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十六夜前夜


ここは王宮。ペルー村から約600キロ離れた場所にある。

ここの王宮に一人の青年が休憩室でコーヒーをすすりながらドラフの報告書を読んでいた。

彼の名前はオードリー。王宮の上層部の一人であり、ドラフの直属の上司にあたる。

彼は臨時で開催される会議に向けて準備をしていた。

そう……昨日起きたペルー村の事件についてだ。

会議には国の意思決定を司る面々が出席する。

オードリーはその場でペルー村の事件について軽く報告するつもりでいた。昨日起きたペルー村事件の調査結果がすでに彼の手元に届いており、他の面々に説明しなければならないのだ。


オードリー

「仕事早いねぇ……彼は」


オードリーはコーヒーを飲みながら資料に目を通す……。


オードリー

「思っていた以上に被害が深刻じゃないか……」


「……おまけに魔女の可能性なんてかかれてる……どう発表しようかね…これ」


オードリーはペルー村の被害なんて大したことないだろうと踏んでいたが、報告書を読み進めれば読み進めるほど面倒な案件であると感じていた。


(これは面倒くさい…ペルー村の連中はなにしてんだ……)


オードリーはぶつぶつ文句を言いながら会議室へ向かっていった。


その頃ペルー村ではドラフが村長とガゼルを応接室に呼び、今回の事件について話し合いをしていた。


ドラフ

「お集まりいただきありがとうございます」


村長とガゼルが顔を会わせるのは事件当日以来のことであった。


ガゼル

「村長……ご無事で」


村長

「ガゼルくんの方こそ」


村長はあの日、結界師と共に御神体へ向かっていた。しかし結界が無くなった後、すぐ魔物と遭遇してしまった。

結界師は即座に襲われ倒れてしまい、村長も深手を負った……。

彼は地獄をみた……。わずか数分で村は壊滅し、村人も助けることができずに必死に逃げていた……。


彼の意識が朦朧としている中、魔物が焼かれていくのを見ていた……。

誰かが助けにきた。明確にはみることはできなかったが、

一人の人間が魔物を焼き払っていたのだ…。

村長はそこで力尽きた。気がつけば病室に運ばれていたのだ。


ドラフ

「さて…お二人にお集まりいただいたのは何点かお話したいことがありましてね…。どうぞお座り下さい」


「早速なんですがね…今回の村の事件…そもそも結界が壊れたところから始まってるでしょう?」


村長

「はい……」


ドラフ

「残念ながらそこの点については色々処罰が下るかもね」


村長

「処罰…」


ドラフの言うとおり結界装置に不備がなければ、今回の事件は発生しなかった。村で大勢の死傷者が出てしまっている以上、罪は深い……。


ドラフ

「ただご存じの通り、今回の事件については不明確なことが多い……」

「まるで誰かが仕組んだような……人為的なところがうかがえる」


ガゼル

「人為的なところとは……?」


ドラフ

「ガゼルさんもご存じの通り魔法障壁装置が何故いきなり故障したのか不明確であること」

「そして、村を襲ったと思われる魔物たちも無惨にやられていること」

「あとは……この事件は魔女が起こした可能性があるということ」


ガゼル

「魔女……?」


ガゼルは内心ドキドキしていた……まさか魔女という単語がドラフの口から出てくるとは思わなかったのだ……。


ドラフ

「ララフォー・メール」


ドラフは唐突にララの名前を挙げる。


ドラフ

「あの少女……魔法粒子の数値が異常に高いんですよ……極めて魔女である可能性がある」


ガゼル

「……ララって……あのララか?」


村長

「あの子が……魔女?」


ガゼルと村長は勿論ララを知っている。

ララはガゼルの娘カリアとは幼なじみである。

ガゼルはララが魔女だなんて微塵たりとも思わない……。


ドラフ

「彼女は魔法学校とか通ってましたかね?」


村長

「……わからん」


ガゼル

「……私はララフォーを幼いころから知っていましたが…あの子は普通の女の子だ…魔女のはずがない」


ドラフ

「魔女粒子の測定結果が全てを表しています…人間がたたきだせる数値ではないんです」


ガゼル

「あの子が魔物をやったというのか!?冗談はよせ」


ドラフ

「彼女がすべての原因とまでは突き止めてはいないが……」

「少なくとも魔物たちは彼女にやられた形跡が残っている」


ガゼル

「そうとするならば……ララは村を救ったわけだな」


ドラフ

「なるほど……そう考えますか。確かにその可能性もありますが…」

「彼女が魔女であるならば、これは仕組まれたことなのかもしれない」


ガゼル

「バカな……」


ガゼルは自分の予想とは裏腹に事が進んでいることに懸念していた。まさかララが魔女であると疑われているとは思いもしなかった。

しかし、ガゼルも何故村を襲った魔物がやられているのか不思議に思っていた。村人たちだけで魔物を倒せるとは思えない。


ガゼル

(魔女マベルがやったのだろうか……?)

(その濡れ衣でララが疑われてしまっているのか?)


(魔女は未知なる存在だ……。)

(魔女マベルがララに大量の魔法粒子を注いだ可能性もありえる……。)


村長

(あの時確かに誰かが魔物を焼いていた……あれはララだったのか……?そんなはずは……)


ガゼルと村長が思い悩んでいる中、ドラフの横に電話機能を持つ魔方陣が出現する。

誰からか電話がかかってきたようだ。


ドラフ

「もしもし……」


「あ、はい……なるほど」


「じゃあ今夜決行でよろしいんですね?」


「今夜22時に……承知」


ドラフは魔方陣を閉じる。


ドラフ

「騎士団長!」


ドラフの隣にいた騎士団長コッホが返事をする。


ドラフ

「今夜22時、真実を確かめるべくララフォーと面会を行う」

「21時ごろには魔女狩隊がここへ到着する……お出迎えの準備を進めろ」


コッホ

「な……魔女狩隊……!?」

(魔女狩隊が来るということは、まさか許可がおりたのか!?)


コッホは驚きが隠せない……。

まさか討伐に許可がおりるとは思ってもいなかったからだ。

そしてこんなにも早く決断が下りるとは思わなかった。


ガゼル

「まさか……彼女を殺すつもりか!?」


村長

「バカな……彼女は普通の人間だ…魔女であるはずがなかろう!?」


ドラフ

「ご安心を……別に彼女を狩ると決まったわけではないのです」

「万が一のためです」


コッホ

(嘘だ……)

(ドラフは絶対彼女を殺すつもりだ…少しでも魔女に関わるものは消すと奴自身が先ほど言っていたのだ……)



ドラフ

「それでは21時には御神体に集合願います」


ドラフはそう告げるとリリィとコッホと共にその場を去っていった。


ガゼル

「大変なことになった……」


村長

「まさか……ララちゃんが……そんな」


ガゼル

「きっと何かの間違いです……村長……あの子が魔女のわけがない」


村長

「調査団は……どうするつもりなんだ……」


ガゼルは沈黙したまま、ただその場を呆然と立ち尽くしていた。


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