嵐の前1
バチ!!バチ!!
サラ
「うう………」
サラは実験用の魔法障壁装置に魔力を注入していた。
ボン!?
魔法障壁装置は爆発を起こし、バラバラに砕けちった。
アマミ
「やっぱダメだよね………」
リリィ
「今の機材じゃ膨大な魔力に耐えられない」
サラ
「疲れた………ごはん」
アマミ
「さっき食べたばかりでしょ!もう少し頑張ってもらえますか?」
イト
「ちょっとは休ませてやったらどうだ?」
「皆バテてるぞ」
その部屋には多くの魔法使いが息を切らして横たわっていた。
そんな中でもサラはぴんぴんしていたが、どうやら飽きてきたようだ。
イトとサラは魔法研究所で魔法障壁装置の開発に協力していた。魔法研究所に来てから今日で5日目になる。リリィやアマミたちが実験で開発した魔法障壁装置に魔力を注入し、魔法障壁が維持されるか確認をしていたのだが、結果は耐えることができずに装置もろとも壊れてしまったのだ。
アマミ
「やっぱ機材じゃこれだけの魔力に耐えられるものは無いよ………魔法で耐えられるものを
造らないといけない」
サカ
「どうやら本気でそれを考えなければならないようだ」
イト
「魔法で造るといってもねぇ」
「どうやって造るんだ………?」
アマミ
「私はあまり魔法に詳しくないからわからないけれど」
「こうバッと造ってババッとできないのかね?」
イト
「できるわけねーだろ」
この世界の魔法は何でも生成できるが、生み出したいものをきちんと理解していなければ生成することは難しい。頭でイメージしたものを作り出すことはできても、高性能であればあるほどそのモノの構成や仕組みを理解していないと自分が想像した通りのモノが造れない。
リリィ
「強力な魔法には強固な受け皿が必要………午後から魔法で受け皿を造れないか試してみましょう」
「それではご飯にしますか」
アマミ
「よし………昼飯だああ」
サラ
「ごはんだごはんだ!!」
サラは四足歩行で食堂へ駆け抜ける。
アマミ
「犬みたいだ………」
イト
「まあ気にしないでくれ」
イトたちは仕事を中断し食堂へと向かった。
イトたちが食堂へ向かう途中、指導者であるミドラスとすれ違う。
イト
(こいつは確か………)
イトたちは立ち止まり、ミドラスに敬礼する。
ミドラスは何も発することもなくそのまま素通りしていく。
アマミ
「あれ………今日は指導者が来る日だっけ?」
リリィ
「うん………ミドラスさんが魔法障壁について確認したいことがあるらしくて、うちの研究施設に来ているのよ」
アマミ
「俺あいつ苦手だな………なんかいつも人を見下すような態度が多いし」
サカ
「しかし妙だな………指導者が魔法研究所に来るなんて」
イト
(確かに珍しいな………)
アマミ
「ささ早く食堂へ行こうぜー」
「我慢の限界なんだよ」
イトたちは再び食堂へと歩き出す。
一方トランヴェルは変装したカリアとララと共に町外れの図書館へ来ていた。
国営の図書館にはもう行けないため、できるだけ遠くにある図書館でこの国について情報を集めていた。
トランヴェル
(またフンボルト軍の介入か)
トランヴェルは昨日の新聞を見ていた。
ここ数日の間、あちこちに魔物が出現しており、どれもフンボルト軍によって鎮圧されたという。
トランヴェルの横で新聞を見ていたララが口を開く。
ララ
「最近フンボルト軍がすごいね………」
「最近騎士団は治安管理がメインなんだって………軍人さんとしては成り下がっちゃったらしいの」
トランヴェル
(そうだな………他国の軍に助けられているのではどうしようもないな………)
トランヴェルは新聞を読み終えた後、フンボルト国の歴史に関する本を手にした。
トランヴェル
(いろいろ本を漁ってみたが………もともとフンボルト軍は自国の防衛のために存在していたという)
(それが近年他国の軍事に介入するほどの力をつけ、今では多国に駐在しているらしい)
(なぜこれほどまでに急速に力をつけたのか………いろんな説があるが、どれも確かではない)
ララ
「そういえばカリ………じゃなくてベルはどこいっちゃったんだろう」
ベルとはカリアのことを指す。
ララとカリアはそれぞれマネットとベルと名前を偽って呼びあっていた。万が一ララとカリアの名前が騎士団の耳に入ったら大変なことになるからだ。
トランヴェル
(そういや姿を見てないな………)
ララ
「あ………いた」
ララの目線の先にカリアは本を立ち読みしていた。
ララ
「ベル!」
カリア
(………)
カリアはララの声が聞こえず、黙々と本を読んでいた。
ララ
「ベル!そろそろお昼にしよう?」
カリア
「ん………ああ………もうそんな時間……」
カリアは本を閉じ、その本を本棚へ戻す。
トランヴェル
(あ………)
カリアが読んでいた本の表紙がトランヴェルの目に入る。
ララ
「行こう!」
カリア
「うん………」
トランヴェル
(カリアが読んでいた本………ガゼルが書いたやつだ)
(そういやカリアなら魔法障壁について詳しいのかな………イトたちが帰ってきたら確認しよう)
(まだカリアたちにはペルー村に行ったことを話してなかったからな………)
ララたちは図書館の出口へと向かう。
夜20時ごろ。イトたちは仕事を終えて帰宅の準備をしていた。
イト
「あんまり進展が無かったな今日は」
サカ
「魔法で受け皿を造るのは本当に難しいな………来週までに間に合うか?」
サカたちは来週までに膨大な魔力に耐えられる受け皿を魔法で生成することを課題として与えられていた。
サカ
「あんまり魔法使いたちを酷使するのは避けたい………」
「まずはどんなモノに造り上げるか考えることにしよう」
イト
「そうだな………俺は全然魔法が出せないからお前たちに任せるしかないけど」
サラ
「イト………帰ろう?お腹すいた」
イト
「はいはい………帰ろうね」
イトたちは魔法研究所を出て馬車に乗り込み、家まで送ってもらうことにした。
イトたちを乗せた馬車が王宮を通る時、王宮の側にミドラスの姿が見えた。
イト
(またあの親父か………)
ミドラスは王宮の入り口に入っていく。
イト
(こんな遅くに妙だな………何してんだろうな)
馬車は王宮を通り過ぎていく………。




