狂いだす
「ジョン、これはお前の罪なんだよ、わかるか?罪だ!!」
「お前は幸せな温かい普通の世界を求めた、俺たちを裏切ってな!」
男は血走った目を見開き血管の浮き出た真っ赤な顔で声を荒立て激語する。
「これがどういうことかわかるか?ジョン お前は賢い男だものなぁ、わかるだろ?」
ジョンは耐えがたい陰鬱な圧迫感を押しのけてのどの奥から声を出す。
「だから俺を殺しにきたんだろ」
「あぁ〜そういえばそうだったっけなぁ」
男はとぼけたようにニヤニヤと笑う。
「だがぁ....昔のお前が戻ってくるんなら、ここのゴミを片付けて、また一緒に仕事したいもんだなぁ」
「ふざけるな‼︎‼︎‼︎」
ジョンの怒鳴り声が緊張感のある空気をさらに濃くしていく。
「そうかぁ.....残念だ」
男の目がギラリと光る。
「絶望を味わえば、昔のお前は戻ってくるのかなぁあハハハハハハハハハ」
男の目は天を仰ぎ手に持った拳銃で女のこめかみをトントンと軽く叩きながら笑った。
まるで死への旋律を奏でるかのように。
「やめて......お願い.....死にたくない....」
女は悲鳴に似た声を震えるのどの奥から必死に出し、男に哀訴する。
「お願いだ...頼むその人だけは」
ジョンは膝を地面につき、意地やプライド、殺気を捻り潰し男に懺悔しようとする。
パァン......
弾丸がジョンの腿を貫く。ジョンはその場に倒れ込み耐えがたい痛みに苦痛の声を漏らし、うずくまる。
「お前はそこで大切なものが無くなる瞬間を見ていればいいんだよ」
「俺たちを捨てたことを後悔していればいいんだ」
男は吐きすてるように言い放った。
「さぁて、命乞いはすんだかなぁ?そろそろさよならのお時間のようだ」
女の耳元でそう呟きクツクツと乾いた笑い声を漏らす。そして舌舐めずりしながら地にひれ伏す無様なかつての親友ジョンを眺める。
「お願いだ、やめろ、やめてくれ......やめろおおおおおおおおおおおおおお」ジョンは痛みを忘れてしまうほどの怒りと殺意の叫び声を上げる。
ほんの近くにある拳銃という希望を取ろうと必死になってもがくが、その唯一の望みも男の足によって絶たれた。
カチッ リロードの音。狂喜に歪んだ男の笑い声。狂人と化した男の叫び声。いまにも消えそうな女の悲鳴。
「いや、いやよ.......いやあああああああああああああああーーーーーー」
次の瞬間部屋に鳴り響いた音は、悲痛の叫び声でも鳴き声でもない。
一つの銃声音だった。
女はようやく男の手から解放されその場に崩れ落ちる。ジョンの手を温かくしたものは、柔らかく優しい女の手でなく、じわじわとひろがる赤い鮮血だった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ジョンは目を見開き、殺気に燃えた、絶望で 満ちた目で男を睨みつける。いや、もはや睨みつけるなんてものではない、今にも飛びかかり内臓を引き散らかす狂犬の目、そういったほうがいいものであろうか。
歯で噛みしめすぎた唇には血が滲み、ポタポタと血が流れ落ちている。床をかきすぎたため、爪はボロボロにかけてそれぞれの指から血がながれ続けていた。
男は悲しそうに眉を寄せ、床にひれ伏し獣のようにうなるジョンをさげすんだ。
「あぁ無様だよ、ジョン。」




