不死山12-2
ソフィア
「騎士団が用意した魔物に襲われ、貴女は毒を受けた」
「そして偽の魔女を用意して、貴女を助ける代わりに村の魔法障壁を解くように仕向けたのよ」
「貴女のお父様は貴女を助けるために必死に走って、そして貴女を助けるために魔法障壁装置を停止させた」
「お父様は大きな罪に悩まされたでしょうね。娘を助けるためにとはいえ、村の皆を裏切って魔法障壁装置を停止させたんだもの。苦渋の決断だったと思うわ」
「村の皆を騙してまでも貴女を助けようとした。本当ならばそんなこと本心でしたくない。しかしあの騎士団はそんな彼の気持ちを踏みにじって、魔法障壁を解くように条件を出したの」
カリア
「……許せない」
ソフィア
「それに貴女のお父様は元々国の研究所の所長だった人よ。国営騎士団は魔法障壁装置を解除させるためにわざとお父様を狙って計画を立てたのよ」
「魔法障壁装置を解除できるのは開発者の貴女のお父様だけ。それを見計らって貴女たちを狙ったんだわ」
「彼らの思惑通り、魔法障壁装置は停止し、そのタイミングを見計らって魔物をペルー村へ放って襲わさせた」
「そして騎士団が助けに入ってお手柄をもらう。見事なまでに完璧なストーリー」
カリア
「許せない許せない許せない許せない!!!」
ソフィア
「そしてさらに、貴女のご友人であるララフォー・メールが濡れ衣を着せられて騎士団に処分されるところを貴女は今目撃したのよ」
カリア
「濡れ衣!?」
ソフィア
「そう……魔物を操って村を襲わさせた犯人としてララを魔女と仕立てた」
「そして魔女である彼女を騎士団が葬り去ることにより、さらに騎士団は実績を積めることができるのよ」
カリア
「一体どこまで腐ってるんだ………国の騎士団は!?」
ソフィア
「それだけではないわ。私たち人類の天敵であるこの魔物たちも、この国で作られたものなのよ」
カリア
「なんだって!?」
ソフィア
「ほら水晶を見てごらんなさい。国のラボで魔物はつくられているわ」
水晶には魔物たちが試験管に入れられており、作業をしている国営の研究者たちが映し出されていた。
カリア
「何……これ」
ソフィア
「彼らはね。魔物をつくっているの」
「民衆をコントロールするためにわざと天敵をつくっているのよ」
カリア
「何のために!?どうして!?」
ソフィア
「カリア…教えてあげる。国の者どもは民衆を自分たちの都合のいいようにコントロールしたいの」
「民衆をコントロールするために天敵をつくり、それを民衆に襲わせ、そして民衆を守ることで己の権威を保持しているのよ」
「先ほどの騎士団と同じ。すべては民衆を従えて王位に立つため…そして民衆をコントロールすることで己の立場を有利にするため」
「いいカリア。人間は自分の利益のためならなんだってするの。他人を騙そうが、支配しようが、何の躊躇もなくやってのける」
「カリア。これがこの世の真実。そして貴女が置かれている立場」
「貴女は人間に騙されてすべてを失った。貴女の日常も、友も、そして………お父様も」
ザシュッ!!!
ガゼルが目の前でドラフに串刺しにされる!!
カリア
「いやあああ!?やああああ!!!?」
カリアは父が殺されるのを目の前にして、あまりのショックに後ろへ転倒しそうになる。
そこにソフィアがカリアの背後で転倒を食い止め、カリアの両肩に手を添える。
ソフィア
「お願い……カリア。魔女になって私たちと一緒に戦って」
「人間たちは醜い生き物なのよ。己の保身のために平気で人を殺す。たとえ罪の無い人間であっても」
「人間を滅ぼしましょうカリア…。貴女の父と友人を殺した人間どもを倒すのです」
カリアの体が徐々に黒くなっていく……。
ソフィア
「そして私たち魔女だけの国を作りましょう。悪魔である人間共をこの世から一匹残らず消し去って、私たち正当な魔女だけの世界を作りましょう!」
「さあ…カリア。力を貸して……!」
フィイイイイイン!!!
カリアの全身が黒く染まり、彼女は魔力を手に入れる!
トランヴェル
(カリア!!ダメだ!!これは…これは偽の記憶だ!!!)
トランヴェルは叫ぶものの、カリアの耳には届かない!!
カリアは魔法で次々と騎士団たちを葬り去っていく!
そしてララを背負ってペルー村から出ていった。
トランヴェル
(くそっ!?なんだこの記憶は!?サラの時以上に大きく記憶が改ざんされている!?)
シーンは次々と変わっていく。
ソフィアの力でララは蘇り、共に魔女として人間と戦っていく。
魔物の研究所を破壊し、ミランダ、サラ、イト、ルイと仲間を増やしていく。
そしてダマとノーズを撃破し、国の中枢であるアポロへと向かう。
アポロでソフィアと力を合わせ、魔氷を発生させる!
そして多くの人間を魔氷で凍らせていった!
トランヴェル
(違う!?こんなの違う!?カリア!!騙されないでくれ!!カリア!!)
波が激しくなり、トランヴェルは偽の記憶の波にどんどん流されていく!!
そしてトランヴェルは波に打ち上げられ、砂浜に倒れ込む。
トランヴェル
(……波を抜けたか……)
トランヴェルの目の前にはカリアとソフィアが立っていた。
カリアたちはトランヴェルに気が付き、トランヴェルの方へ歩いていく。
ソフィア
「誰だお前は?」
カリア
「……フクロウ?」
トランヴェル
「カリア!!私だ!!」
ソフィア
「どこから入ってきた!?何者だ!?」
カリア
「トランヴェル……」
トランヴェル
「カリア…お前を…助けに来た!」
ソフィア
「トランヴェル?誰だそれは!?お前はカリアの記憶には存在しないはずだ!!」
カリア
「あれ…どうしてトランヴェルって今……」
「なんで…初めて会うはずなのに…初めて会うのに何で私はあなたのことを知っているの?」
トランヴェル
「初めてなんかじゃないさ!!」
カリア
「!?」
トランヴェル
「今まで一緒に…一緒に戦ってきた仲間だろ!!」
カリア
「仲間……」
ソフィア
「カリア!!こいつの言葉に耳を傾けるな!!」
「部外者め!!どうやってここに入ってきたかわからないが、お前を排除する!!」
ソフィアは氷魔法をトランヴェルへ放つ!!
トランヴェルはそれをもろに受けるが、怯まずカリアの方へ羽ばたいていく!
ソフィア
「効いていない…!?なんだお前は…!?」
ソフィアは氷魔法をトランヴェルへ連発していく!
しかし、トランヴェルは氷魔法を受けても受けても一向に倒れない!
ソフィア
「なぜ効かない!?一体何者だ!?」
トランヴェル
「カリア…思い出してくれ。私たちがこれまで必死に戦ってきた記憶を」
「そんなまがい物の記憶に騙されないでくれ…。これが…本当の…本当の私たちが生きてきた道!!」
フィイイイイイン!!!
トランヴェルは能力を発動し、カリアに自分のこれまでの記憶を共有させる!
ソフィア
「何をするつもりだ!?」
トランヴェル
「これがカリアと私たちのかけがえのない大切な記憶!!」
カリア
「!!?」
カリアの脳裏にトランヴェルの記憶が流れ込んで行く!




