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変化の兆し3

アマミ

「なんだこれ?」


アマミはドラフが出したパイプをつかみ、ジーっと見つめている。


リリィ

「……これはもしかして魔法障壁装置の…」


ドラフ

「さすがリリィ。ご名答だ」


アマミ

「魔法障壁装置?」


ドラフ

「このパイプは魔法障壁装置についていたものだ」

「恐らく装置を地面に固定するためにこのパイプを使用していたと思われる」


アマミ

「こんなもの装置についていたっけ?」


リリィ

「ええ。このパイプは装置にエネルギーを循環させるためにあらゆるところに繋がれてた」

「このパイプに魔法粒子を巡回させ、機械にエネルギーを送っていたのよ」


アマミ

「そう言われてみれば、確かに内部にこんなパイプあったかも」


リリィ

「ドラフさん。これどこからとってきたのですか?この魔法障壁装置の中からですか?」


ドラフ

「いいや。先ほどペルー村にいって、魔法障壁装置の跡地からとってきたものだ」


リリィ

「ペルー村!?ペルー村に行かれたんですね」


ドラフ

「そうだ。地面にいくつかこのパイプがあってだな……

試しにこのパイプを魔氷に投げてみたんだ。そしたら驚くことに、このパイプが凍るどころから魔氷を溶かしていたのだ」


アマミ

「は?溶かした!?」


ドラフ

「そう。このパイプは魔氷を解かす成分が含まれている」


リリィ

「それは本当なのですか!?」


ドラフ

「本当だ。この目で確かに確認した」


クエリ

「私も見ました……確かに溶かしていたんです」

「溶かすといっても煙が出るくらいで微々たるものでしたが……」


リリィ

「魔法障壁装置のパイプが魔氷を溶かしただなんて……」


ドラフ

「魔法障壁装置の一部が魔氷を防いでいたのは恐らくこいつ自体が魔氷を溶かす何かを持っているってことだ」

「魔法障壁装置をかじってたお前たちなら少しでも知っているんじゃないか?魔法障壁装置は何でできているのかを」


アマミ

「こいつはたまげたな」


ドラフ

「知っているのか、知らないのか答えろ」


アマミ

「もちろん、知っている」


クエリ

「!」


イヴ

「……!」


アマミ

「ペルー村の魔法障壁装置と同じものをつくるために解析していたからね……おおよそはわかっているんだ」

「ただ開発資料はすべて魔氷に飲まれてしまったし、正直うろ覚えなんだ」


ドラフ

「うろ覚えでもいい。こいつは一体何でできている?」


アマミ

「素材自体は魔法防具でよく使われているペグダミンとコカリの木材、それからハードメタル……」

「あとは全く不明の成分が含まれている」


ドラフ

「全く不明……か」


リリィ

「ただこの不明な部分には魔法粒子に似た結晶が多く詰められていたのです」


ドラフ

「魔法粒子の結晶……?それってつまり……」


アマミ

「ドラフわかったようだね」


ドラフ

「なるほど。ガゼルのことだ。よくよく考えれば使っていないわけがないか……」


イヴ

「何のことだ?」


ドラフ

「魔不死石」

「奴は恐らく魔不死石を使って魔法障壁装置をつくっていたに違いない」


リリィ

「当たりですドラフさん。恐らく魔不死石を使って魔法障壁装置の素材をつくった可能性が高いのです」


イヴ

「魔不死石……カグヤの不死山で発見した鉱物」

「触れれば粒子まで砕け散り、強く握れば手の中に溶け込む物質」

「魔不死石によって自らエネルギーを使用でき、人間が想像したものを手から生成できる」


ドラフ

「説明ご苦労。その通りだ」


クエリ

「魔不死石って魔法の素ですよね?」


リリィ

「そうです。魔不死石は魔法の根源であり、人間が魔法を体得するための補助道具として使われるものです」

「魔不死石を使って、想像したものを生成する奇跡のような代物なんです」


ミランダ

「ええ!?何それ凄い……」


ドラフ

「そう…。もともと魔不死石は人間がイメージしたものを形にする神のような代物だ」

「想像したものをそのままの形でつくることができる」


ミランダ

「そんなものがこの世にあるなんて……知らなかった」


ドラフ

「魔不死石ってすごいだろう?すごいけどな、こいつはそんなに人間社会には浸透しなかったんだ」

「なんでかわかるか?」


ミランダ

「……全然わからない」


ドラフ

「実はこいつには欠点があるんだ」


クエリ

「欠点?」


ドラフ

