ミスリル3
夜中の3時頃……寝付いていたミスリルは突然目を覚ます。
ミスリル
「……いつの間にか寝てしまったのか」
ミスリルはあたりを見渡し、自分の部屋に戻っていることに気づく。
ミスリル
(あの女性にここまで運ばれたのか……本当に私は情けない)
ミスリルは起き上がり、カーテンを開け、夜空を眺めた。
ミスリル
(……)
ミスリルは夜風にあたりながら、昨日のドラフの言葉にどう答えるか考えていた。
彼は魔女の恐怖に駆られ、今すぐにでも死を望んでいたが、
ドラフの言葉に感銘を受け、ドラフたちに力を貸すかどうか悩んでいたのだ。
「人類に変革をもたらす」
このドラフの言葉が彼の脳内にこびりついており、
というのは、この言葉は彼が密かに願っていた夢そのものであったのだ。
国営研究所で働いていた時はその変革をもたらすことを目的にしていた。
常に理想を掲げ、その理想を実現させるために彼は国の研究者となり、研究を続けてきたのだ。
しかし、そんな彼はその目的に到達することなく、むしろその逆の道を行った。
国から去った彼は禁忌を犯して研究の道を究めていったのだ。
ミスリルは元々国営研究所に配属を夢見ていた研究熱心な青年だった。
しかし、ガゼルのように国には認められず、行き場を失った彼は路頭をさまようことになった。
彼は研究をあきらめきれず、個人で研究をやり続け、そして行きついた先は誰もがやったことのない未知なる世界だった。
それは生物兵器、そして高度な科学兵器の開発であった。
彼が積み上げてきた技術は世界の中でも劣ることのない高度なモノだ。
正当な道ではたどり着けることができなかった生物兵器の研究、そして様々な近代的な化学兵器の開発、
ここまでやり遂げたのは彼に野心があったからだ。
「国の奴らを見返す」
彼が抱いた野心はその一言にすべて含まれていた。
彼はその想いを燃料とし、今まで走り続けることができたのだ。
そして後に彼はダマとノーズに出会い、生体兵器のビジネスを始めることになる。
彼は研究に研究を重ね、様々な生物兵器を生み出した。
しかし、彼が生み出した生物兵器、のちに魔物と呼ばれる生物をダマとノーズが野放したことにより、世界を最悪な方向へ変貌させることになってしまった。
彼の生物兵器が魔物そのものであり、そしてそれらが交配を重ねて数を増やしていったのだ。
彼は人類の大敵を生み出してしまったことに後悔をしていた。
ダマやノーズはそのことに関しては特に罪悪感が無く、彼にはそれが信じられなかった。
ダマやノーズは魔物の開発に勤しむ傍ら、彼は精神的に追い詰められ、心身ともにボロボロになっていった。
もはや外に出ることもできなくなり、彼は2年ほど病院に入院し、ダマたちと別れることになった。
もう二度と立ち直れないと思われていた彼だが、退院後、なんと彼はまた研究を始めた。
鬱になりながらも魔物や魔女を討伐する研究を続けていた。
それは自分が魔物を生み出してしまった罪悪感と、昔抱いていた人類に良き変革をもたらす夢があったからだ。
魔物の研究は過去の自分の罪を償うため、そして魔女の研究は人類の脅威に対抗する力をもたらしたいがために行っていた。
ある日、彼のもとにまたダマが訪れた。
ダマは一度死んだものの、魔女に蘇らせられ、生首の姿だった。
ミスリルはダマの姿を見て震えていた……。
ダマの姿にも恐怖していたが、それよりも魔女に牙をむくことで、このような報いがあるのかと恐れを感じていたのだ。
自分も魔女討伐の研究を続けているため、いずれは魔女にひどい目に合うのではないかと心底恐れていたのだ。
ダマはミスリルに魔女の魔力を抑制するものを作ってほしいと要望を出した。
その時ミスリルはダマの願いを断りたかった。
魔女に危害を加えることはしたくないと…魔女に関わりたくないと思っていたのだ。
しかし、ダマは何度もミスリルを説得する。
魔女がいずれ人類の敵になるということ、そしてミスリルの技術が人類の光になるということ、
そのような言い分でダマは説得をしたのだ。
彼は本来人類のために尽くしたいと思っていたため、ダマの言葉に則り、最終的に魔女の抑制物質をつくることにした。
そして出来上がったのが、魔女粒子を消滅させるダマの左目であった。
国営研究所にいたときに使用していた魔不死石の残り物で作ったのだ。
ダマは左目をミスリルから受け取ってはすぐその場を去っていった。
それ以降、ダマとはまるっきり合わなくなった……。
ミスリル
(……)
ミスリルは窓を閉め、明日どうするか考えた。
ミスリル
(ダマに渡したあの抑制物質をもう一度作ってみるか……)
彼はいつも身につけていたポーチをベッドの下から取り出し、
その中から魔不死石を取り出した。
ミスリル
「……」
ミスリルは魔不死石を手のひらに溶け込ませていく……。
ミスリル
(果たして……あの時のように作れるか……)
ミスリルは脳内で魔女の抑制物質を想像し、それを手のひらに生成していく……。




