魔女処刑
アポロ市の外れにいくつか処刑台がある。かつてそこはツクヨミ国が犯罪者を罰し、戒めとして国民に見せつけるために作られた場所だ。しかし、戦争が終わり、平和になったこの国ではこの処刑台が使われることは少なくなった。普段なら人は集まるはずのないこの場所だが、今日だけは大勢の人間が集っていた。騎士団やフンボルト軍だけではなく、被災した国民も魔女の処刑を見るために大勢来ていたのだ。午前9時過ぎ、魔女の処刑を報道するために各国からメディアが集う。今回の魔女の処刑は人類初であり、世界中から注目されていたのだ。
報道陣は撮影機材ではなく、魔法粒子を通して報道を行っている。取材者は自分の目で見たものをそのまま映像化し、魔法によって国民へ映像を流している。放映者たちはできるだけ処刑台の前に立とうと、場所取りにかかった。
処刑台の周りには円を描いて座席が設置されている。処刑者を360度どこからでも見れるように配置されているのだ。そして中央に処刑台があり、罪人はそこで大勢に囲まれながら焼殺されるのである。
9時50分ごろ、ついにララたち4名が十字架に貼り付けられ、処刑台に現れる。
そして処刑台の周りにはフンボルト軍が50名ほど配列し、処刑者の真下には魔女ダリア、指導者のガラウ、そしてミドラスが立っていた。
ミドラス
(はたしてフクロウたちは来るのだろうか)
ガラウ
「時間だ………始めよう」
ダリアはその場から一歩手前に進み、民衆に対して大きく声をあげた。
ダリア
「ツクヨミ国の民たちよ!私はフンボルト王国の軍司ダリア・マーカフィーである!」
ダリアの演説から魔女の処刑式が始まった。
ダリア
「魔物の進撃によりツクヨミ国は大勢の命を失い、多大な被害を受けた」
「これは魔物たちを放った魔女の仕業であり、我々人類を抹殺しようと仕組まれたものであった!」
「我々は魔物たちと懸命に戦い、そして遂に魔女たちを捕まえることに成功した!」
「我々は魔女を捉えたのだ!今から執り行うのは人類史上初の魔女断罪である!」
「かつて我々人類は幾度も魔女に脅かされてきた………そして今回も魔女によって多くの尊い命を奪われたのだ!」
「しかし我々は魔女に屈しない!!」
「ここで魔女たちを粛清し、我々人類が魔女に脅かされることなく、魔女たちと戦えることを証明する!」
「そしてツクヨミ国の気高き国民たちよ………今回の戦いで我々は大切なものたちを奪われた」
「大切な人たちを奪われ悲しみに暮れよう………しかし、我々は今この時を生きているのだ!!我々が生きている限り我々は何度でも立ち上がることができる!!」
「ここで魔女を粛清し、我々は屈しないことを示そう!我々は何度でも立ち上がれることを証明してみせよう!」
「今から魔女を断罪し、我々は大きな一歩を踏み出す!」
「ツクヨミ国復興と魔女討伐の道を………!」
ダリアの演説は終わった。ダリアは舞台から降りていき、代わりに騎士団員たちが何名か現れる。彼らは処刑執行者である。罪人を炎魔法で焼き殺すのが仕事だ。
ミドラス
「フクロウたちは現れないな………」
ミドラスたちは処刑台のすぐ側にある傍観席に座っていた。
ガラウ
「そういえばソフィアは来ているのか?」
ダリア
「いるよ」
ダリアは処刑台のてっぺんを指差す。
ダリア
「あそこからピレネーと一緒に見ている」
ガラウ
「なんと………特等席だな」
ダリア
「いつでもフクロウを捕まえられるようにあそこで身構えてるんだよ」
ミドラス
「もうそろそろ処刑が始まるぞ?本当に来ないのか?」
ダリア
「油断は禁物………しっかりと周りを見ていた方がいいよ」
処刑台では処刑執行者たちが杖を構え、処刑の合図を待っていた。
ララ
(………ここで………死んじゃうのかな)
ララは僅かに意識を保っていた。
彼女は心の中で今までのできことを振り返る………。
ララ
(魔物に襲われて………サジたちが死んで………それから………魔女になって………)
ララは思い返せば思い返すほど、悲しさに取り込まれていく………。目から涙を流す………今までの苦境の旅もここで終わるのだと死を覚悟していた。
ダリア
「来ないわね………仕方ない」
ダリアは立ち上がり、手を上げる………!
