慈悲なる無慈悲な告発3
(……どうしてだろう)
(なんでこうも……うまくいかないのだろう……)
(私はただ……皆を救いたいだけなのに……)
(……)
(いや……私が悪い……)
(私が……魔法を使えないから……)
(ちゃんと……皆に伝えることができなかったから……)
「ララ!」
ガゼルは崩れゆくララを抱き締める。
ララの口元から血が溢れ……目から涙が大量に流れていた。
ララの意識が朦朧としていく……。
トランヴェル
(ララ……!死ぬな!)
(ここで死んだら……何もかも終わりなんだぞ……)
(その力で……皆を救うのではないのか!?)
ララ
(……!)
ドラフは様子をみていた…。
お腹を抱えて跪くララの様子を…。
ドラフ
(さあ……本性を見せろ……魔女よ……)
バチッ!
ガゼル
「!」
ララの体に雷が走る……。
バチバチバチッ!!
ガゼル
「ララ………!」
ララの電撃によりガゼルはララから引き離された。
ララのお腹には電撃が纏い……煙が立ち上る……。
先程兵士に刺されたお腹の傷は塞がっていた……!
ドラフ
「ついに正体を表したな魔女よ!」
ララ
「魔法が…発動した…!?」
「やった…これで…皆を…」
魔法が使用できたことに浮かれた瞬間に気づく…。
すでに多くの兵士に囲まれ、
長槍で突かされようとしていたことを…。
バチバチッッ!
ララに纏う稲妻が長槍を破壊する!
「槍が…!?」
「怯むな!突き進め!」
多くの兵士たちがララに剣を向けて立ち向かっていく!
ララは驚き一歩立ち退く…。
彼女の後ろ足が地面についた瞬間、雷が地面を走った!
ララ
「はっ…」
ララの足から放たれた雷は兵士たちの足を焦がす!
兵士たちはその場で倒れこむ…。
ララ
「ごめんなさい…!」
ララはまだ自分の魔法をうまく制御できない…。
危うく兵士たちを殺してしまうところだった。
「前方部隊伏せろ!」
どこからか掛け声が聞こえる…!
前方の兵士がしゃがみ、その後ろには多くの兵士たちが杖に炎を纏わせていた。
「放て!!」
合図と共に数多くの火玉が放たれる!
ララ
「やめて…」
ララは左手で顔を防ぎ、右手を伸ばした!
多くの火玉が彼女に命中し、爆発を起こした…!
ドオッ!!
御神体から爆発音が鳴り響く…!
黒い煙が立ち上る…。
ガゼル
「ララ…」
ドラフ
「第二波準備しろ!」
魔法を放った兵士たちは再び詠唱を唱え出す。
黒い煙が明けてきた…。そこには雷を身体中に纏ったララが立ち尽くす…。
ドラフ
「無傷…」
コッホ
「彼女は本当に…魔女だったのか…!?」
シュッ!
突然鎖が一直線にララへ向かっていく!
彼女の右腕に鎖が巻き付けられる!
鎖の先には魔女狩隊の一人、ナハンジがいた。
ナハンジ
「ドラフさん…後はお任せを」
ララは必死に鎖を外そうとするものの、全く外れそうにない。
ナハンジは鎖を自分の方へ引っ張りあげる!
グン!
ララが鎖に引っ張られる!
そして剣を持った魔女狩隊二人がララへ向かっていく!
ララ
「…!」
ララは身体中に纏った雷をさらに強化させる…!
魔女狩隊の剣とララの身体が接触し、剣先と雷が摩擦して火花を散らす!
ガガガ…!
バチッッ!
剣が弾かれ魔女狩隊二人は体制を崩す!
ナハンジ
「奴には物理攻撃が届かない…ミハエル!」
ミハエル
「あいよ!」
ミハエルと呼ばれる女性は自分より巨大な弓を出現させ、紅色の矢を引いた!
ミハエル
「行けッ」
バシュッ!
紅の魔力を帯びた矢が真っ直ぐララへ向かっていく!
ララ
「ッ…!」
ララは矢を止めようと左手で雷を放つ!
しかし矢は雷を突き抜けてララの右肩に命中した!
ドス!!
ララ
「…痛い…あ…ぐ…」
ララは左手で刺さった矢を引き抜こうとした…。
しかし…鎖と同様に矢を取ることができない…。
矢から紅の粒子が飛び散り、ララを惑わす…!
ララ
「…何…これ…身体が…変…」
ララは自分の身体の異常を感じていた…。
ミハエル
「どうやらこの魔女には効果があるようね」
サハンジ
「魔女の動きが鈍くなったな…身体に毒と痺れが回ったか」
ララ
(……まずい…くらくらする…)
(逃げ…なきゃ)
ララは出口へ逃げようと駆け出す!
ララの足が地面に着く度に地面に雷が走る!
騎士団たちは雷に足を焦がされ、阿鼻叫喚となる中、
魔女狩隊は怯むことなくララへと向かっていく!
ララ
(あと…もう少し…もう少しで外に)
グン!!
ララは右手に巻き付けられた鎖によって引っ張られ、進行を阻害された!
ナハンジ
「逃がすか魔女よ…」
「サカ!イト!今だ!」
魔女狩隊の中から二人の兵士がララへ斬りかかる!
ララは二人のスピードについてこれず、刃を身体に差し込まれる!
バチバチッ!
しかし、刃は雷で焦がされ…ボロボロになってしまった…!
サカ
「くそ…刃が通らねぇ!」
イト
「だが、奴の動きはド素人そのもの!漬け込める隙がある!」
二人の兵士サカとイトはボロボロになった剣を投げ捨て、腰に着けていたもう一本の剣を抜く!
ララ
「お願い!やめて!!」
彼らは問答無用と言わんばかりにララへ立ち向かっていく…!
ララ
「嫌あ!!」
カッ!
一瞬光がその場を包んだ!
ナハンジ
「ぐ…」
兵士たちは圧倒的な光に目を眩ます!
バチイイイイイイイイイイイイイイイ!
次の瞬間、雷が魔女狩隊に襲いかかった!
ドオオオオオオ!
雷鳴が鳴り響く…。
コッホは一瞬何が起こったのかわからなかった…。
彼は気がつけば、瓦礫の山の上に倒れこんでいた。
先ほどの光が収まり、回りを見渡す。
コッホ
「……!」
彼の目に映ったのは荒れ果てた瓦礫の山と暗闇の中に一点輝く一人の女性だった。
彼女は青い稲妻を身体から発しており、神々しく輝いていた…。
稲妻の魔女
「だからやめてと言ったのに…」
「貴方たちが私に勝てるわけないでしょ…?」
トランヴェル
(まずい…これは)
(先ほどまでのララは理性が伴っていた……まだ話し合いの余地はあった…)
(でも今のララは…)
トランヴェルは昨日の魔女となったララを思い出す…。
魔物を躊躇なく殺めた冷酷な魔女を…。




