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激突

 山中で一晩を過ごしたアレン達は、翌日、曇天(どんてん)の空の下、山間にある村へと辿り着いた。

 山道を歩き続け、疲れていたクレアは、ようやく休めるとホッとした表情を見せたのだが、それとは真逆に、アレンはその表情を厳しくしていた。

「どうかしたのですか?」

「……村が静かすぎる。それに……」

 クレアの質問に答えるのもそこそこに、アレンは村の中へと足を進める。

 アレンの態度に困惑したクレアではあったが、急いでアレンの後を追いかけ、そして、目撃してしまう。

「これは……」

 クレアの目に映った光景は、酷いものだった。

 村の中では、農具や木材など、ありとあらゆる物が散乱しており、その中には、人や家畜の死骸も混じっていた。

「どうして、こんな……」

 クレアが目を(おお)い、顔を青ざめさせる中、アレンは倒れていた遺体へと近付き、その状態を確認する。

 遺体の顔は恐怖に(ゆが)んでおり、その背は、大きく縦に裂かれていた。

 恐らく、逃げようとしたところを斬られたのであろう。

 そして、最も特徴的なのは、

「どいつもこいつも、血を抜かれて干からびているな」

「それって……」

 こんな事が出来る相手を、アレンは一人しか知らない。

「ああ、奴の仕業だろうな」

 禍々しい紅い魔剣の持ち主。あの男がここに居るのだ。

「どうするでのすか?」

 顔を青ざめながらも、クレアはアレンにどうするべきかを問う。

 逃げるべきなのか、それとも……。

「……ここでやるしかないな」

 少し考えた結果、アレンはそう判断した。

 相手が力を(たくわ)えており、不利なのは充分に分かっている。

 だがここで逃げ出して、山中で不意をうたれでもすれば、状況が悪化するばかりだ。

 それに、

「逃げ切れるとは思えないしな」

 村の奥から、凄まじい殺気が放たれているのを、アレンは感じていた。

 相手もアレンに気付いたのだろう。

 素直に逃がしてくれるとは、アレンには思えなかった。




「ここだな」

 村の奥へと進んだアレン達は、ある建物の前で足を止める。

 村の集会所か何かだろうか、その建物は他の家などよりも大きく作られていた。

 アレンはこの建物の中から、禍々しい気配が漂ってくるのを感じ取っていた。

「お前はここで待っていろ」

 一人で建物へと入るつもりだったアレンに対し、クレアは首を横に振る。

「いいえ、私も行きます。必要になる時が、来るかもしれませんから」

 何が、とは言わない。

 それでもアレンには、クレアの想いが充分に伝わっているから。

「……好きにしろ」

 厳しい表情をしたアレンは扉を開け、建物の中へと入って行く。

 クレアも緊張と共に、アレンの後へと続いた。




 建物の中は、外よりもさらに薄暗かった。

 窓は全て布で覆われており、うっすらとしか、外の明かりが入ってこない。

 そのような状態の中、室内に立てられた何本もの蝋燭(ろうそく)が、建物の中を照らしていた。

「奴は……」

「よお、遅かったなぁ」

 建物の奥、暗がりから掛けられた声に対し、アレンは剣の柄へと手を伸ばした。

 のっそりと、蝋燭の明かりの下へと身を晒すギール。

「待ってたんだぜぇ、お前の事を。しっかりと準備をしてよぉ」

「その剣は……」

 ギールの右手で、禍々しく輝く紅い魔剣。

 だがアレンには、前に見たものと同じ剣には思えなかった。

 多くの村人たちの血を吸ったのであろうその魔剣は、(まと)う気配が、そして形状すらも、より禍々しい物へと変化していた。

「面倒だったんだぜぇ、ちまちまと血を吸う作業はよぉ」

 剣へと舌を這わせ、ギールは不気味に笑う。

 その顔は、以前見た時よりも、狂気に満ちていた。

「魔剣の力に狂ってきたか……」

 魔剣に血を吸わせ、力を増やしたせいであろうか。

 ギールの心が、魔剣の狂気に浸食されているように、アレンには思えた。

「狂う? 魔剣なんか使う人間は、全員狂ってるもんだろう?」

 何が楽しいのか、ギールはケタケタと笑う。

 そして、

「さぁ、昨日の続きだ! 宴を始めようぜ!」

 魔剣を振りかざしたギールが、獲物を補足した獣のように、アレンへと駆け出す。

 アレンも剣を引き抜き、前へと出る。


「楽しい楽しい殺戮の時間だぜぇ! 血を欲する魔剣(ブラッディソード)!」

「喰らえ、魂を喰らう剣(ソウルイーター)!」

 

 力を解放した魔剣使い達は、今、再び激突した。



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