2ndステージ34:2手
「やっほ~びっくり飛び出て、じゃっじゃーん! デイでーす!」
そう言って、デイは横ピースしながら巻物から飛び出してきた。
うざいレベル上がってないか?
登場でこんなにイラっとしたのは、早々ないぞ……
と言うか、まだ巻物開いただけで、フルートは巻物の内容読んでいないのに……
「ほらほら、うざいとか思ってると、またまたお腹に風穴できるぞ! 翔瑠くん……」
また、心の中読んでんのか?
止めて欲しいな……
プライバシーの侵害だ!
そして、この状況読めてたんなら、せめて前回の時になんか助言しといてくれよ!
おかげでこっちは、身体に穴が空いたわ!
「全く、一事はどうなるかと思ったよ。生きててよかったね、翔琉くん。もう少しで死ぬとこだったかもね~惜しかったね、ドンマイ」
笑顔でこの人は、なんてことを言いやがるんだ。
「そして、翔琉くんとライくんには子供ができたようだね、おめでとう」
そう言ってデイは俺とライに向かって拍手する。
マジで、本当はこの人、どっかで見てるんじゃないのか?
デイはコホンと咳払いをして――
「さてさて、君たちの次なる目的地は風の大魔導士の神殿だ」
そう言った瞬間に、アニオン・フルート・ディルの表情が一気に曇りを見せる。
そして3人とも歯軋りしながら、トルネの悪口をぼそぼそ呟いている。
どんだけ君たち、トルネが嫌なんだよ……
そんなアニオン達をよそに、デイは話を続ける。
「あ……でも、水の大魔導士の神殿にも行った方がいい」
え?
それってどういうことだ?
俺は不思議そうな顔をしてデイをみる。
他のみんなも、えっ? という顔をしている。
デイは話を続ける。
「水の大魔導士の神殿には、海の悪魔王・ポセイドンがいるわ。そして、2日後に神殿は深海へと引きずり込まれるわ。あの男はおそらくリュウを嫁にでもするつもりね。変態タコ野郎だからな……あいつ」
そう言ってため息をついて、疲れたように肩を叩くデイ。
どっちの神殿でも、変態と戦わなきゃいけないのか……
デイの言葉に女性陣の顔が絶望的な感じになっている。
変態たちとの戦闘は、よほど嫌なようだ。
まあ、俺も嫌だけど……
「それと……」
そういってデイはジンライを指さして
「その子……ちゃんと、守らないとロギウスに狙われることになるわ……」
え? それってどういうことなんだ?
「だって、その子は翔琉くんの……」
ぶつっと、ここでデイの映像は途切れてしまった。
すごい気になる終わり方してんだけど……
「え? え? 何この終わり方!」
俺は思わず声に出してしまった。
そんな中、ジンライはきょとんとしている。
この子がどうしたというのだろうか……
フルートが、とりあえず巻物の文章を読むわよ!
と言って、全員に聞こえる声量で巻物を読み始める。
「最後に訪れる神殿にて、その真意を記せ……風と水に続く、だって」
そう言って巻物を閉じるフルート。
また続き物かよ。
全部まとめて記しておけっての。
「さて、どうするかのう……」
とグランは言う。
少しの沈黙の後に、ディルが口を開く。
「2手に分かれましょう」
どうやらその手段しかないようだ。
全員、ディルの言葉に反応し頷く。
「でも……どうやって、分けましょうか?」
そういい、頭を悩ますフルートに、ディルは思い切った提案する。
「じゃあ、こうしましょう。トルネは私たち女性陣とエンが……リュウは残りのメンバーでどうにかしましょう」
「それでいいのかしら? この配置の根拠は?」
とアニオンがディルに尋ねると、コホンと咳払いをしてディルが説明を始める。
「水属性のリュウに対して、炎属性のエンは相性が悪い。逆に、地属性のグランは水属性のリュウには相性がいい。そして、風属性のトルネには相性が悪い、と言うわけなの。本当は、ボル辺りについてきてもらおうと思ったんだけど、ライの暴走を止める役は欲しいところだから、ボルには翔琉たちについていってもらうわ。どちらかが、早く決着着いた場合には、まだ決着がついていないところに急いで駆け付けるってことで良いかしら?」
まあ、おおよそ理解はできたが、この配置で本当に大丈夫なのか?
そんな心配をよそに、ディルは話を続ける。
「じゃあ、各自移動しましょう。トルネのいる神殿は元々トルネを助けに行った時の、風の城がそうよ。そして、リュウがいる場所は、ここから南に行ったところにある、海上都市:海狼横丁の中心にいるわ。そこは狼族が支配する永世中立地帯にして無法地帯。世界中の犯罪者たちが集まる場所だから、十分に注意してね」
なんかすごい怖いところに俺は送り出されようとしているのか?
「じゃあ、行くわよ!」
そういって不安がっている俺をよそに、女性陣と引きずられていくエンがすばやく外への出口の中へと消えていった。
「こうしちゃおれん! 我輩たちも、先を急ごうではないか!」
そういってグランも外へと向かう。
ボルが、俺の手を引っ張って
「ほら! 行くぞ翔琉!」
そういって俺も外へと向かう。
そんな中ジンライは走り去る俺を指差し
「ママ行っちゃうよ! パパ!」
とライに言う。
するとライはジンライを肩車して
「捕まってろよ!」
そう言ってジンライを肩車したライは走って俺たちのあとに続くのであった……
この先待ち受ける運命をこのとき、誰も知らない。
死をもたらす毒使い……彼はすぐそこまで迫っていることを……




