第四十話
(も、申し訳ございません! 貴方様の連れの彼女達が、三日三晩寝ておられた貴方様を驚かせようと、他の誰にも内密にすることを条件に、私めを唆しにこられたのです! しかも、娘たちの姿に変身した状態で! 非常にずるがしこくないですか! 私が娘たちを溺愛してることを逆手にとっての狡猾な犯行ですよ! よくも騙してくれましたね! 今すぐここで謝りなさい! でなければ、国外追放どころではなくなりますよ!)
「ふぁい……」
「すびばべんべびば……」
「…………」
クリスが受身を取り損ねて、後頭部をごっつんこさせてから数分後。
ゲストルーム改め女王の寝室では、ベッドの縁に座って腕を組んでいる女王(俺)を前にして、霊体だが本物の女王ことシュプリムさんによる、まるで痴漢を捉えたかのような愛憎入り乱れたテンションのお説教タイムが始まった。
完全に気が動転している女王様の前では、誰もが口を挟めるほど精神的な余裕はなかった。
あえなく現行犯でタイーホされて、そのまま正座で説教を受けている、全身黒づくめの組織……的な犯行に及んだ二人は、両者共々反省の色が窺えない。
クリスは、俺が強面体育教師に高校時代に嫌という程叩き込まれた結果、地獄のジャックナイフとかいう意味不明な技名を付けられた、自慢の小外刈で倒されて後頭部に、某有名スイーツのトリプルのような見事な団子を付けている。
ただ、ちょっとヤバいなと思うのは、今の彼女の顔。
床に頭蓋骨を打ち付けた直後、クリスは直前までア〇ムやバ〇ディーよりは弱そうな鉄腕で、幼女の頭を果物の如く絞ろうとしていたのだが、その瞬間に力が抜けて、あろうことか漫画でしか見たことないようなメリ込み方で、幼女のアイアンヘッドが彼女の顔に効果抜群のダメージを与えてしまったのだ。
おかげでクリスは、クレーターのように陥没してしまった醜い顔のまま、説教を受けているのだ。
岩でも氷でもなさそう。
フェアリー……? まさかな…………。
「はぁ……」
現場の第一発見者(?)となった挙句、この場に居座らされることとなったエルトさんも、頭を抱えている。
そりゃあそうだ。ドッキリ番組でターゲットではないのに騙されて、二次被害に会ってるようなものなのだから。
また、幼女……ではなくヴェネットも、全身から滝のような汗をかいていた。
どうも正座がそろそろキツいらしい。頻繁にケツを浮かせて耐えようとしている。
カーペットの上なんだから全然マシだろ。
俺なんか普通の床に正座させられたことあるぞ。おかげでそん時は足首鬱血して、まともに歩けなかったんだからな。




