世界が終る時2
海岸では人で溢れかえり、大混乱となっていた。
ツクヨミ国の民たちは船に乗って逃げようと、海岸へ押し寄せていたのだ。
クエリ
(一人でも多くの人を乗せないと………)
クエリは何とか海岸にたどり着くことができた。
しかし、港では大混乱を起こしており、国民を船へ誘導しなければならなかった。
クエリを含め、騎士団員たちは国民を船へ誘導し、できるだけ多くの国民を逃がすことに死力を尽くしていた。氷の津波はもう手前まで来ていたが、何とか最後の船を出すことができた。
騎士団員
「後は我々だけだ!確か地下に予備の救命ボートがあったはずだ!そこに向かえ!」
騎士団員たちは地下へ移動した。
そして、そこには一隻のみ救命ボートが残されていた。
急いで救命ボートに乗り込んでいく。
クエリも乗り込もうとしたが、すでに船が転覆しそうであり、乗れそうにもなかった。
クエリ
「私はここに残る!出発して!」
騎士団員
「クエリ殿!!」
クエリ
「いいから早く!!」
ボートは出発し、騎士団員たちはクエリに向かって敬礼をした。
クエリはここに残ることを決意したのだ。
外に出れば、氷の津波はもう目と鼻の先まで迫っていた………。
クエリはペンダントを両手でつかみ、祈りを捧げる。
クエリ
(さよなら………)
パカラッパカラッ………
馬の足音が聞こえてくる。
ドラフ
「クエリ!」
馬に乗ったドラフが、こちらに向かって来ていたのだ。
クエリ
「ドラフさん!?」
ドラフ
「クエリ!何をしている!?早く逃げるぞ!!」
クエリ
「で………でも………もう船は無いんです」
ドラフ
「それならば探すしかないだろう!乗れ!」
クエリはドラフの馬に乗り込む………!
ドラフたちは海岸沿いを走り、船を探す。
クエリ
(ダメ………見つからない)
クエリが諦めようとしていた時、ドラフは大声をあげた!
ドラフ
「あそこにボートらしきものがあるぞ!!」
砂浜にボートが一隻転がっていたのだ。
ドラフたちは急いでボートに乗り込む。
しかし、そのボートは穴があちこちに空いており、とてもじゃないが、使えそうになかった。
クエリ
「このボート穴が空いてます!これではダメです!」
ドラフ
「ならば塞げばよかろう!!」
ドラフは背中に背負っていたリュックから機材を取りだし、穴を塞げそうな鉄板で補修をかけていく!
もう津波はすぐそこまで来ていた。補修に間に合いそうにない。
クエリ
「わ………私の魔力で鉄板をくっつけます!」
クエリは魔力を鉄板に集中させ、無理矢理穴を塞いでいく!
ドラフ
「よし!出るぞ!!」
ドラフはボートを動かし、海上へと走らせた!
コッホ
「おーい!!待ってくれ!!」
クエリ
「誰か砂浜にいます!」
ドラフ
「あれは………コッホ殿?」
そこにはコッホの姿があった!
コッホはアイナを背負って走っていた!
津波はすでに砂浜まで伸びており、もはやコッホたちはボートに間に合いそうにない………。
コッホ
「せめてこの子だけでも!」
コッホは思いきってアイナを投げた!
クエリは船から身を乗り出し、アイナを両手でキャッチする!
コッホ
「その子を頼んだぞ!クエリ殿!!」
コッホは津波に飲まれ、凍りついてしまった………。
クエリ
「コッホさん!!」
氷の津波は遂にツクヨミ国を呑み込み、海を渡り始めた!
勢いは止まること無く、むしろ増していた。
隣国では大パニックとなり、世界各国でも騒ぎが起きていた。
「魔女の処刑から一転、魔女の魔法によって凍結された」
その事実を各国のメディアが放映し、世界中が恐怖へ足を踏み入れ始めたのだ。
ツクヨミ国の民たちが津波に呑まれ、凍っていく様は生々しく、世界中が悲惨な映像を見てどよめく………。
隣国の市民たちは放映を見ては急いで海岸へ向かっていった………。
ララたちを助けられなかったトランヴェルは悲しみにくれながら、この悲惨な状況を空から見ていた………。
トランヴェル
(どうして………こんな………)
その悲惨さは今までのとは比が違う。
ペルー村の魔物の襲撃、ルナ街での戦闘、昨日のアポロ市での状況、それらとは比べ物にならないほどの悲惨さだ。全てが凍ってしまい、人も家も街も都市も全て氷の渦の中で消えてしまった………。
この世の文明が全て失われてしまう勢いだ………。
トランヴェル
(私は………何も力になれない)
(私の力ではこの状況を何とかすることができない)
(私は………無力だ)
ダマ
「どうした?フクロウ?貴様はここで何をしている?」
トランヴェルは即座に頭を後ろに回転させた。
そこにはダマとノーズの姿があった。
トランヴェル
(………ダマ!?)
ダマとノーズはドローンのような小型飛行機の上に立っていた。
ダマ
「やはり貴様でもこの状況は打破できないか」
トランヴェル
(………)
ダマ
「どうやらお前も俺も過ちを犯したそうだ」
「魔女がこれほどまでに恐ろしい存在だったとはな………」
「もう取り返しはつかん」
トランヴェル
(………)
ダマ
「この氷は恐らくツクヨミ国を全て凍らせるだろう」
「もしかしたらこの国だけでなく、全世界に広がるかもしれない」
「このままでは世界が滅ぶ………」
トランヴェル
(一体どうしたら………)
ドシャアアアアアアア!!
突然地面から氷が飛び出し、トランヴェルたちへ襲いかかる!
氷は伸びに伸び、上空にいるトランヴェルたちを巻き込もうとしていた!
トランヴェル
(!?)
ダマ
「ノーズ!避けろ!!」
トランヴェルとノーズ、ダマは避けきることができず、氷に包まれ、地中へと引きずり込まれてしまった!
ゴオオオオオオオオ!!
トランヴェルたちは氷の渦の中へ流されていく!
トランヴェル
(うわああああ!?)
ノーズ
「うぐ………!?」
ガシャアアン!!
トランヴェルたちは広い空間に投げ出される!
ノーズ
「ダマ様!」
ダマ
「大丈夫だ。これくらいでくたばりはしない」
トランヴェル
(………ここはどこだ………?)
辺りは氷で埋め尽くされており、きらびやかに氷が輝いていた。
〈ようこそ〉
どこかしら声が聞こえてきた。
ダマ
「この声は………ソフィア!?」
〈ダマ………会いたかったわ〉
ダマ
「………俺は会いたくなかったがな」
〈ついでにフクロウも一緒ね。良かった〉
ノーズ
「どこにいる?姿を見せろ!」
〈フフフ………ここよ〉
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
地面が揺れだし、氷の壁からソフィアの巨大な顔が現れた!




