慈善なる無慈悲な告発2
ドラフ
「今……なんと?」
ララ
「私は……魔女になってお腹の傷を治したんです……」
ドラフはララの口から魔女であることを引き出そうとしていたが、まさかこんなにも早く彼女の口から出るとは思っていなかった……。
ガゼル
(魔女になった?……あの魔女の仕業か……?)
ドラフは右手で合図を出した……。
ドラフの合図を見た騎士団員は通達を送る。
コッホ
(戦闘……準備)
この一件はドラフがすべて総括を行っている……。
ドラフが出した指示は絶対だ……。
ドラフ
「魔女に……なった?それはどういうことですか?」
ララ
「私は魔物に刺さされたとき…意識が朦朧としてました……」
「その時に金色のフクロウが現れたのです……」
「フクロウは私に話してきました……」
「魔女になって村を救ってみないかって……」
「私は何よりも魔物を倒したかった……父さんとサジの仇をとりたかった……」
「だから私はフクロウの言われるがままに……魔女になりました」
「魔女になったことでものすごい力を身につけました……」
「その力で自分の体の修復して……魔物も簡単に倒すこともできました……」
「信じてもらえないでしょうが……本当のことなんです……」
ガゼル
「……」
ララの唐突な告白に対してドラフは疑念しか抱いていなかった。
彼は一つの仮定を掲げていた。ララはもう既に死亡しており、魔女が彼女に化けているというものだ。あまりにもララの話はとってつけられたように聞こえる。もう少しまともなこじつけはできなかったのか、呆れ返るほど無粋な話であったと彼は思っている。例えララの話が本当だとしても、何故魔女の力を得たのかも不明瞭であり、そもそも人間が魔女になるということはあり得ないと考えていた。
対してガゼルはララの話を真に受けていた。マベルとの会話からマベル自身がわざわざ魔物を焼き払ったり、ララを助けたりすることはしないだろうとふんでいた。きっとララを魔女に育て上げ、村の混乱を傍観しているに違いないと考えていた。
周りは一瞬沈黙していた……。
ドラフ
「魔女になった?……ならその証拠を見せてほしい」
ララ
「証拠……ですか?」
ドラフ
「そうだ」
「魔女の魔力があるならば今いる患者をどうして治さない?」
ララ
「それは……」
「ごめんなさい……私もそうしたいのですが、何故か今魔法が使えないんです……」
ドラフ
「それならばどうやって貴女が魔女であることを証明する?」
ララ
「それは……」
ドラフ
「貴女の話が本当だとしたら……貴女は我々の敵となる」
ララ
「え……」
ドラフ
「魔女というのは人類の天敵だ……」
「君が本当に魔女ならね」
ララ
「……なんと言えばいいのかわからない……
でも昨日魔女の力を得たのは本当です」
「今は全く使い方がわからない……けれど私にはその力があるのです……」
ドラフ
「何をバカな……そんな戯れ言を信じろと?」
ララ
「私は確かに自分の傷を治しました!」
「そして魔物も焼き払った……焼き払ったんです……」
「この魔女の力を自分で使えるようになれば…皆を救えるのに」
ドラフ
「馬鹿馬鹿しい」
「君は村の皆を救うつもりはないのだろ?」
ララ
「そんなことはありません!」
「私は本当に……」
ガゼル
「彼女は本当のことを言っているかもしれない」
ドラフ
「……!」
ガゼル
「彼女の傷も魔物を追い払ったのも魔女ほどの力がなければ説明がつかない」
ドラフ
「仮にだ」
「彼女が魔女というなら何故今魔法が使えない」
ララ
「……それは」
ドラフ
「君が証明しない限り…その話は通じない」
ララはその場で黙り混んだ…。
そしていざというとき魔法が使えない自分に嫌気をさしていた。
ドラフ
「君がどうしても魔女の力が出せないというなら…」
「今ここで出せるように促してやろう」
ドラフは手のひらを上げ、後ろに待機していた兵士に合図を出す。
一人の兵士が剣を持ってララへ向かっていく…。
ガゼル
「おい…待て!」
兵士は剣を抜きながらララへ近づく!
ララ
「…!」
ガゼル
「ララ逃げろ!」
兵士は剣をララのお腹に突き刺した…。
ララ
「あ……」
ララのお腹からじんわりと血が滲んでいく……。