「想像したものをそのまま形にすると言ったが、なかなか想像した通りのものを作り上げるには経験が必要なんだ」


クエリ

「経験…ですか?」


ドラフ

「そう経験。どんなことでも初めはうまくいかないものだ。当たり前といえば当たり前のことだが、魔不死石で想像したものをつくるにはある程度熟練が必要なわけさ」

「最初は中途半端に仕上がったり、はたまた形はよくても性能が思ったものとは異なったり」

「こいつは想像して創造する者のセンスが問われるんだよ」


イヴ

「要は人によって出来栄えが異なるということだ」

「同じ食材を使って同じ料理を作ったとしても人によっては美味くできたり、不味くできたりすることと一緒だ」


ミランダ

「なるほどお……」


ミランダは口を半分開いたまま、ドラフの話を興味津々で聞いていた。


ドラフ

「この魔不死石を初めて発見したスリランカ博士の記録によると、想像したものをそのイメージ通りに作り上げるのに30年はかかったそうだ」


ミランダ

「さ……30年……」


ドラフ

「人によっては一生うまく使えなかった者もいたと記録が残されている」

「よって人間が扱うには難しい代物でな。なかなか人間社会に浸透しなかったわけだ」

「しかしな……魔法使いには大好評でバンバン使われていったんだ」

「なぜ魔不死石が魔法使いの中で広がったかというと、魔法がイメージして生成し容易いもので、魔不死石で生成することが簡単にできたからなんだ」


ミランダ

「えっと魔法ってそんなに生成しやすいものでしたっけ?」

「全然そんなイメージは無いけど……」


ドラフ

「お前も魔女だからわかるだろうが、魔法は机をつくるより、遥かに楽だぞ」


ミランダ

「そ…そうなの?」


ドラフ

「例えば炎の魔法を生成しようとしたとき、魔法使いは炎を想像して魔法を生成する」

「“炎は熱くてモノを燃やすもの”これを認識さえしていれば大方炎の魔法を生成することができる」

「しかし…だ。机はその形をイメージできたとしても、その素材をどのようにして組み合わせるのか知識がないと作ることができない」

「“木材”そのものをイメージして生成することは簡単だが、それを作り出せたとしても組み合わせ方を知らなければ、机そのものを生成することができないのだ」

「つまりこの世にある物質はその構成を理解していないと作れないというわけだ」

「対して魔法は構成を知らなくてもイメージだけで生成することができる。それは何故かというと机などの物質ではないからだ」


「炎魔法も氷魔法も雷魔法も全て“概念”で生成できる。もっと言ってしまえば炎を生成できたとしても、それが本当に炎そのものであるかどうかわからない」

「炎そのものでなくても“赤色で熱くてモノを燃やすモノ”であれば、それだけで炎魔法と呼べるのだ」


ミランダ

「魔法ってそんな曖昧なものだったの?そんな大体の感じで生み出しているとは思えないんですが……」


イヴ

「確かにミランダの言うこともわかります。わかりますが、やはり魔法はイメージとして錬成されていることがほとんどです」

「炎魔法も炎と全く同じものかというとそうではありません」

「炎はただ単にモノを燃やす性質がありますが、炎の魔法は対象を焼き殺す性質も含んでます」

「焼き殺す性質を生み出している源は人間の“想い”が入っているからです」


ドラフ

「魔法なんてモノは要は攻撃ができればいい概念みたいなものだ。たとえ炎でなくても氷でなくても、その気質と同じ効果があればそれで良いのだから」


クエリ

「うんうん…なんとなくわかるような気がします」

「確かに魔法錬成時には机をつくるなどの明確な工程が無いですからね」


ドラフ

「話を戻すと、ガゼルは職人気質が旺盛な奴だったから魔不死石をよく使っていたんだ」

「王国にいた時も奴は魔不死石で生成したものを実験でよく使っていた……恐らくオリジナルな鉱物を作ろうとしていたんだろうな」

「今思い出せば、研究成果の発表の時はよく魔不死石が奴の口から出ていた」


アマミ

「そうかドラフはガゼルさんと一緒に働いていたことがあったんだよな」


ドラフ

「うむ……もう何年も前の話だがな」


イヴ

「つまり、魔法障壁装置のパイプには魔不死石でオリジナルな素材が含まれているということか」


アマミ

「恐らくそうだと思う。だって何の物質なのか調べても調べてもわからなかったし……そうとしか考えられないかな」


リリィ

「そうなんです。だから逆を言えば、この素材はガゼルさんしか作れないということです」


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