世界の変革2
ドラフ
「どうしてだ?こんな世界規模のプロジェクトなど今だかつて無いことだぞ?どうして断る?」
イヴはドラフの計画の参画を拒否した。ドラフはイヴなら協力してくれると踏んでいたが、その真逆の返答があり、動揺していた。
イヴ
「私は私なりに魔女の対策を練りたいのだ」
「世界を推進するのはお前ら人類でやれ。私は次回魔女との戦闘時にどのように戦うか考えたい」
ドラフ
「……………ふむ」
ドラフは一息置いて、イヴの返答を受け入れた。
ドラフ
「そうか………残念だ。わかった。それではイヴたちは、明日以降もこの研究所で各々やるべきことをやってくれ」
イヴ
「承知した。ミスリルたちの護衛も兼ねて、この場に残ることにする」
ドラフ
「じゃあ明日から我々はラウル研究所から出る。また定期的に連絡させてくれイヴ」
イヴ
「承知した」
ドラフ
「そうだ。明日ここを出ていく前に一度医務室に様子を見に行こうと思っている」
イヴ
「例の彼女か」
ドラフ
「そうだ。もしルイが目覚めたら話を聞きたいからな。明日も目覚めなかったら、イヴに任せてもいいか」
イヴ
「いいだろう」
ドラフとガタリアはイヴに別れを告げ、この部屋から出ていった。
トランヴェル
(ついに人類が力を合わせる日が来たか)
イヴ
「……少し遅すぎる気もしますね。魔氷が発生してから半年近く経ちますから」
トランヴェル
(まあ世界サミットも龍の襲撃で首脳たちがやられてしまったのもあって、各国で対応が遅れたのだろう)
(首脳会議で死んだトップたちもいるだろうし)
イヴ
「そうですね……。きっとドラフたちも今後、各国とのやり取りで苦労するでしょう。
全人類で力を合わせるということは、それだけ物事を進めるうえで合意を取るのに手間がかかるでしょう。国の数が多ければ多いほど、足踏みを揃えようとなると中々前に進むことはできませんから」
トランヴェル
(確かにな……)
イヴ
「全人類を導くには時間をかけて妥協策を練るか、絶対王政のように力づくで従わせるか、どちらかだと思います」
「前者でいうなれば、様々な各国の考えが、お互いに足を引っ張り、進むのが困難になります。その場合、魔女に隙を見せて滅ぼされるのがオチです」
「今までは我々だけであったから、物事も進みやすく、今回の作戦も魔女や龍を倒したい『我々』だからこそ、結果を出せた」
トランヴェル
(………)
イヴ
「人類の中には反対するものもいれば、作戦についてこれないものもいる」
「確かに魔女は強大な敵であり、人類皆で力を合わせたほうが良いように感じますが、実はそれはかえって逆効果を生む可能性もあります」
トランヴェル
(確かにイヴの言う通りかもしれない………全人類で力を合わせるとすれば、時間がかかるだろう)
(せめて世界の主要な先進国だけで進めるなど規模を縮小させないと実行までに時間がかかりそうだ)
(これはもう…ドラフたちがうまく推進してくれるのを望むしかないな)
イヴ
「ドラフたちはかなり苦労すると思われますね…。ですから我々は我々でやるべきことをやりましょう」
トランヴェル
(そうだな……とりあえず今日は休もう。明日も早いだろう?」
イヴ
「ええ。さすがの私でも今日は疲れました。マザーコントロールである時はこんなことなかったのに……」
トランヴェル
(イヴは今は魔女だ。マザーコントロールじゃない。疲れるのは当たり前だ。ゆっくり休んで)
イヴ
「そうですね……。もう寝ることにします。おやすみなさい…トランヴェル」
イヴはベッドに入り、就寝することにした。トランヴェルもテーブルの上に座り込み、寝る態勢をとる。
トランヴェル
(これから一体どうなるのだろうか)
(昨日の赤い龍……あいつはまた襲いにやってくるのだろうか)
(あの赤色の龍は自ら人間と言っていた……。一体奴の正体は何なんだろう)
(どうして私の名前を知っているのか……また一つ謎が増えたな)
トランヴェルはあれこれ考えているうちにいつの間にか寝てしまった。
一方ミランダはアイナを連れて、アイナとクエリが泊っている部屋にたどり着いた。
ミランダ
「アイナ着いたよ」
アイナ
「……」
アイナは下を向いたまま、ウトウトした状態で瞼が閉じかかっていた。
ミランダ
(大分疲れてるみたい……クエリさんは部屋の中にいるかな?)
ミランダは部屋をノックし、クエリが部屋にいるかどうか確認する。
ガチャッ
ドアは開かれ、中からクエリが顔を出す。
ミランダ
「よかったクエリさん部屋にいてくれて」
クエリ
「ミランダさん…アイナ連れてきてくれたんですね」
ミランダ
「うん。アイナはもう寝ちゃいそうで」
「早くベッドに寝かしてあげて」
クエリはミランダとアイナを部屋の中に入れて、
アイナをすぐにベッドへ連れていく。
アイナはベッドに入った瞬間、目を閉じ、眠りについてしまった。
ミランダ
「相当疲れたみたい」
クエリ
「無理もないですね。まだ小さいのによく戦ってくれたから」
ミランダ
「アイナ元気が無いんです…。やっぱり友達と戦ったのがショックだったみたいで」
クエリ
「そうですね………アイナの友達が魔女に操られていたというが、相当ショックだったと思います」
ミランダ
「ええ。私はあのアルヴェとかいう魔女が許せないです」
「あの魔女は魔氷に飲み込まれた人々を操って私たちと戦わせるなんて…ひどすぎる」
クエリ
「魔女は悪魔です。それはわかりきったことですが、まさかツクヨミ国の子供たちを兵士に仕立て上げて我々と戦わせるなんて思ってもいなかった」
ミランダ
「あの青い鎧は皆人間なんでしょうか……」
クエリ
「その可能性は非常に高いです。黒い鎧もドラフさんたちの仲間だったし」
「人間と人間を戦わせて嘲笑うのが、魔女のやりそうなことです……」
ミランダ
「……本当に許せない」
(ララもカリアもイトも、もしかしたら魔女に操られている可能性がある)
(そうだとしたら、必ず救い出さなきゃ……)
クエリ
「……」
(残りの黒い鎧は十中八九ノーズだ)
(イヴさんやドラフさんの仲間を救い出せたのだから、きっとノーズも救えるはず)
(救えるはず…なんだけど……どうしたものか)
クエリはノーズを救いたい気持ちはあるが、矛盾した気持ちも抱いていた。
ノーズは元々魔物を生み出した魔女信仰協会の大悪党だ。
そんな彼を救おうとするのは間違っているのではないかと悩んでいた。
最初はノーズに対しては嫌悪感しかなく、敵対心しか抱いていなかった。
しかし敵とは言え、魔氷や龍に襲われる状況では行動を共にする他なかった。
一緒に戦っていくうちにノーズに対して敵対心は徐々に薄れていき、その代わりに信頼心が育まれてきたのだ。
本来ノーズは敵であり、憎むべき存在であるが、クエリがノーズを救おうと思った要因としては、これまで一緒に死線をくぐり抜けてきた仲間でもあったからだ。
クエリ
「もし次にノーズに会った時、私は彼を救うだろうか……?」
クエリはその自問に対して、答えを出すことができなかった。




