異世界の海賊が駆逐艦と出会ったら
新作です。 シリーズ内の一作品です。
本編 世界一の魔術師?ですが本業は料理人です
の関連作品です。
本編より1話1話が短いので、そのあたりもよろしくお願い致します
「センチョー!見えてきましたー」
「ようし!撃って撃って撃ちまくれい!!!」
「りょーかいでーす!」
ドウンという音と共に、大砲から無数の弾丸が飛んでいく。
遠くの方に見える船が、次々と沈んでいく。
「はははははははは!」
「撃墜かんりょーです!」
「よくやった!」
この世界には似つかわしくない船、地球では俗に駆逐艦と呼ばれる船。
科学という言葉すらも存在しないような剣と魔法の世界で、世界最強の船として君臨できるだけの力を持った船。そんなある駆逐艦が、ある時ひょんなことから異世界転移してしまった。
これはその駆逐艦と、駆逐艦をたまたま見つけた海賊団の、気ままな冒険生活を綴った物語である。
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「ぷはぁ。酒がうめぇ!勝ったあとってのはいいもんだなぁ!」
「ほんとですセンチョー!」
船長と呼ばれた男は、ジョッキに入った酒を一気に飲み干し、隣にいた猫耳女性乗組員にそう言い、乗組員も美味しそうに酒を飲む。
「しかしなんだ。最近は連合国海軍もピリピリしてるな」
「それは船長があの大海賊団。あのエドワードの船団を撃破したんですから!当然のことですよー!」
「そうだな。あはははは!」
「それもこれも全部この船のおかげですね。この船がなかったら私達...」
「そうだな...」
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ある大陸の西の海に、クレバー海賊団という海賊団がいた。
規模は小さかったが、持ち前の勇気と根性で、数多くの困難を乗り越えてきた、比較的なの通った海賊団だった。
「快晴だな」
「センチョー!何か船がこちらに向かってきます!」
「適当に魔法で蹴散らせ。今日は天気がいいから、雨の日には使えない火魔法撃ってもいいぞ!」
「りょーかいでーす!」
見張り台にいた猫耳乗組員は、腰にあった杖を手にすると、杖の先から大きな火の玉を作り上げた。
「えいっ!」
火の玉は一直線、目先の船へと飛んでいった。この世界に大砲などといった便利な武器はない。遠けりゃ魔法。近けりゃ剣。そういう戦い方がこの世界の基本だ。
そのまま船にあたって船が燃えるかと思いきや、その火の玉は船にたどり着く前に砕ける。
「アレ?おっかしいな?」
「如何した?」
猫耳乗組員はスコープを覗き込み、じっと相手の船を見た。
「ちょっと確認します!敵船は...黒いドクロに、黒い髭...?」
「まさか...?」
「エドワードの大海賊団だ!」
エドワードの大海賊団。この世界で最も恐ろしいとされている、最悪の海賊団。その船が通れば海は血に染まり、その船が港に着けば港は壊滅。
船とすれ違うだけで撃墜される。
残虐、残忍、何よりも最強な海賊団。
「センチョー!?どうしますか!?」
「むぬぬ...逃げるしかあるまい...舵を切れ!」
「「「りょーかいです!」」」
その指示で船の乗組員が忙しく動き回る。
「センチョーセンチョー!敵船がものすごい速さで急接近してきます!」
「急げ!死にたくないなら帆を張れ!風の魔法で即逃げるんだ!」
そうしてやっと方向転換を終え、やっと逃げられる体制に入ったその時、敵船から先ほどの猫耳乗組員の魔法の数倍は大きいであろう特大の火の玉が飛んできた。
ズドン。という大きな音を立てて、船にそれは直撃した。
本編もよろしくお願い致します。