ララとカリア
町から出る前はいつもの何気ない日常であった……。
そして森から帰って来たとき、
自分が知っている町はもうそこには無かった。
あまりにも変わり果てたため、自分の家がどこにあるかさえわからなかった。国の調査団があちらこちらにいるが、町の住民たちは誰一人見当たらない。
カリアは呆然と立ち尽くしていた……。
昨日までは皆いたのに……。
あまりの村の変わりように最初は唖然としていたが、
時間が立つと共に涙が溢れてきた。
村の人の安否を調査団に聞いてみるものの、
まだ調査中であり、わからないという。
調査団同士が話しているところを盗み聞きしていると、
生存者はほとんどいないらしい……。
あまりにも自分の日常が変わり果てて現実味が無い…。
彼女はまだ現実を受け止めきれずにいた。
翌日、カリアは未だに精神的に立ち直れずにいた。
そんな彼女の耳元に朗報が入る。
診療所で働く女性からララが生きていることを聞いたのだ。
そしてララもここの診療所にいるとのことだ。
カリアはララに会うべく父ガゼルに部屋の外へ出ていいか尋ねた。ガゼルは外へ出ても構わないと了承した。
カリアはその言葉を聞いては、すぐに部屋を出ていった。
カリア
(ララ………)
彼女はララがいる部屋にノックする…。
しかし返答がない。念のためドアノブを回して中へ入ってみたがそこには誰もいなかった。
「カリア…?」
背後から声がする。
カリア
「ララ!」
カリアが後ろを振り向くと、そこにはララがいた。
彼女はララを見ては、すぐに彼女を抱き締めた。
カリア
「良かった……。無事だったんだねララ」
ララ
「カリア……」
ララは頬から涙を流した……。
ドラフ
(ふむ……)
その様子を近くでドラフが見ていた……。
ドラフ
(今は話しかけないほうがいいか)
ドラフはララたちに背を向けて、その場から立ち去って行った。
一方そのころ、リリィはララから採血した血に魔法粒子があるかどうか調査を行っていた。
村があれほど被害にあったのにも関わらず、ララだけが無傷なのは違和感があった。彼女の血を魔法リトマス機に導入して、
血液から魔法粒子の濃度を計測した。
魔法リトマス機とは、魔法粒子を測定する機械だ。この機械で、魔法を使えるかどうか判断することができる。具体的には血液の中に魔法粒子があるかどうか見るのだ。
というのは、魔法使いは血中に魔法粒子を生成し、その魔法粒子から魔法を生み出している。
よって魔法使いには必ず血中に魔法粒子が混ざっているのだ。
もしララの血液から魔法粒子が見つかれば、ララが魔法を使用しているとわかる。
リリィの調査によれば、ララは一般の村娘であり、魔法学校に通った形跡が無い。
魔法使いの家系でも無いため、魔法を使用できないはずなのだ。
ピピビ……
魔法リトマス機から検査終了の合図が鳴り響く。
魔法リトマス機の捌け口から検査結果が用紙で出力される。
リリィ
「……これは」
リリィは目を疑う。
リリィ
「濃度……90%……」
この数値は異常だった。
通常の魔法使いならば、高くても30%が限度だ。
かなり逸した数値にリリィは機械が故障しているのではないかと疑った……。
リリィ
(もし……これが本当にこの数値ならば……)
リリィは念のため、もう一度計測を行った……。
故障かどうか確かめるために他の患者の魔法粒子も計測した……。
しかし、機械に不備がなく、数値も正しいことがわかった。
わからなかったのはこの異常な数値であった。




