十六夜前夜2
オードリーは会議が終わり、王宮から自宅へ向かっていた。
その途中で武装した集団とすれ違う。
オードリー
「魔女狩隊か……」
武装した集団はその場に止まり、オードリーに敬礼をする。
オードリー
「ご苦労さん……今から大変だねぇ…頑張ってね」
武装した集団の中から一人の男性がオードリーに答える。
ナハンジ
「はっ!!」
オードリーはそのまま家に向かっていった。
武装した集団はオードリーを見送った後、ペルー村へ向かって行った。
オードリー
(まさか魔女と言った瞬間、すぐに魔女狩隊を呼ぶことになるとはな…)
オードリーは今日の会議を思い返す。
今回の会議は他国との協議に向けた打ち合わせみたいなものだった。来月、世界協議会へ出席するためだ。
今日の会議は意見にまとまりがなく、どうでもよいことに議論を重ね、時間だけが過ぎていった。
そんな中でオードリーは昨日のペルー村の事件について話をした。そしたら、まとまりがなかった議員たちが口を揃えて魔女撲滅と掲げたのだ。村の事件どうこうより、魔女というフレーズに反応したようだった。村の事件に対してではなく、単に魔女を狩るということだけ意見がすぐにまとまったのだ。
だいたい会議なんてこんなものだ…意見に食い違いがあれば、第3の敵に目を向けることによって議論を収集させる。
オードリー
(本当に下らない)
オードリーはため息をつきながら、ドラフの資料を眺めていた。
一方ガゼルはドラフとの話し合い後、病室に戻っていた。
先ほどのドラフとの会話で思い悩んでいた。
ガゼル
(このままでは恐らくララが魔女として狩られることになるだろう……)
(魔女によって起きた騒動であるとすれば、事件も収縮するとドラフは踏んでいるのか……)
(ララは魔女ではない……魔女であるはずがない……ララの異常な魔女粒子はきっとあの魔女が招いたものだろう)
(……彼女には罪はない…だが)
ガゼルは思い悩む…。
ガゼル
(彼女が魔女として処理されれば…私が魔女に出くわしたことも魔法障壁装置を解除したこともバレないのかもしれない……)
カリア
「お父さん」
ガゼルはいきなり話しかけられ、ビクッとなった。
そして次の瞬間、目に映ったのは……。
ララ
「ご無沙汰です」
ガゼル
「ララ…ちゃん」
ララ
「よかった……無事だったんですね」
ガゼル
「あ…ああ…君こそ…」
ガゼルは手で顔を拭って再びララを見つめる。
ガゼル
「つらかったね…」
ララ
「いえ…お気遣いなく」
カリア
「あのね…ララ今日退院なんだって!」
ガゼル
「そうなのかい?もう体は大丈夫なの?」
ララ
「はい……運がよかったのか…ほとんどケガは無かったみたいなんです」
ガゼル
「それは…よかった…君だけでも無事で何よりだ」
「……退院したらどこへ行く予定?」
ララは今回の事件で家族が皆殺されてしまった。行き宛など無いはずなのだ。
ララ
「しばらくは村の病棟に」
ガゼル
「そうかい……気をつけて帰るんだよ」
ララ
「……はい!」
カリアはララを見送るべく、ララと共に病室を出ていった。
ガゼルは沈黙している……。
どこか胸の辺りが締め付けられるのだ……。
(彼女が……狩られるなんて……どうしてこんなバカなことを)
ガゼルは思い出す…幼い頃のララと彼女の両親を。
ガゼルがカリアと共に王宮から村へ来たとき、始めに出迎えてくれたのは彼女たち家族だった。
彼女の両親は気の良い夫婦で、ララはカリアと仲良くしてくれた。そんな彼女を殺して助かる…?
(なんて馬鹿げたことを考えていたんだ……)
ガゼルは決心する……そして覚悟をした。
カリアとララに未来を託すために。




