第三十一話
残り二百点。まあこれ以上の項目なんて、思い当たるものも限られる。
「その四。やってくれたわね。ユリイカとの邂逅。文句なしのプラス百点よ。これがなければギースに勝てなかったというのが課題だけど、あなたは彼女から授かった力をすぐに使いこなした上で、更に応用させてみせた。非の打ち所のないパフォーマンスに敬意を表して帳消しよ」
「おおう、いつになくベタ褒めじゃねぇか。どういう風の吹き回しだ?」
「どうもこうも、絶対に見つかるはずがないと思ったチート本を、二冊とも見つけるなんてどんな偶然よ! あれは本来、ギースを倒した後にあそこに行って、次の行動目的を決める時に、『あれれ〜? おっかしいぞぉ〜?』ってなって、それとなーく見つけ出して読んで、
パンパカパーン!
おめでとう! アルシオンは つよい力を 手に入れた▽
って、なるはずだったのに!」
「ヴェネットお前マジで夜道には気ををつけろよ!?」
背後にメガネの子供の幻が見えたのは嘘だと思いたい。
にしても、やっぱり過ぎた力だったんだなありゃ。
ユリイカはもちろん、これで覚えた死語魔法も星紡剣も。
「一体誰が分かりやすい所に置いたんだか……とにかく、彼女の力をあまり頼りすぎないことね。強すぎる力が破滅をもたらすのは世の常よ。何でも記憶できるからって無闇矢鱈と────」
(全て聞こえているぞ、女。あまり偉そうなことを宣うでない)
空気が一気に張り詰めたかと思うと、突然俺の背後に、ヴェネットの言葉を遮るようにしてユリイカが現れた。
姿や纏っている白衣などは、フレシアと一緒に見た精神世界での容姿そのままだ。
あの時は戦闘中で焦りもあったため、防具屋のおばさんに似てる程度にしか思わなかったが、改めて見つめていると、似てはいるが全く違うところもある。
見かけの若々しさは言わずもがな、透き通るような金髪の透明度だったり、きめ細やかでメラニンのなさそうな白さの肌だったりと、女王というより女神という肩書きの方がふさわしいような神々しさを放っていた。
彼女が女神であるならば、ヴェネットはある意味駄女神だが。
(…………お主、何をさっきから妾のことをジロジロと……あ、あまり見るでないぞ! 恥ずかしいではないか…………)
「やーいやーい! このド天然女たらしぃー! 守備範囲広すぎぃ! 口も八丁手も八丁! カレーはらっきょうチェケラッチョゥ!」
「外野は黙ってレフトフライでも拾いながら大人しくしてろ!」
「ピッチャービビってる、ヘイヘイヘイ!」
ヴェネットがいきなり煽ってきたかと思いきや、突然のラップ。
無様にも突っ込んでしまったが、何処吹く風。
なんのコントだよ全く……。




