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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第5章-影の支配者と負の人格-
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2ndステージ41:歯車は狂っている

 激しい爆炎がこみ上げる。

 もはや、ここに森があったなんて言うのは、地図か写真でも見ないと分からないだろう……

 そのくらい辺りの地形は変わってしまった。

 激しい戦闘を繰り広げた結果といえる。

 相手側、シャドウが腕と足をもがれて瀕死寸前であるのに対して、味方側の煉は無傷である。

 あんなにも激しいぶつかり合いがあったのに対して、何故このような結果になってしまったのであろうか?

 その謎を紐解くには、煉の使っている魔法について知る必要がある。

 消去魔法……この魔法は本来、命を代償に対象物を破壊する魔法である。

また、完全破壊魔法(オールブレイク)のことを魔法の名前から完全消去と言う風に呼ばれることもある。

その上位に概念消去と言うものがあるのだが、それを行うためには最低でも1000万人近いほどの生贄が必要である。

 しかしながらこれは、あくまでも“命を代償にする“場合である。今回の煉の場合だと、翔琉の“怒りの感情“を代償にするものである。

 つまりは、天野翔琉は怒りの感情を捨てる条件として、この魔法を使役することができる。

 “怒りの感情を代償“というと、命に比べると天秤にすらかけられないのであるが、何故このような力を出せるのかというと、怒りの感情が無くなるとき煉は消えるからである。

つまりは、煉自身の存在を代償としているのと同義になるからと言うことになる。

 怒りが全て吐き出されると、煉は再び怒りが溜まるまで眠りにつく事になる。

 限定的にしか使えないが、絶対的な力を持っている……と言うのが煉の強さと言えよう。

 そして、その絶対的な力は神魔法を一瞬超える事すら可能である。

故に、今のこの状況が生み出されているのだ。


「いやいや、恐れ入るね……まさか、こんな力を隠してたなんて末恐ろしい子供だよ……」


 そう言いながら、無くなった腕と足を補うかのように、影の鎧を纏うシャドウ。

 それに対して、煉は冷淡にシャドウを見ている。


「強すぎちゃってごめんねん! 代わりと言ってはなんだけど、木っ端みじんにスプラッシュさせてあげるからん、許してっちょー!」


 と無表情で言う煉に、シャドウの顔に一筋の汗が流れる。

その汗が地面へと向かってたれ始めたとき、煉は再びシャドウに向かっていくのであった。

 シャドウは攻撃をギリギリのところで見極めてかわすことができたが、纏っていた鎧は紙切れ同然に破られてしまう。


「いやいや、この鎧の強度は隕石の落下でも無傷で耐えれるのに、恐ろしいもんですな……」


 それを聞いた煉はガッツポーズをして


「もう、褒めないでって言ってるじゃないか! そんなに褒められたら、顔から火が出るよ。これが本当の火の出ってな! あっははは~」


 とお腹を抱えながら大爆笑している。

 ごめん煉……全くおもしろくないんだけど。


「いや、それにしてもよく頑張ったな……君には称賛を与えて、名誉勲章を贈呈してやろう!」


 と煉が突然敬礼をしながら、シャドウに向かって笑顔をとばす。

 シャドウは生唾をゴクリと飲み込み


「へ~ちなみに、勲章の名前は?」


 と作り笑みで聞く。

 煉は再び、怪しげなポーズをしながら


「努力賞に決まってるじゃん」


 と言って、指を鳴らした。

 次の瞬間シャドウは逃げるまもなく、空間ごと消滅した。

 叫び声も、痛みも、苦しみも、悲しみも、怒りも、絶望も味わうことなく、消えていたのだ。


「消去魔法:終始(おわりのはじまり)! いっちょ、決まりやした。あっははは~」


 そんな感じで、呆気なく戦いは終わったかに見えたが、実際はシャドウは死んでいなかった。

 次の瞬間には、煉の身体……つまりは、俺の身体を黒い槍が突き刺さっていた。


「流石に、死なねーよ」


 と言って、先ほど消えた空間を割いて、シャドウが現れた。

 そして、シャドウは話を続ける


「空間の影に隠れてたから助かったわい」


 シャドウは現状優勢になったため、油断していた。

だからといって、煉は何かするのかと言えば、何もしていない。

刺さった傷を見て


「ちょっと! これ、翔琉の身体なんだから……ペロ……血が美味しい!」


 と傷口を舐め始めた。

ペロペロと厭らしく。

 やめろ!

