サラ2
ゴロゴロ
雷鳴が鳴り響く……。
フオオオオオン……
魔物が街の中へ侵入し、人々を襲う!
逃げ惑う人々の中で何とか生き延びようとキマリとサラは雷鳴の中走りに走る!
サラ
「っは…っは……」
「おと…さん……待って…早い」
サラはキマリに引っ張られ走っていたが、キマリのスピードに追い付けず、
足に限界が来ていた。
キマリ
「ッ」
キマリはサラを背負い、走り出した!
フオオオオオン……
魔物の声が近くから聞こえてくる……。
そして徐々にキマリたちのほうへ近づいてくるのがわかる!
キマリは振り向くと、そこには1体の魔物がこちらに向かって追いかけてきている!
キマリ
(くっそおおおお)
キマリは必死に走るが、魔物に追い付かれ、足をかまれてしまう!!
キマリ
「ぐあああああッ!?」
キマリは横転し、そして背負っていたサラはその衝撃で地面に放り出されてしまう!
魔物は倒れたサラに目を向ける!
魔物
「美味そうなガキだ」
魔物はサラに飛びかかる!!
サラ
「いやッ……パパ!!パパ助けて!!」
キマリ
「サラ!!!」
グシャア……
魔物はサラの顔面を片手で押しつぶし、
そしてサラの横っ腹へ噛みつく!!
サラ
「ッッッ!!?」
サラはあまりの激痛に言葉も出ない……。
キマリ
「サラああああ!!!」
グシャグシャ!!
魔物はサラの肉を喰らい、もしゃもしゃと貪る!
トランヴェル
(うう……おえ……)
その光景を見たトランヴェルは吐き気が止まらない……。
キマリ
「誰か……誰か…娘を」
パアアアアン!!
突如、銃声が鳴り響く!!
魔物
「あ…が……」
魔物の頭部に風穴が空いていた……。
魔物は絶命し、その場で倒れた。
キマリは振り向くと、そこには銃器を持った化け物が立っていた。
ノーズ
「あぶないところだったな」
トランヴェル
(あれは…ノーズ!)
この時のノーズは人の姿をしておらず、魔物の姿であった。
キマリ
「サラ!!」
キマリはサラのもとへ駆けつける!
サラ
「……」
サラは胴体が半分魔物に喰われ、もはや虫の息だった。
キマリ
「サ……ラ……」
ノーズ
「まだ生きている」
ノーズは背中から腕を生やし、それを引きちぎり、
その腕をサラの胴体へくっつける。
キマリ
「!?」
ノーズの腕がサラの胴体と結合していく……。
キマリ
「あんた…一体何を!?」
ノーズ
「一時的に応急処置をしただけだ。あとは魔法をかけない限り回復は難しいだろう」
「その娘を連れて早く魔法使いのもとへ行くのだな」
プツンッ……
トランヴェル
(ん!?)
突然、トランヴェルが見ていた映像が切れる。
そして場面は切り替わり、とある牢屋の中が映し出される。
サラ
「……パパ?」
サラは目を開け、周りを見渡す。
周りは暗く、鉄格子が目の前に見える。
そしてサラは自分の手に違和感を感じ、右手へ目をやる。
サラ
「何……これ……?」
サラの手からは茶色い毛がモサモサと生えており、
爪が黒く、以前より長い。
それはもう人間の手ではなく、獣の手そのものであった。
キマリ
「サラ……!!」
牢屋の前にキマリがやってきた。
そして彼がサラを見てはすぐに鉄格子の中に入り、
彼女に抱き着いた。
キマリ
「サラ……よかった…生きているのか」
サラ
「パ……パ?」
キマリ
「そうだよ!パパだよ!!」
キマリはサラが目覚めたことに感極まって嬉し涙を流していた。
ダマ
「どうやら手術は成功したようだな」
キマリたちの背後にダマとミスリルがやってきた。
トランヴェル
(ダマ!?それから……ミスリル…!?)
キマリ
「ダマ様…ありがとうございます!娘が命を吹き返しました!!」
ダマ
「よかったな」
キマリ
「本当にありがとうございます……ありがとうございます…どうお礼をしたらよいか」
ダマ
「お礼などいらん」
「約束通り我が協会に属し、働いてもらえればそれでよい」
キマリ
「娘の命だけでなく、仕事までも与えてくれるなんて……ああ、私はあなたに感謝しきれない」
ダマ
「……」
「ミスリル。キマリの娘は今後どうなる?」
ミスリル
「安心しろ。寿命は我々人間より長い。きっと健康に暮らせる」
キマリ
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
ミスリル
「しかし…生きながらえるためには肉が必要だ」
キマリ
「……肉…ですか?」
ミスリル
「そうだ…それも動物の肉だけでは形を維持するのが難しくなっていく」
「人間の肉が必要となる」
キマリ
「人間の……肉を……」
ダマ
「魔物は人間の肉を喰らうことでしか体を維持できない」
キマリ
「人間の肉を……しかしどうやって」
ダマ
「安心しろ。貴様に人間を集める道具を与えてやろう」
ダマとミスリルの背後から小さい女の子が姿を現した。
女の子は猫のぬいぐるみを抱いていた。
キマリ
「この子は……?」
ダマ
「こいつは人間じゃない。魔法機械体だ」
キマリ
「魔法機械体?」
ダマ
「その名の通り、魔法と機械で作った人間収集機だ」
「この女の子とぬいぐるみを使って人間を騙し、この地下へ連れてくるように設計したものだ」
「これを使えば、そのサラという子の餌を調達することができる」
キマリ
「餌…ですか」
ダマ
「そうだ。貴様の娘を生かしていくためには必須なものだ」
「さあ、キマリよ。この道具を使って餌を集めろ。その娘のためにな」
キマリ
「……」
キマリは何とも言えない表情となっていた。
娘のためとはいえ、人間を捕まえて、娘に食べさせるというのだから。
キマリは複雑な心境に陥っていた。
サラ
「パパ……」
サラはキマリの顔をペロペロ舐める。
キマリ
「サラ……私は…」
サラ
「パパ…おなかすいた」
キマリ
「!?」
サラの口からよだれがドロドロと流れていた。
キマリ
「……わかった」
「餌を…捕まえよう」




