拳銃
ダニエルは頭が真っ白になった。その空虚な頭に言葉が繰り返し響く。だんだんと小さくなるその言葉は徐々に意味をもたらし、突き刺さるようにダニエルを貫いた。体の力が抜けてゆく、何も考えることが出来ない。恐怖だけでは言い表すことの出来ないさまざまな感情でいっぱいになる。それはどしゃ降りの雨で出来た瓶に溺れもがくトカゲような、メラメラと燃える炎にジリジリと焼かれるような、そんなものだった。
「ほら、こいつで殺るんだ。」
男の血にまみれた手がダニエルの透き通るような白い手を覆う。ひんやりとした鉄の感覚が体に伝わる。全身にひどく重い鉛がのったかのような感覚。思ったよりずっと重く冷たかった。目の前に見えるのは拳銃をもつ自分の手。その震えを恐怖を強引に押さえつけるように添えられた、男の大きくゴツゴツとした手。指にはシルバーの指輪が沢山つけられていていつもは輝いているであろうおそらく高価である指輪は、今は血にまみれ鮮明な輝きを見せていなかった。が、どこかまた 別の美しさがそこにはあった。右手親指の付け根には、控えめだが何処か存在感のある蛇であろうタトゥーが入っていた。銃口の先には姉のアナシスタ。ヒューヒューと小さくか細い呼吸音が聞こえる。いつものようなうすら笑みを浮かべている。だが、その目はいつもの晴れ渡った青空のように透明で透き通った色ではなく、深くくすんだ青、絶望で満ちた色だった。死を望んでいるように感じさえもした。
「いいの、いいのよ、、ダニエル」
「さぁ。」
男の声が、ひどく熱のこもったかすれ声が耳にかかる。その声は感触は耳に貼りついて、疎ましく蛇のように絡みついて離れない。
指にこめた力が少しずつ、少しずつ強くなっていく。
「愛してるわ。」
「殺れ 。」
ダニエルはギュッとかたく目を閉じた。
パァン、、、、、、、、、銃声が響いた。




