慈善なる無慈悲な告発
ララは御神体の入り口へ立つ。
トランヴェルに引き返すように言われたが、彼女にその気はなかった……。
ララは御神体の門を開く……。
目の前にはドラフとガゼルが立っていた。
ドラフ
「遅い時間に申し訳ないね……」
ララ
「いえ……」
ドラフ
「そこに座って」
ララ
「……はい」
ララは椅子へ座り、ドラフと対面する。
ドラフ
「まあ夜も遅いことだし、さっそくで悪いけどさ…
昨日のことを聞かせてもらうよ」
ララ
「はい…」
ドラフ
「昨日魔物が来る前…ララさんは家にいたの?」
ララ
「……はい…家で寝てました」
ドラフ
「その後に魔物が村を襲ってきた…その時はどうしてた?」
ララ
「……家に魔物が押し寄せて来て…父と弟が…」
ドラフ
「そうかい…それは辛かったね」
ララは昨日の出来事をドラフに話していく…。そして父と弟のことも…。
彼女の目元は赤くなり…必死に涙をこらえていた。
しかしドラフと話を進めていくうちについつい涙がこぼれ、手で拭っていた。
ドラフ
「大丈夫…?」
ララはもう話せる状態ではなかった…。
ガゼル
「……今日はもういいんじゃないか?」
ガゼルはララの様態を察してドラフに問いかける…。
ドラフ
(……)
ドラフは黙り混む……。
もしララが本当に人間であれば、ここでやめるだろう。そもそもこんなに遅い時間に呼び出したりしない。ドラフは魔女がララのふりをしていると推察している。この涙も演技だと思っている。
よって彼は引き下がらない。むしろ攻めにでた。
ドラフ
「ララさん…昨日あなたは魔物に襲われたんですか?」
ガゼル
「…おい…ドラフ」
ララは涙を押さえようと必死になりながらうなずいた。
ドラフ
「魔物に襲われたんですかー…そうですかー…貴女はその時どうやってくぐり抜けたのですか?」
ララは涙を流しながら答える。
ララ
「…必死に逃げました…最初は…」
ドラフ
「最初は?…どこか傷をおいましたか?」
ララ
「逃げている途中で…魔物に…刺さされました…」
ドラフ
「刺さされた?どこを?」
ララ
「…お腹です」
ドラフ
「なるほど…その後貴女は魔物に襲われながらも何とか逃げ切ったわけですな」
ララ
「えっと…」
ドラフ
「まあ大体のことはわかりましたー
それでねいくつか聞きたいことがあるんだ」
ララ
「……」
ドラフ
「…何かいいかけましたかな?」
ララ
「いえ…どうぞ」
ドラフ
「先程の話からすると貴女は魔物に襲われたときお腹に傷を負っていた…ということですよね」
ララ
「はい…」
ドラフ
「確かに騎士団が貴女を救出する際に手当てを行ってました…間違いなく貴女は傷を負っていたのです」
「ですが……今朝、貴女の体にはどこにも傷が見当たらなかった…」
ガゼル
「……」
ドラフ
「騎士団員は応急処置として回復魔法を使っていましたが…それでも無傷になるまで回復させることは不可能に近い」
「貴女は昨日間違いなく傷を負っていたというのに、何故今日になったら傷が無くなっていたのでしょうか?」
ララ
「……私は」
「魔女になったんです」
一瞬周りが静寂になる……。
ドラフ
「…今なんと?」
ララ
「私は魔女になりました…」
周りに潜んでいた兵士たちがどよめく……。
ララ
「私は……魔女となって自分の傷を治しました……」
「魔女となって……村を襲った魔物たちを倒したんです」
ララはついに言い放つ……
自分が魔女であるということを……!




