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夜話2

ミランダ

「もしかしてトランヴェルって本当にアンセスターの時代から来たんじゃない?」


トランヴェル

(タイムスリップ説か……まあ無くはないが…)

(でもやはり違う気がする。私がいた世界はどことなくこことは違うんだ)


イヴ

「具体的に何が違うんですか?」


トランヴェル

(うーん……なんだろう)

(さっき言ったように使っているものが全然違うし……それに日本っていう国もこの世界には無いんだろう?)

(それからずっと引っかかっているのは観測者という言葉なんだ)

(私が観測者というならば、やはりユニがつくったこの世界の監視役みたいな存在ではないかと思うんだ)


イヴ

「そうですね。トランヴェルの言っていることは概ね間違いないと私も思っています」

「観測者はこの世界を観測する役割を持つもの。そして観測対象者を選抜する権限もあります」


トランヴェル

(観測対象者を選抜…それってもしかして、私がイヴたちを魔女にするってことと何か関係あるのか?)


イヴ

「恐らくは……私が持ち得る情報は“観測者は観測対象者を選抜し、そして観測すること”

 これ以上の情報を持ち合わせていないのです」


「観測者は対象に変化を与えると聞きました。

変化を与えられた観測対象者を観測するのが観測者の役目とインプットされています」


トランヴェル

(魔女化させることが変化を与えることと同義なのかな……?)


イヴ

「正直言うとわかりません…。わかりませんが、そうだと思われます」

「ただしトランヴェルは観測者ではなく、試験体となります」

「トランヴェルが私たちを魔女にすることは観測対象者を選抜していると言い切れないところがあります」

「なぜならトランヴェルは観測者ではなく、試験体だからです」


トランヴェル

(……)


イヴ

「ですから私もミランダも観測対象者とは言えないかもしれません」

「ムーンチャイルドでトランヴェルに魔女にしてもらう時、マザーコントロールである私が観測対象者になることは前代未聞でしたので、なっていいものか迷いました。しかし、よくよく考えればトランヴェルは観測者ではなく、試験体なのです。私がトランヴェルの魔女になっても問題ないと判断し、あの時は魔女になることを承諾したのです」

「まあ、あの時はそもそもこの世界の情報をすべて失うかもしれなかったので、魔女にならざるを得なかったのですが……」


トランヴェル

(なるほどな……ここでもう一つ聞きたい。観測者ってのは何を基準にして観測者を選定して、それから一体何のデータをとっている?)


イヴ

「申し訳ないですが、そこも何一つ知らないのです…。私は単に世界を管理する役目しか与えられていないので、観測者に関する情報は皆無に等しいです」


トランヴェル

(そうなのか……そういえば前もそんなこと言ってたな)


イヴ

「しかし、もしトランヴェルが観測者の代わりに送り込まれたとしたら、我々は観測対象者であるかもしれません」

「こればっかりはイレギュラーな出来事ですので、何が正しいのかさっぱりわかりません」

「そもそも本来私のところにはトランヴェルではなく、観測者が来ると情報がインプットされていました」

「しかし、いつになっても観測者は来ることはありませんでしたし……」


トランヴェル

(その外の世界で何かがあったということか)


イヴ

「恐らくは」


トランヴェル

(ううむ……結局何一つわからないままか)


イヴ

「色々話をしてきましたが、結局トランヴェルはどちらかというとユニと同じ立場というより

マザーコントロールである私と近い立場なのかもしれません」


ミランダ

「どういうこと?」


イヴ

「ミランダに説明すると、まず私マザーコントロールはこの世界を管理する役割を与えられたものなのです」

「私はこの世界のあらゆる事象、存在を知識として持ち得ており、この世界の秩序を保つたことを目的として設置された存在です」

「そのため、私にはこの世界の知識と外部からの攻撃からこの世界を守る機能しか持ち合わせておりませんでした」

「ユニという存在は知っていても、ユニがどのような人物なのか、この世界の外がどういう世界なのか、

この世界以外のことは知らされていないのです」


「そしてトランヴェルも観測者という立ち位置ならば、恐らく観測する機能以外は持ち合わせていないと考えられます」

「私と同様に役割を与えられただけの存在であり、役割を与えているユニたちのことは何一つ知らないことが想定されます」


ミランダ

「イヴもトランヴェルも役割を与えられただけで、それ以外のことは何もわからないということ?」


イヴ

「そうです」


トランヴェル

(なるほど……その説が有力そうだ)

(確かに私は気が付けばこの世界にいて、記憶が全くないし、ミランダやイヴを魔女にしたりする能力がある)

(私も何かしら意図があって設置された存在なのかもしれない)

(でも本当にそうだとしたら私の日本の記憶って何なんだろうか?)


イヴ

「そうです……そこなんです。トランヴェルにはあるはずが無い記憶と本来あるべき記憶がないのです」

「トランヴェルの言うほかの世界の記憶。試験体にはこのような記憶など本来持ちえないはずなのです。

その記憶が何を意味しているのかわかりません。そして自分が試験体であるということを忘れている。

不確かなところはそこなのです。それから、そもそもトランヴェルはここに来る存在では無かったことも……」


トランヴェル

(そうだ……そこも詳しく聞こうと思っていたんだ)

(一つ一つ確認したいのだが、イヴはなぜ私がその試験体であるとわかったんだ?)


イヴ

「あなたに識別コードからわかったのです」


トランヴェル

(識別コード?)


イヴ

「我々世界の管理者は観測体が中枢エリアに来れば識別することができます」

「トランヴェルがムーンチャイルドに来た時、私はあなたを認識していたのです」


トランヴェル

(ああ……確かにムーンチャイルドに着いた時、マザーコントロールのオペレーターが脳内に話しかけてきたな)


イヴ

「そうです。元々マザーコントロールには観測体のサポート役として設置されています」

「観測体が近くに来れば、認識できるようにできているのです」


トランヴェル

(なるほど)

(観測体である私がムーンチャイルドに来たからイヴが認識したってわけか)


イヴ

(その通りです。しかし、トランヴェルの識別コードは観測体とは少し異なるものだったのです)

(観測体ではなく、観測体の“試験体”として反応があったのです)


トランヴェル

(試験体か…)


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