彼女が手を下ろすことによって、処刑者たちはララたちを焼き殺すことになる。
緊迫した空気………静寂な時間が流れていく………。
処刑台の下では拷問を受けた魔女狩隊の面々がいた。
彼らは牢屋に入れられており、拷問で立ち上がることもできないほどダメージを負っていた。
牢屋にも放映がされており、処刑台の様子を見ていたのだ。
クエリ
(サカ……イト……)
クエリはボロボロになった体を起こし、映像に向かって歩いていく。
クエリ
(どうして………こんな………ことに)
クエリは思い出す………同期であったイトとサカとの思い出を。彼らは魔女や魔物から国を守るため厳しい訓練を受けてきた。どんなに苦しくてもお互いに助け合い励まし合い、若くして騎士団の頂点である魔女狩隊に配属することができたのだ。共に戦ってきた仲間が今ここで殺されそうになっている。クエリは自分の今の境遇も合わせ、悔しさのあまりに涙を流していた………。
この処刑報道を見て涙を流していたのは彼らだけでは無かった。魔女研究所の面々もサカたちが殺されそうなところを見て、心苦しい思いをしていた。
リリィやアマミも共に戦ってきたサカが処刑されるところを悔しく思っていたのだ。
対してソフラなどの民間人は魔女たちの処刑に肯定的だった。魔女によって被害に会い、大切な人を失ってきたからだ。
そして処刑台のてっぺんでは魔女ソフィアとカローナ、ピレネーが様子を見ていた。
ピレネー
「結局フクロウは現れなかったな」
カローナ
「まあ………わざわざ殺されに来ても仕方ないしね。来ないわけだよ」
ソフィア
「………本当にそうかしら?」
カローナ
「ソフィアは今でも来ると踏んでるの?」
ソフィア
「もちろん」
「だって………人間だよ?」
ソフィアはクスクス笑いながら処刑台の展望からトランヴェルたちを待ち構えていた。
様々な思いが交差している中、遂に処刑の時がやってきた。
ダリア
(もう来ないわね………じゃあ………やっちゃいますか)
周りが静まる中、ダリアは遂に手を下ろす………!
その合図と共に処刑者たちは炎魔法を生成する!!
ララ
(神様………)
バチバチバチバチバチバチバチバチバチ!!
処刑執行者の前に禍々しい黒紫の魔法が降り注ぐ!!
そして執行者たちはその衝撃で吹き飛ばされた!!
ミドラス
「!?」
ダリア
(来た………!)
カローナ
「おお!?本当に来た!?」
ダダダダダ!!
処刑台の周りにいたフンボルト軍たちは銃撃に襲われる!
ダリア
「どこからだ!?どこから撃ってきている!?」
ダリアたちフンボルト軍は周りを見渡してもどこから攻撃されているのかわからない様子だ。
ヒュウウウウ………
上空からいくつか砲弾が落ちてきた!
ガラウ
「まずい!?爆弾だ!?」
ドドドドドドドドドドドドドド!!!
処刑台が爆発していく!!
そしてその爆発と共に上空から武装した男たちが銃撃しながら降下してきた!
ダリア
「上空から!?」
ダリアは魔法障壁を展開し、上空からの攻撃を防いでいく!
しかし、真上から巨大な黒紫の魔法が襲いかかり、ダリアの魔法障壁と衝突する!!
バリリリリリリリリリリ!!
魔法障壁は消滅し、さらに上空から魔法爆弾が投下されていく!!
ドドドドドドドドドドドドドド!!
処刑台は一気に崩壊し、煙が立ち込む!
ダリア
「ぐ………」
ダリアは両手をかざし、特大な魔法を放とうとした!
しかし次の瞬間、上空から1人の少女がダリアを目掛けて飛び降りてきた!
ダリア
「!?」
ダリアは気がつけば、首を少女に噛まれていた!
ダリア
「がはッ!?」
サラ
「つかまへた………まほ!」
少女はフガフガと喋った直後、ダリアの首を噛みちぎる!!




