不死山12-1
トランヴェルが流されている最中、トランヴェルの脳裏にカリアの今までの記憶が流れてくる。
カリアの幼い頃の記憶が次々とトランヴェルの脳裏に映し出される。
母親と共に街を歩いているシーンや、父親とモノづくりをしているシーン、そして最愛の母親が病棟で亡くなったシーンが映し出された。
少し成長して、街でララと一緒に遊んでいるシーンが流れる。二人ともまだ幼い。
防具の作り方を父ガゼルから教わるシーン、そしてガゼルと共に素材を集めに山へ行くシーンなど様々な記憶が映し出されていく。
ガブッ!!
カリアが魔物に噛まれるシーンが映し出された!
カリアは必死に喰らいついてくる魔物を蹴って、何とか逃れようとしている。
ガゼルも棍棒で魔物の頭を何発も叩いている。
そこに一人の女性が森の茂みから姿を現す…。そしてその女性の肩にはフクロウがとまっていた。
トランヴェル
(これは…はじめてカリアと出会った時の……)
トランヴェルは思い出す。魔女マベルと共に魔女会へ出席するために森の中を歩いていたことを。
そして魔物に襲われているカリアとガゼルに出会った時のことを。
魔物はマベルによって爆散し、ガゼルはマベルに寄り添って娘の助けを請う。
マベルはカリアを助けるためには、村の魔法障壁を解除するようにガゼルに条件を出す。
ガゼルはそれを承諾し、魔法障壁の解除をしにペルー村へ走っていった。
トランヴェル
(すべてはここから始まったんだったな……)
しばらくカリアは魔物の毒を耐え続けた。
その後、マベルに回復してもらい、カリアは正常へ戻った。
それからドラフたちツクヨミ国の騎士団に会い、ペルー村へ向かうことになった。
ペルー村の悲惨な状況が映し出される。
カリアは変わり果てたペルー村の姿を見て涙を流す。
病室が映し出される。そこでララと会い、
カリアはララが生きていたことに安堵を感じていた。
そして次々とシーンは変わっていき、カリアが夜、御神体に向かっていくシーンが映し出される。
トランヴェル
(ここは……)
カリアは御神体の扉が開いていることに気づき、中へと入っていった。
彼女が恐る恐る進んでいると、爆発音が彼女の耳元に聞こえてきた。
カリアは爆発が聞こえた方向へ走った!そして目の前にある扉を開けた!
グシャア……
カリアの目に、ハンマーで潰されたララの姿が映っていた。
カリア
「いやああああああああ!!?」
カリアは悲鳴を上げる!!ララが騎士団に殺されるところを見たのだ!!
そしてカリアの背後にフクロウが一匹やってくる。
トランヴェル
(そうだ…この時、私はカリアを魔女にしたんだ。ララを助けるために…カリアを説得しに入ったんだ)
しかし、フクロウの姿は人の姿へと変貌していった。
トランヴェル
(なんだ?)
フクロウは人に代わり、悲鳴を上げたカリアの背後に忍び寄る。
その人型は魔女ソフィアだった。
ソフィア
「カリア」
カリア
「!」
カリアは背後へ振り向く。
カリア
「誰!?」
ソフィア
「私は魔女ソフィア。あなたに真実を教えに来たわ」
カリア
「真…実?」
ソフィア
「そう真実……。ほらごらんなさいカリア」
ソフィアは遠くの方へ指をさす。カリアはソフィアの指さした方向へ顔を向ける。
そこには騎士団に八つ裂きにされているララの姿があった。
カリア
「ララ!!」
ソフィア
「ララは死んだわカリア」
「ララは人間に殺されたのよ」
カリア
「なんで!?どうして!!?ララが何をしたっていうの!?」
ソフィア
「これを見てカリア」
ソフィアは懐から水晶玉を取り出す。
その水晶には騎士団が魔物を従えており、そしてペルー村へ魔物たちを放つシーンが映し出されていた。
カリア
「何……これ?」
ソフィア
「すべては仕組まれたことなのよカリア。これが真実」
「人間どもは貴女が住む村に魔物を放ったのよ」
ペルー村に放たれた魔物たちがペルー村の人々を襲い始めた。
そして魔物たちはペルー村の人々を次から次へと貪り、喰い殺していた。
その様子を騎士団が村はずれに固まって嘲笑いながら見ていたのだ。
カリア
「どうして……?どうしてこんなことをするの!?」
ソフィア
「彼ら騎士団はわざと村に魔物を襲わさせたの。彼らがあたかも助けに来たように魔物を倒すことで、ペルー村を救ったように見せるためよ」
暫くして騎士団がペルー村に介入し、魔物たちを駆逐していく。
カリア
「一体何のために!?何のためにこいつらはこんなことをするの!?」
ソフィア
「理由は簡単よ。彼らは騎士団として実績が欲しかったのよ」
カリア
「実績……?」
ソフィア
「騎士団はここ数年、魔女も龍も倒せていない」
「彼らの存在意義は魔女と龍を倒すこと。彼らがそれをできない以上、彼らの地位と名誉が無くなってしまう」
「だから彼らは考えたの……。実績を無理矢理つくっちゃえばいいんじゃないかって」
カリア
「何を…言って……そんなバカなことが…」
ソフィア
「あるわよ」
カリア
「!?」
ソフィア
「いいカリア。人間というのはね…己の保身のためなら何でもするのよ」
「彼らは魔物や魔女、龍を倒すことで国から報酬をもらっているの」
「しかし彼らはそれができていない。ということは彼らはこの国では不必要となり生活ができなくなるわ」
「だからこそ彼らは自分たちのために実績をつくろうとしたの。それを人為的にね」
「あらかじめ魔物を用意して村を襲わせる。そして自分たちが助けに入って実績をたてる」
「これこそが彼らの目的。彼らの存在を守るために行ったシナリオなのよ」
カリア
「そんな……」
「そんなもののために…皆を…皆を殺したとでも言うの!?」
ソフィア
「そうよ。だってそうしなきゃ、彼らが死んでしまうもの」
「彼らがこの国で生き延びるために彼らが仕組んだことなのよ」
「だからカリア。あなたが魔物に襲われたことも、これも仕組まれたことなの」
カリア
「!?」
ソフィア
「だってそうでしょ?いつも貴女とお父様で防具の素材を取りに行っている山に、まさかあんな強い魔物が出てくるなんて不自然に思わなかった?」
「おかしいと思わない?普段は魔物なんていないのに、この時だけ魔物が現れた。おかしいでしょ?」
カリア
「……まさか」
ソフィア
「そのまさかよカリア」
「貴女と貴女の父ガゼルは騎士団によって騙されたのよ」
カリア
「……!」




