世界の変革3
ゴオオオオオオ……
炎が広がり、アイナの家が燃やされていく。
アイナ
「パパ!ママ!!」
アイナは外で自分の家が燃え上がっていくのを見ていた。
そして家の中には両親が取り残されていた。
アイナ
「パパ!!ママ!!!」
アイナは必死に叫ぶ!しかし、彼女の声は届くことなく、そのまま両親は家と共に炎の中に包まれてしまった…。
アイナ
「嫌だ……パパ…ママ…消えないで」
ドスッ!!
アイナがうずくまって泣いているところに、背後から剣を突き刺される!
アイナ
「あ…ガフッ」
アイナの背中から血がにじみ出ていく。
アイナが振り向くとそこにはミンカとナタリーの姿があった。
ミンカの手には剣が握られていた。
アイナ
「ミンカ…ナタリー……」
ミンカ
「アイナ。あなたは悪い魔女」
アイナ
「なんで……どうして!?」
ナタリー
「あなたは悪い魔女だから殺さないといけないの」
ナタリーは腰につけていた剣を抜き、アイナの背中にもう一本その剣を突き刺す!
アイナ
「ガフッ!!?」
アイナは口から血反吐を吐き散らす……!
アイナは目から血を流し、その場で倒れ込む。
ミンカとナタリーは剣をアイナの背中から抜き取り、冷たい目線でアイナを見下ろす。
そして彼女たちは、背後に立っていた魔女の元へ歩いていく。
倒れたアイナはミンカとナタリーの背中を見つめる。
ミンカとナタリーは魔女の前に立つ。
ミンカ
「悪い魔女を殺したよ」
魔女
「よくやったわ二人とも。もうあなたたちにその剣は不要だわ」
魔女はミンカとナタリーから剣を取り上げる。
魔女
「よく頑張ってくれたわね………今までありがとう」
魔女は二人から取り上げたその剣でミンカとナタリーの心臓にそれぞれ突き刺していく!
アイナ
「ミンカ…ナタリー!?」
ミンカとナタリーは信じられないような顔をして、魔女に刺殺されてしまった。
アイナ
「嫌だ…嫌だああああ!?」
魔女はミンカとナタリーを殺害した後、倒れているアイナへ近寄る。そして魔女はアイナを見ては怪しく微笑んだ。
魔女
「お前の大切なモノ全て奪ってあげる」
そう一言告げると、魔女はアイナから遠ざかり、遠くに立っていたトランヴェルやイヴたちを次々と焼き殺してく!
アイナ
「やめて!!」
魔女は満面の笑みで、ドラフやクエリ、ミランダたち皆を焼き払っていく!!
アイナ
「やめてえええええええええええええ!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオ…
燃えていく…。アイナの全てが燃えていく。
アイナは身動き一つできず、全て魔女に奪われてしまう……。
アイナ
「ああ…うう……」
ゴオオオオオオ……
全てが燃え尽き、そこに残ったのは絶望一色であった。
オオオオオオオオオ……
真っ黒に染まった世界。そこにただ一人アイナが取り残されていた。
アイナ
「嫌だ……嫌だ…誰か…助けて」
アイナは絶望に飲まれ、その場でうずくまる。
アイナ
「怖い…怖い怖い怖い!?パパ!!ママ!!どこにいるの!?」
「ミンカ!!ナタリー!!」
「クエリ!!ミランダ!!イヴ!!」
「トランヴェル!!皆…どこ!?」
「皆…どこいったの……」
「どうして…こんなにつらいの…どうして皆消えてしまったの」
「もう…私一人じゃ……」
アイナが暗闇の中でうずくまっているところに、どこからか声が聞こえてくる。
「忘れないでアイナ」
アイナ
「誰…?誰かいるの……?」
その声はアイナへ語り掛けていく。
「アイナ。大丈夫。僕はずっと君の側にいる」
「どんなに苦しくても、どんなに絶望的でも僕は側にいるよ」
「恐れないで」
アイナ
「っは!?」
アイナは目を覚ます。
クエリ
「アイナ…大丈夫?」
アイナはクエリの腕にしがみついており、クエリもうなされているアイナを抱きしめていた。
クエリ
「怖い夢でも見たの?」
アイナ
「……うん。怖い夢…………皆が魔女に殺されちゃう夢………」
「でも………夢で……よかった」
「うう…うぐうう……うええ…」
アイナは嗚咽をもらし、目からポロポロと涙を流す。
クエリはアイナを優しく抱きしめ、背中を優しくさすった。
アイナは安心したのか、クエリの胸の中で深い眠りにつく。
アイナの目から涙が止まり、スヤスヤと眠りに就いたのだ。
クエリ
(……………皆が死んでしまう夢か)
(そんなこと………正夢にさせてたまるものか)
クエリはアイナをぎゅっと抱き締めて、そのまま眠りについた。
翌朝、アイナは目を覚ます。
クエリは隣でまだ寝ており、アイナは一人でベッドから起き上がる。
部屋を見渡せば、机の上に一冊の本が置かれていた。
その本は父オードリーからもらったものだ。
パンドラの箱。アイナがずっと手放すことが無かった大切なものだ。アイナはその本を開き、読み進んでいく。
アイナ
「……そっか」
アイナは本を読んでいて気づく。
アイナ
「昨日見たあの夢…あの声は……」
「キボウ」
「どんなに苦しい状況でも辛い時でもずっとそばに居てくれる……」
「だから…あきらめちゃダメなんだ」
「大丈夫。どんな時でも必ず希望が味方する」
「だからパパもママも…ミンカもナタリーも…救える可能性だってあるんだ」
「絶対に…あきらめちゃダメだ」
アイナは本を抱いて、再び決意した。
必ずミンカとナタリーを魔女から救うと。そして必ず両親ともう一度会うと。
一方、トランヴェルも目を覚ます。
イヴ
「おはようございますトランヴェル」
トランヴェル
(おはよう……イヴ)
イヴ
「起きたばっかりで申し訳ないですが、ドラフにルイがいる部屋へ来るように言われましたので、
今から医療室へ向かいたいと思います。一緒に来ますか?」
トランヴェル
(もしかしてルイは目覚めたのか?)
イヴ
「どうやら目を覚ましたようです」
ルイは一昨日の戦闘からずっと気を失っており、
とりあえず医療室へ運ばれていた。昨日は目を覚ますことが無かったが、たった今、目を覚ましたらしい。トランヴェルは羽ばたき、イヴの肩にとまる。
トランヴェル
(よし…様子を見に行こうか)
(果たしてルイは元通りに戻ってるかな?)
イヴ
「あのサラという子が元通りになったのですから、恐らく大丈夫だとは思います」
「ですが……念のため用心したほつがいいかもしれません」
「洗脳が解けていない場合を考慮して、一応拘束した状態にしていますが………」
トランヴェル
(まあ、実際にどうなのかは、確かめてみないとわからないよね)
(とりあえず、行ってみようか)
イヴとトランヴェルはルイがいる医療室へ向かっていった。




