魔女の研究1
魔氷に侵された不死山……。そこで魔女ソフィアは魔不死石を使用して洗脳魔法の研究を進めていた。
彼女は魔氷(通称クロノ・ブレイク)を発動させてから、ずっとこの山に籠り、凍らせた人間を使用して洗脳技術を磨いていたのだ。彼女の目的は"ゲーム"に勝つこと。ゲームに勝つために人類を手元に置き、自分だけの世界を築き上げることを初期段階の目的としていた。
ソフィア
(やはり人間は私たち魔女に似ている……)
(大体人間に接してから200年ぐらいになるけれど、研究を進めれば進めるほど、私たち魔女と人間がほとんど同じ生命体であることがわかってきたわ)
(人体の構造は魔女とほぼ同一。食も文化も類似していることが多い……)
(唯一違う点としては魔力が段違いに違うというところ。人類の魔力は魔女のそれと比べて低い。大抵の人間は血液中に魔力を生成することができないからね……)
(確かに人間の中には多少魔法を使えるものはいるけれど、その魔力は魔女と比べてしまうとかなりレベルが低い……)
(間違いなく人間は魔女の下位互換。もしかしたら私たち魔女の祖先は人間……?)
カツーン…カツーン……
ソフィアの耳元に誰かの足音が聞こえてきた。
ソフィア
「……アルヴェか。帰ってきたのね」
アルヴェ
「ソフィア。久しぶり」
前回のラウル研究所の戦いで人間に敗れたアルヴェはソフィアのもとへ戻ってきた。
アルヴェ
「ソフィア……いきなり悪い知らせだ。私たちのクロノブレイクが人間に破られた」
ソフィア
「……そうですか」
アルヴェはソフィアの素っ気ない反応に少し戸惑いを感じた。長年研究してきたクロノブレイクがわずか数か月で人間に破られたのだから、ソフィアは落ち込んだり、苛立ちを感じたりするものだと思っていた。しかし、ソフィアの反応はあまりクロノブレイクが破られたことに関して関心が無さそうに感じた。
アルヴェ
「私たちが長年をかけて完成させた魔法が人間風情に破られたというのに、あんまり驚きが無いな……」
ソフィア
「まあ、クロノブレイクは所詮その程度の魔法だった……というわけね」
アルヴェ
「素っ気ないね……私は結構ショックだったんだけど」
ソフィア
「私もショックは受けているわアルヴェ。だってそれなりに研究をして生み出した魔法だもの」
「それがこうも呆気なく破られてしまうということは今私たちが行っている研究が間違っているということだわ」
「それが分かっただけでも十分だわ」
アルヴェ
「そうね……」
「それなら今後はどうする?このままだと人間どもが勢いづいて手を付けられなくなるわ」
ソフィア
「ねえアルヴェ…どうして我々より弱い人間に負けてしまうのかわかる?」
アルヴェ
「……」
ソフィア
「それを答えられない限り、このゲームは我々の負けね」
アルヴェ
「確かに奴らは非力だが、少し侮っていたようね……束になられては叶わないってところかしら」
ソフィア
「本当にそれだけかしら?」
「そうだとすれば、あなたが200年前に人間の大国を滅ぼすことなんてできなかったと思うわ」
「それにクロノブレイクでほとんどの人間は凍らせ、絶対数が減っているはずなのに、どうして勝てないのかしら?」
アルヴェ
「……」
ソフィア
「答えは明白よアルヴェ。まずは貴方が毎回逃しているミスリルを抹殺できなかったこと」
「そしてミスリルを逃したことにより、人間に希望をもたらしてしまったこと」
アルヴェ
「……ごめん」
ソフィア
「アルヴェが謝ることは無いわ。私もあなたに任せっきりで何もしていなかったもの」
「私は私でこの魔力が高い人間の研究に夢中だったからね。アルヴェ一人でミスリルを抹消できると踏んでいたけど、私の考えが甘かったわ」
「ミスリルという僅かな敗北の要因をきちんと潰さなかった私の責任。落ち込まないでアルヴェ。まだまだゲームはこれからよ」
「そもそもあなたは手伝いに来てくれたのに、こんなことさせて申し訳なかったわ」
アルヴェ
「いやソフィア。私にも非がある。私も人間を甘く見ていた。200年前とは比べ物にならないほど強くなっている」
ソフィア
「恐らくこれから人間どもはクロノブレイクを打ち破った実績からもっと躍進するでしょう」
「今広まっているクロノブレイクも近いうちに溶かされてしまうかもしれない」
アルヴェ
「ならもっと強力な魔法で奴らを黙らせようソフィア。クロノブレイクよりもっとえげつない魔法で奴らをコントロール下に置こう!」
ソフィア
「アルヴェ。それではまた同じ過ちの繰り返しになるわ」
アルヴェ
「え?」
ソフィア
「やはりクロノブレイクのような力づくの魔法では限界がある。それが今回学んだことじゃないかしら」
「いくらクロノブレイクやそれ以上の魔法で力づくで黙らせたとしても、危険に晒せば晒すほど、人間の中からミスリルのような変異体がちらほら出てくるわ」
「この変異体はいわば我々の計画を破綻させる危険因子と呼べるわ。数多い人類の中から1人2人の危険因子を見つけるには困難極まりない」
「生物に危険をもたらすと、一か八か反撃してくる。死に物狂いに反撃してくるわけだから、我々魔女と言えど、重傷を負う可能性があるわ」
「やはり最初の目録通り人間から絶対的な信頼を得て扇動することがベストなのよ。それができなかった時点で私たちの計画は破綻していたんだわ」
「人間をマインドコントロールし、魔女と戦わせる。それができなかった時点で敗北していた……」
アルヴェ
「それじゃあこのゲームはもうお終いかしら……?もう人類から信頼を得ることなど不可能に近いわ」
ソフィア
「まだ諦めるには早いよアルヴェ。私は既に次の手段を考えているわ」
「本当は人間どもをコントロールしてから行うつもりだったけどね……」
ガタンッ!!ビシャアー……!!
ソフィアの背後にある氷の壁からダリアが吐き出された。
ダリア
「げほッごほッ……」
アルヴェ
「何をするつもりソフィア?」
ソフィア
「まあ見ていてアルヴェ。今から私の研究成果をここで披露するから」
ソフィアは吐き出されたダリアの前に立つ。




