マザーコントロール
映像に映っている女性が話始める。
<私はマザーコントロール………この世界の起源であり、この世界の記憶そのもの>
トランヴェル
(………世界の記憶………そのものだと?)
<そう、私はこの世界が生まれたときに製造された案内設備>
トランヴェル
(案内設備………?一体それは何だ?)
<我々はあなたのような観測体を出迎えるために存在します>
トランヴェル
(観測体?)
(もう何を言っているのか全然わからない!)
(マザーコントロール!私はこの世界のことを何一つ知らない。そして自分自身も何者なのかわからないんだ!)
(頼む!教えてくれ!!この世界は何なのか………そして私は何なのか………知ってるなら教えてほしい!)
<あなたはご自身が何者かわからないと仰るんですか?>
トランヴェル
(そうだ!私は何者で何故ここにいるのかわからない!)
(何故魔女にする力があるのか、何故私は他の者たちと違うのか、全然わからないんだ!)
(聞きたいことは山ほどある!頼む教えてくれ!!)
<残念ですが、私はあなたのことを詳しく知りません。私はこの世界を案内するマザー機関。あなた方観測者のサポート役としてこの世界に配置されてます。あなたがここに来た理由やあなたが何故ここにいるのか、存じていないです>
<ただ唯一私がわかることは………あなたはここに来るべき存在ではないということです>
トランヴェル
(ここに来るべきではない………?)
(待て待て。まず、順番に確認させてくれ!そもそも観測者とは何だ?)
<観測者とはその名の通りこの世界を観測、測定を行う役割を担った者たちのことを言います>
<あなたはこの世界を観測するために作られた観測体………いや、厳密には観測体ではなく試験体となります>
トランヴェル
(し………試験体………?)
(私はやはり機械なのか?)
<いいえ。あなたは機械ではありません。生命体です>
トランヴェル
(機械ではない………じゃあ、私は人を魔女にすることができる生命体………ということなのか?)
<その認識に近いです。少し異なりますが、概ね正しいです。あなたには観測を行う役割が与えられています>
トランヴェル
(………役割と言ったな。私もあなたも誰かの指示でここに来ているということなのか?)
<そうです。しかし、あなたは本来ここに来るはずが無いのです。ここに来るのは試験体ではなく、完全体が来る予定なのです>
トランヴェル
(完全体………)
(つまり、私が観測者の試験体で、そして本来は完成品がここに来るはずだった…というわけなのか?)
<その認識であってます。しかし、まだ完成体は来ておりません。本来はこの数ヶ月のうちに来る予定でした。そして本日、完成体ではなく試験体であるあなたがここに来たのです。本来そんな計画はありませんでした>
トランヴェル
(………ダメだ。いまいち観測者ってのがよくわからない。観測者の目的って何だ?何を観測するんだ?)
<この世界の行く末を記録することが観測者の主な目的です>
トランヴェル
(行く末?何のために観測を行ってるんだ?)
<それはわかりません。私は観測者にこの世界の情報を提供するために存在しているため、それ以上の情報をインプットしていないのです>
トランヴェル
(観測の目的は観測者しかわからないのか………)
<はい。私が知り得ることは観測者がこの世界を記録し、データを残すということだけです。何のために観測をしているのかはわかりません>
トランヴェル
(………)
(それではあなたや観測者に指示を出しているのはどこの誰なんだ?)
<この世界の創立者です>
トランヴェル
(!?)
(創立者?この世界を造った者ということか!?)
<そうです>
トランヴェル
(何だって………)
(つまりこの世界は作り物で、神が存在すると………)
<神ではなく、創立者です。この世界の創立者の名はユニです>
トランヴェル
(ユニ………そいつがこの世界をつくったというのか!?)
<あなたは本当に何も記憶が無いのですね>
トランヴェル
(そうだ…私は記憶喪失なんだ)
<そうですか………。あなたについて調査が必要だと判断しました。もっとあなたからの情報が欲しいです。あなたはいつからこの世界に来たのですか?>
トランヴェル
(いつだろう………1~2年前くらいかな)
<1~2年。思った以上に前ですね。観測体がここに来る予定より遥かに早いです>
<創立者の身に何かあったのか、または計画が無断で変更になったのか………どちらにしろ想定外のことが起きています>
ドオオオオン!!
上から爆発音が聞こえてくる。
トランヴェル
(爆発音………まさか!?)
ドオオオオ………
爆発音と共にその振動で部屋全体が揺れる。
ザザザザザザ………
モニターに魔物たちとドラフたちが交戦している様子が映し出される。
<魔物と人間が交戦中………>
トランヴェル
(まずいアイナたちが………)
(頼むマザーコントロール!彼らを助けてくれ!!)
<残念ながら私には救済システムはありません>
トランヴェル
(そんな………)
<しかし、彼らを避難させることは可能です>
ブウウウン………
ドラフたちの足元に魔方陣が出現する!
ドラフ
「!?」
ドラフたちは魔方陣に引きずり込まれ、その場から姿を消す………!
トランヴェル
(!?)
(みんなをどこに?)
<この部屋の奥に転送しました>
トランヴェルの目の前にドアが出現する。
<この扉の先に彼らを避難させました。ここなら魔物たちも入ってこれないでしょう>
トランヴェル
(おお………ありがとうマザーコントロール)
<本来私はあなた方に干渉してはいけない立場ですが、今回はあなたの大事な観測対象がいたため、転送を行いました>
トランヴェル
(観測対象?)
(………もしかしてアイナのことか?)
<アイナ………あの幼き子供のことでしょうか。その子を示すのであれば正解です>
ドオオオオ!!
また上から爆発音が聞こえてくる………。
トランヴェル
(また爆発音………これは龍の攻撃か?)
<龍と呼ばれるのはこちらの魔法体のことでしょうか?>
モニターに金色の竜が映し出される。
トランヴェル
(魔法体?………またよくわからない用語だが、今映っている奴が龍だ)
<龍………これは魔女によって生成された攻撃魔法ですね>
トランヴェル
(この龍は魔法なのか?)
<そうです。この生物は魔法でできています>
トランヴェル
(それはびっくりだな……魔女は魔法で龍をつくっているのか……)
<さらにこの龍から大量の魔物がつくられています>
トランヴェル
(魔物はこいつから出ているのか!?)
ドオオオオ!!
龍は爆裂弾を口から吐き出し、地面を破壊しながら下へ進んでいく。
<この龍と呼ばれる魔法体………明らかにこちらへ向かってきてます>
トランヴェル
(え!?)
<先程転送した人間たちに付いた魔物の血が目印になっていることが想定されます>
トランヴェル
(魔物の血でどうやって居場所を掴んでるんだ!?)
<龍は魔物の血がある場所を認知する能力があるようです。例えると魔物の血は発信器のようなものです>
トランヴェル
(そんなのありかよ!?)
<龍がここに来るまでおよそ7分。僅かしかありません>
<緊急事態を発令します。ここを破壊されるわけにはいきません>
ブオオオオ!!
サイレンが鳴り響く!