 変態じゃねーかよ!

 お前は吸血鬼かよ!

 いや、吸血鬼でも自分の血は舐めねーか……

猫か?

 猫なのか?

 自分の傷口舐めるなんて猫なのか?

 と俺が考えていると、ズボッと槍を抜いて


「痛みが、か・い・か・ん! ひゃっほーい! 最高! この身体が傷つけられるなんて、流石冥界の王だね。魔法を破る魔法だなんて☆」

「なんだ……お前の光速で動けるのは魔法か……最初は生身だと思っておったが、よくよく考えればそんな事は出来ねーよな……」

「ひゃっほーい! 正解! 10点はいりまーす! その通り☆ 消去魔法を薄く身体の表面に張ることで、攻撃を全て消し去り、抵抗も全て消し去りました! 神魔法だと、光となって移動することができるけど、俺様の場合は邪魔な空気を無くしたってわけですよ……ご理解いただけましたか?」

「なるほどのう……そうすれば、早く動けるし、相手のガードも消滅させるからガード不可になるわけだから、だから足と腕が消えた訳か……」

「ぶっぶー!! 残念! ハズレ! その解答はハズレだわ~! -1不可思議減点でーす! 正解は、それは普通に魔法で消し去ったからでーす。もう少しインテリちっくかと思いきや、とんだ馬鹿者だったわけでーすね。あっははは~」


 完全にシャドウを小馬鹿にしている煉だが、よく見ろ煉!

 シャドウは真顔だぞ!

 あの人絶対怒ってるって!


「ふむ……ならば、魔法を使ったと言うことを感知できてもいいものなんじゃがな……全く、気配が無かったのはどういう事かのう?」


 とシャドウは真顔で、真顔で、真顔で、煉を見ている。

やっぱり怒ってるってあの人!


「え~そんな、マジックの種明かしみたいな事すらしなきゃいけないんだったら、視聴者全員サービスとかした方が楽しいよ……でも、これは展開的にやらなければならない事っぽいな……くそ面倒くさいな……でも、テレビの前のちびっ子達のためにも、頑張れ! 俺様!」


 と下を向きながらぶつぶつ煉が呟いて、突然ガバッと顔を上に上げて


「いいでしょう! お教えいたしてやるのでござりんす!」


 ござりんすってなんだよ。

思わず、ツッコミを入れてしまいたくなるのだが、あいにく俺は現在奥底にいるから無理なんだよな―――


「えっとね、ぶっちゃけ簡単に言うならば、この魔法は感知することができないんだ。この魔法自体の気配が消されているからね、無敵でしょ☆」


 いえーい!

 と両手で横ピースをしている煉。

 先ほどの説明に納得が言ったようで、シャドウはただただ頷き、薄ら笑みを浮かべている。


「なるほどなるほど……じゃあ、続きを始めようか! お前との戦いは面白いぞ!」


 と言って、戦闘をする構えをするシャドウに対して、煉はため息をこぼし


「え~~~。そろそろ、帰ってココア飲みたいんだけど~。正直、面倒くさくなってきちゃったんだけど~」


 と言って、欠伸をする。

 その光景を目にしたシャドウはその場で笑い


「そうかのう? これからが面白いのではないか! 我をここまで興奮させた戦闘を行ったのは主が初めてだ。だから、おじさんと楽しいことの続きをしようよ……な?」


 変態じゃねーかよ。

発言聞いたら、変態だぞこいつ。

気持ち悪いな―――って言うか、変態しかいねーな敵方。

何これ?

 変態の国に来ちゃったのか?

 俺は。


「じゃあ、じゃあ。俺様が面白いと思ったことを言ってくれたら、戦闘の続きやるぜ。つまらなかったら、即戦闘中止して、ココア飲みに帰るからね」

「ああ、分かった」


 おいおい、煉!

 変な約束してんじゃねーよ! そして、シャドウもそれに乗っかるな!

 馬鹿かよ!


「じゃあ、行くぞ! ……」


 次の瞬間にシャドウが言った渾身?のギャグ的なものの感想を単純で単調で簡潔的に述べるのならば、この言葉がふさわしいだろう。

 こいつ、お笑いのセンスがある!

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