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キスと仮面の救世主(アルシオン)  作者: 風魔疾風
幕間1 世界の控え室

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第三十六話

 不意に投げられた問いかけに、聞きしに勝るほど驚愕の体相(ていそう)(てい)したのは、図星だからだろうか。

 ヴェネットがハッとした表情で口元に手を添えた。


 「あなた…………どうしてそんなことを聞くの?」


 「とぼけんなよ、初歩的な論点ズラししやがって。欠陥品の仮面の話にシフトして、実の祖母がいない事実を有耶無耶(うやむや)にしようとした。俺ならそっちの方がさぞかし興味を惹かれると思ったんだろうが、目論見(もくろみ)が甘ぇよ。じゃあ問題だ。実祖母が存在しないという事実が導き出す結論、そりゃあなんだ?」

 「…………」


 沈黙。ま、当然だな。

 俺はしたり顔を浮かべると、話の続きを紡ぎ出した。


 「前に言ってたよなぁ? 『仮面転生術(ラルヴァ)は、元々おばあちゃんが長年研究していたものを私が完成させたもの』だってな。そのおばあちゃんが存在しないのに、ラルヴァは完成していて、お前はそれを体現している。そしてさっきまで被っていた仮面は、想像上の人物でも作れるんだったな。つまり、お前は存在しない実祖母を手作り仮面で創造して、あたかも自分は孫娘であるかのように振舞っていたが、その実二人は同一人物で、ラルヴァの研究は全て一人で完遂したんだろ! そうなると必然的に、お前の両親も存在しない事になる! ジャハラ兄弟戦での父親の仮面も、血縁のない想像上の人物ってことになるからな! そして、そのためにどれくらいの年月を経てきたかは知らないが、その間ずっと生きていた以上ヴェネット、お前は不老不死だってことさ!」


 「…………」


 またしてもだんまりを決め込むか。

 やけに強情(ごうじょう)だな。何か隠してるのか?


 目を瞑ったまま、瞬き一つも微動だにしないヴェネットに対して、時間とともに疑問符が浮かんでくる。


 しかし、それらは鼻息だけで全て吹き飛ばされる。


 「…………あはは……あっはは……あーっはっはっはっはっはっはっ! 何よ急に、探偵ぶっちゃって。超ださぁーい」

 「別にいいだろ! さ、さぁ! 結論はどうなんだ!」

 「あっはは! そうね、結論から言うと…………半分正解……かな。不死じゃあないかもしれない……けど、不老ではないでしょ? この、大人っぽい姿に成長できているんだし」


 そう言って、ヴェネットはその場で一回転し、全身の露出した────所から覗く生傷だらけの────肌を見せびらかしながら、あどけなく振舞ってみせた。


 だが、違う。違うんだよ。

 俺が求めていた答えは、そんなんじゃない。


 「それに……仮に私が不老不死だとして、それがなんだというの? それってさ、今必要な情報?」

 「そ、それは…………」


 目元から光が消えていく彼女の笑顔が、辛辣(しんらつ)だ。

 試されてるのか、俺は。

 なら、一かバチかやってやるだけさ! 当たって砕けろ!


 「だったら…………だったらどうして! 運命だとか、円環(えんかん)(ことわり)だとか、ちょっとミステリアスで謎多き美女みたいな、口先だけの意味深な言葉を吐き捨てたのさ! 大人と子供を繰り返してるなんて、その辺のファンタジーでもやらないような突拍子(とっぴょうし)もない設定を、まるで実体験でもあるかのように(かた)るなよ!」


 どうだこんちくしょう! 俺だって、ただただ話を鵜呑(うの)みにするほど馬鹿じゃないんだよ!

 参ったか! 文句があるなら言ってみろ!


 いつしか俺は、興奮するあまり座っていたカウンターから降り立って、感情のなすがままに、思いの(たけ)をぶちまけていた。

 言葉を選んで絞り出すだけで、滝のような汗が出てくる。

 物理的なことは何もしていないのに、ある意味では満身創痍(まんしんそうい)な気分だ。


 そんな、訴えかけるような俺の粋がりは、ハイヒールの強い踏み込みで文字通り一蹴される。


 「あんたがそう思うならそうなんでしょ。()()()()()()()()

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