって無くてはならない存在になれば、嫌でも人間どもは我々に協力してくれるわ」
「そう……たとえ自分たちの命をかけてでもね」
ダリア
「すごい…ソフィア。もうそんなことまでも考えているなんて」
ソフィア
「いいえ。私一人ではこの案を考えることはできなかったわ」
「ダリアとカローナが私を信じてついてきてくれたから、私もここまで頑張れた」
「あなたたちが居なければ、私はこんな突拍子の無い案を思いつくことはなかっただろうね」
カローナ
「ソフィア……私その案に乗るよ。人間を味方につけてあの大ババを倒そう!」
ダリア
「そうね…。なんだかやれる気がしてきたわ!」
ソフィア
「ありがとう二人とも……。じゃあさっそく人間たちから信頼を得る作戦を練っていきましょう」
「人間の信頼を得る。これが大ババ打倒計画の第一段階であり、この一番初めの段階がうまくいくかどうかで大きく未来が左右される」
「人間どもから信頼を得る…。信頼ゲームをここから開催しましょう」
カローナ
「ゲーム?」
ソフィア
「そう……これはゲーム」
「この世の全ては面白さであふれている。私はそれを信条として生きてきたわ」
「人間を味方につけるのも、大ババを倒すのも全てゲーム」
「私はこのゲームに勝ちたい。このゲームに勝って、新たな世界を築き上げたい……!」
「さあ、ダリア、カローナ。ゲームを始めましょう!」
「このゲームはきっと面白くなるわよ……!」




