ひとときの幸せ
過去から始まります。
「デラおばさまー!!結婚おめでとう!」
ダニエルは高価なスーツや蝶ネクタイ、ショーツをお構いなしに、整えた色素の薄い黒髪を振り乱して部屋中を駆け回り大好きなおばに無邪気に抱きつく。
「もう!ダニー!だめじゃない!はしたないわ!」
頬をふくらましてムスッとしている姉のアナシスタにダニエルはこれでもかと言うようにいーっと舌を出す。
「もーう!ほらほら二人とも喧嘩しないの」
優しくて活気のある声。デラ・アルビストンおばさまだ。スレンダーラインの純白のドレスがデラの上品さを演出している。首もとはハイネックで沢山のレースやパールが折り重なり、いかにも大人の女性って感じだ。ダニエルはいつもと雰囲気の違うデラの美しさに思わず顔を赤らめる。姉のアナスタシアも目を輝かせてドレスに見とれている。
「デラおばさま、とっても素敵よ!ねぇ、ダニー。」
アナスタシアのキラキラとした輝かしい瞳がダニエルに移る。
「う、うん」
ダニエルは恥ずかしそうに目をそらしながらも頷いた。その姿に思わずデラもクスッと微笑みをこぼす。
「ありがとう、とっても嬉しいわ…2人ともこんなに大きくなって……」
純白の花嫁は2人を包みこみ、少し潤んだ瞳で言った。
「2人とも目を閉じて」
「どうして??」
ダニエルが口ずさむ。2人の不思議そうなぱっちりとした丸い目がデラを見上げる。
「いいから、いいから!!」
2人は不思議に思いながらも目を閉じた。しばらくすると、首にひんやりとした感覚がした。チェーンだ。鎖骨の辺りにあるのはリングだろうか。
「わぁーーーっ!」
2人はそろって甲高い嬉しげな声を上げた。2人の首には輝く銀のチェーンがつけられていた。チェーンにはリングが一つ付いていて、それぞれの名前が刻まれていた。おそろいのネックレスだ。
「ありがとう!デラおばさま、とっても嬉しいわ!」
アナスタシアは両手にリングをのせて、嬉しそうに微笑んだ。ダニエルはじっと見とれていて礼を言うのを忘れている。ハッと思い出したようにダニエルも礼を言った。
「あぁ、私の可愛い天使たち、主よ、どうかこの子だちを見守っていて下さい。」
デラは指で十字をきり手を重ねて祈った。2人もそれに合わせるように手を重ねて祈る。
「これは私からのお守り!どんなことがあってもきっと主はあなたたちを守って下さるわ!」
「うん!大切にするよ!」3人は顔を見合わせて微笑んだ。
「おや、3人でなにしてるんだい。」
「フフッ私たちに秘密ごとかしら?」
イングリッシュオークのドアのきしむ音に声がかさなる。
「父さま!母さま!」
ダニエルは両親のもとにかけより、とびまわっている。
「もーう!ダニー!はしたないってば!」
「うるさい!姉さんだって本当はこうしたいくせに!僕はただ素直なだけだよ。」
2人はお互いの顔をいがみ合って口喧嘩をしている。
「こらこら、2人とも今日は喧嘩しない約束だったろ?」
ムスーッとふくれながらも2人は小さく返事をした。そんな2人に微笑を浮かべる夫婦は、絵に描いたような美男美女で部屋の雰囲気がよりいっそう華やかになるのがわかった。
空は雲一つない青空で、絶好の結婚式日和だった。結婚式は家の敷地のだだっ広い緑の原っぱでおこなわれた。心地よい春風がふいて、とてもいい気持ちだった。結婚式には親族や親しい人物を招待していて、約50名ほどの人がいた。知らないひとが多かったが、父や母と話す様子を見て、安心した。デラおばさまの結婚相手は小さな珈琲のお店のマスターで、裕福ではないが優しい人だ。そしてその人の甥が僕の親友のコナー・トンプソン。僕と同じ年で毎日のように遊んでいる、たった一人の親友だ。だがそのコナーの顔が見えない。結婚式にはコナーの両親はもちろんきているしコナーもきているはずだ。
結婚式も終盤に近づき、映画で見たことのある誓いのキスっていう儀式が行われていた。アナシスタは顔を赤らめて手で顔をおおい、指と指の間から目をのぞかせて見届けている。そんな姉を横目に早く終わらないかなとダニエルは思った。結婚式も終わりようやく立つことのできたダニエルはふーっと手を空にのばし、披露宴の準備に忙しそうにバタバタしている使用人たちを眺めていた。すると、しっかりとめかし込んだコナーが歩いてくる姿が見えた。コナーの顔が青ざめている。ただでさえ白いコナーのそばかすだらけの肌が、よりいっそう白くなっている。どこかおどおどとしているし、コナーの真っ青な目がどこか震えているようにもみえた。心配になったダニエルはコナーに話しかけた。
「コナー!」小走りで駆け寄る。
「ずいぶんと遅かったじゃあないか、寝坊でもしたの?」
「い、いや少し道に迷っちゃってさ」コナーの声がわずかに震えている。
「ふぅん。」
コナーは物覚えが人並み以上で一度きた場所は迷わずに来ることができるはずだ。しかもうちの敷地内だし毎日遊んでいるのに迷うはずがない。おかしいと思ったがなにか言いたくない事情があるのだとおもい追求するのはやめることにした。
ふと、空を見上げると太陽が雲に隠れてさっきまでの青空が嘘だったかのように思うほどの分厚く、黒い雲が僕たちの頭上を覆っていた。
「雲ゆきがあやしいね。」
「あぁ、本当に。」
ダニエルは小さくうなずいた。
読んでくださりありがとうございます。
今回が初投稿となります、夜冬 須永です。
以前から少し考えていた話を文章にしてみようと思いました。
なかなか難しかったですが書いていてとても楽しいです。
これからもこんな感じで投稿していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
おかしな文章などが多々あると思いますがお許し下さい。




