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魔剣

 アレンの言葉と共に、剣の柄へとはめ込まれていた、蒼い宝石が輝き出す。

「何だ? この光は……?」

 さすがのギールも、この光景には目を見張る。

 何が起こるのかと、身構えたその時、

「うおおおおぉぉっ!!」

 アレンの雄叫びと共に、蒼き輝きがさらに増していく。

 その輝きと共に、剣から放たれていく波動。

 ギールはこれと似たようなものを知っていた。

「まさか……お前の剣も!?」

 ギールが驚いた一瞬の隙をつき、アレンは紅き魔剣を弾き返す。

 普段のアレンであれば、いかに隙をついたとは言え、魔剣を弾き返す事など出来なかっただろう。

 だが今、アレンの身体は、蒼き宝石から放たれる光により強化されていた。

 ギールを弾き飛ばしたアレンは、そのままクレアの下へと走り出す。

「な、何だっ!?」

 クレアを斬ろうとしていた男は、自分へと迫ってくる相手に驚き、何も出来ぬまま、アレンによって斬り捨てられた。




「今のは……?」

 クレアは今、目の前で起こった出来事が信じられなかった。

 斬られると思った次の瞬間、アレンが疾風のように現れ、男を斬り捨てた事。

 アレンが先程までいた場所と、クレアのいる場所までには少し距離がある。

 到底、普通の人間には出来ない動きだった。

「クックック……」

 (かす)かな笑い声が、辺りへと響く。

 皆が視線を向けてみると、笑い声はギールから発せられていた。

「ハーッハッハッハ! まさか他の魔剣の持ち主に会えるなんてなぁ!!」

 何がそんなに楽しいのか、ギールは狂ったように笑う。

 だが、笑いが収まった後は、冷静な、獲物を観察するような目を、アレンの魔剣へと向けた。

「んー、魂を喰らう剣(ソウルイーター)って言ったか? じゃあ俺の血を欲する魔剣(ブラッディーソード)と似たようなものか? 人の魂を喰らって力にするとか」

「教えてやる必要があるのか?」

 ギールの疑問に対して、すげない答えを返すアレン。

「まぁ、そらそうだわな」

 ギールとしても答えて貰えると思っていなかったので、その態度はあっけらかんとしていた。

「ど、どうすんですか、ギールさん!?」

 そんなギールの下へと、手下の男達が慌てて駆け寄る。

 ギールの傍にいた男達は、魔剣の恐ろしさを、嫌というほど知っているのだ。

 アレンの魔剣に怯え、ギールへと縋る男共。

「慌てるなよ、お前ら。魔剣と言っても、能力(ちから)さえ使わなければただの剣だ」

 ギールの答えに、ホッとする手下達。

「それじゃあ、奴の能力を使えないようにすれば……」

「ああ……だから、こうするのさ」

「え? ギールさ……?」

 突如、剣を振るい、ギールは残った手下の首を()ね飛ばした。

「……何のつもりだ?」

 アレンの質問に対し、ギールは平然と答える。

「これが一番良い方法だろう? お前の魔剣に魂を取られずに済むし、俺の魔剣を強化できるんだからよぉ?」

 倒れた手下の死体から、血を吸い取る紅い魔剣。

 だが、

「ちっ、これでもまだ足りなさそうだな……」

 今、集めた血では、まだアレンの魔剣には敵わない。

 そう判断したギールは、即座に(きびす)を返した。

「逃げる気か!?」

「ちょっと準備が足りなさそうだからなぁ。準備が出来たら、また遊んでやるよ!」

 言うが早いか、ギールは山道の脇へと逸れ、樹林の中へと姿を消した。




 ギールが去ってからも辺りを警戒していたアレンだったが、もう危険がないと判断し、剣を納める。

 蒼く輝いていた宝石も、すでに元へと戻っていた。

「あの……」

 剣を納めたアレンへと、クレアがおずおずと声を掛ける。

 言いつけを破ってしまった事への謝罪、助けてもらった事への礼、そしてアレンの魔剣について……。

 クレアには、アレンに対して話したい事がいくつかあったのだが、突然、アレンの身体がふらつき、膝をついてしまう。

「大丈夫ですか!? どこか怪我を……!?」

 慌ててアレンへと駆け寄るクレア。

「いや、大丈夫だ……」

 心配するクレアの手を振りはらい、アレンはすぐに立ち上がった。

「本当に、大丈夫なんですか?」

「ああ、さすがにあれだけ走った後に、戦闘をする事になったからな。少し疲れが出たのさ」

 まだ少しふらついていたものの、アレンには休む気は無かった。

「こんな所でグズグズして、あいつが戻って来ても面倒だ。とっとと先へと進むぞ」

「……はい」

 アレンにまだ何か言いたげなクレアだったが、それ以上何も言う事はなかった。

 大人しくアレンへと従い、先へと進むのだった。


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