ぼやけた世界に
俺は目が悪い。
目が悪いと周りがよく見えないし、ノートを取ることも難しい。オマケに夜は全身黒ずくめの人が暗闇と同化して事故りかけたこともある。
まあ、そんな不自由が無いように眼鏡やコンタクトがある訳なのだが…
しかし!悪いことばかりでは無い。
視力0.1の俺にとって、朝の通学時間は人目を気にしなくても良い唯一の時間である。
イカツイ奴らにガンつけられても見えてないから目を逸らす必要がない。てか、もう逸らしてるから問題ない。前からやって来るなんか分からんけどなんか分からん威圧感を持ってるイケてる奴らとも目を合わせなくて済む。
美人そうなお姉さんの顔が分からん事くらいが欠点だな。うん。
コンタクトをいつも付けている俺にとって、この世界を体験できるのは、うっかりコンタクトを買い忘れた時とか、眼鏡を持って行くときくらいだ。(因みに眼鏡は胸ポケットに入れて行く。いざという時にすぐに装着出来るからだ。)
この、月に何度かやって来るぼやけた世界は「コンタクト」と言う媒体を通さずに見ることが出来る俺だけの本当の世界だ。視力0.1の者だけが見ることが出来る特権だ。
春から俺は高校生になった。そこそこ頭が良いとされる高校にだ。(一応、推薦で入った。内申点のおかげだ。先生に媚び売っといて良かった。)
「…さてと、行くか。」
松山の夏は暑い。クマゼミもよくやる。でも、俺よりはマシか…
70円を片手に俺はスーパーに向かった。
俺は霞 アキラ。
「ゴリゴリ君。値上がりしてない…よな?」
今日の外は眩しいくらいぼやけてる。