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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第4章‐混血の息子と死の雷‐
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2ndステージ33:曇りある眼

次に目が覚めるときには、ライは正常に戻っていたようで、こちらを心配そうに見つめているジンライを抱えながら、涙目でこちらを覗いている。

 他のみんなも心配そうに、こちらを見ている。

 俺の目が開くとディルが俺の顔を覗き込んで


「気が付いたみたい!」


 と言うと、みんなは笑顔になって喜んでいる。

 アニオンとフルートは互いによかったと、言い合っているし、ボルとグランは男泣き、ディルも涙を流している。

 すると、唯一落ち着いていたエンが


「翔琉が寝てる間の事は記録してたから、これを見てね」


 と言って、持っていた眼鏡を俺にかけた。

 眼鏡をかけた直後、頭の中に映像が浮かんできた。

 まるで、映画を見ているような気分だ。

 そんな中、エンの声が聞こえる。


「その眼鏡は、記憶眼鏡(メモリーコンタクト)。使用者の記憶を保存できる特別な眼鏡。さっきの状況を記憶させといたから取りあえず見てみて……」


 ここで声は途切れて、記憶の世界へと俺は誘われた……



”俺が倒れている。

 周りは結構、俺の血で汚れているようだ。

 どうやら、ライとの戦闘直後の光景らしい。

 その証拠に、剣が突き刺さったライが倒れている。


「ママ!」


 と言ってジンライが俺のそばに寄っている。

 そしてディルとボル、アニオンもそばに寄ろうと、走っている。

 そんな中、グランとフルート、そしてエンは、身体を引きずりながら、ライの方へと近寄る。


「翔琉が剣を刺したおかげで、洗脳は解けたはずよね……」


 そういってフルートは、ライに刺さっている剣に触れる。

 すると、ライの体内から黒い何かが現れた。

 その黒い何かは逃げようとした。

 そして上空に消えかけたとき、光の剣がその黒い何かを追って行き、剣は黒い何かを貫いて、それは消えていった……

黒い何か……まるで邪悪の塊みたいなものだった。

それは、アマデウスの言うところの毒なのだろうか?

それとも……


「痛たたたた……」


 そういって倒れていたライは起き上がる。

 辺りを見回し


「ここは……何処だ? あれ? エンにグラン、それにフルートも……」


 ライは見回し、血だらけで倒れている俺の姿を見て、驚きの表情を浮かべ


「なあ……エン……あそこに倒れてるのって……」


 エンはその問いに答えるべく、重い言葉をライに言う。


「あれは……翔琉だよ。そして、ああなったのは、君のせいだ……」


 その言葉に、ライは戸惑ったような顔をして


「なんだよそれ! どういうことだよ!」


 とエンにつかみかかった。

しかし、すぐにグランがそれを引きはがし


「主は操られていた! 仕方がなかった!」


 そういって場をおさめようと仲裁に入った。

 グランの言葉を聞き、ようやく落ち着いたライの元へ、ジンライは駆け寄る。


「パパ……?」


 そういうジンライに、ライは


「ジンライ……なのか?」


 そういって、ジンライを抱きしめるライ。

 フルートはその光景を見て不思議そうに見ている。


「あれ? ライ……あなた、洗脳されている中で、ジンライの記憶があったの?」


 確かにその通りだ。

 洗脳中にその記憶があるということは、意識があったことになる。


「いいや。さっきまでの事は何も覚えていない。と言うか、だいぶ記憶が欠落している。だが、ジンライの事だけは覚えている」


 そういうライ。

 フルートは勿論、納得していない様子である。


「だから、なんでこの子の事を覚えているのさ?」


 フルートは不機嫌そうな顔をして、ライに詰め寄る。

 そして、ライは戸惑ったようにしながらも、その質問に答える。


「今から、3日前の記憶ならある。何故だか、突然目が覚めたような気分になって、そんで……そうだ! 子供部屋にいた! そこで俺は、ジンライを生まれさせた……」

「え? なんで?」


 フルートの問いに、ライは頭を抱えながら話を続ける。


「頭の中に何かが響いて……その声に言われるがまま……俺はあの儀式をして……」

「でも、その儀式には翔琉の血がいるんでしょ? いったい誰が持ってたのよ……!」


 そういうと、ライは懐から小さな布きれを取り出した。

 焦げ目がついている布には、血の跡がある。


「それは?」


 とエンが聞くと、ライは答える。


「これは、かつてオールドアで戦ったあの時の戦闘の時に、翔琉が敵の攻撃を受けてかすり傷を受けた時にたまたま破けた布だ」


 なんでそんなものを持ってんだ?

 記憶を見ているだけなのに、俺には変な汗が出てきた。


「なんで、そんなものをあんたが持ってんのよ?」


 と遠くにいたはずのアニオンがいつの間にか、ライの近くにいて聞いている。

 ナイス! さあて、ライはなんて言うのか……


「いや……ほら……あの……その……記念に……」


 と頬を赤めながらライは言う。

 あいつの顔を後で、真っ赤な血の色に染め上げてやろうかな?


「なるほど……だから、あの子ができたというわけか……」


 冷静な分析をするエン。

 もうちょっとツッコミどころあるだろうよ!

 なんか反応しろよ!


「じゃあ、その頭に響いたって声に聞き覚えは?? 何か知らないか?」

「……いや、覚えているのは……声にいわれるがまま、翔琉の血と俺の血でジンライを生まれさせて、そして色々とジンライに言って……その後から意識がない……」


 ライが言い終わるのと同時に、ディルが


「みんな! 翔琉が!」


 と言っているのが見えて、ここで記憶は終っていた。 ”


 眼鏡をエンに返す。

 そして、俺は立ちあがり、笑顔でライの顔を殴った。

 周りは驚いた顔をしているが、一番驚いているのはライ自身であろう。


「何してんの? ライ。さっきの何?」


 俺のこの質問で、何故俺がライを殴ったかみんな見当がついたようで、一斉に顔をそらした。


「いや……その……」


 ライはこちらに向かって何かを訴えるような目をしているが、知ったことじゃない。

 そんな中、ジンライはライの前に立って俺に向かって


「ママ! パパをいじめちゃダメ!」


 という。

 ジンライに近づいて、俺は耳元で


「パパがね、悪いことしてたみたいだから、お仕置きしなきゃいけないの」


 と言うと、ジンライはくるっと回って、ライの方を向き


「パパ! ママをいじめちゃダメ!」


 そういってジンライはライに向かって体当たりして、顔をぽかぽか殴り始めた。

 子供相手になら、反撃出来ないでしょ。

 ここで、ディルが手を叩きながら


「さてと、家族の団欒はその辺にしてもらって……」


 といい、コホンと軽く咳払いをしてから、ディルは続けて話をする。


「早く、魂記憶手に入れて、ここから出ましょ。長居するのは危険でしょ」


 ライ!と、ディルが言うと、暴れるジンライを俺に預けて、ライは中央に向かって手を向ける。

ジンライはといえば、俺に抱き抱えられて、凄く幸せそうな顔をしている。

時々、顔を俺の首もとに擦り付けてくるので、こちょばしい。

 さて、ライのおかげで、中央の部分がせり上がって来て、その中から巻物が出現した。


「フルート!」


 アニオンは巻物の出現と同時に、巻物を取ってフルートに向かって投げる。

 歴史的にも価値のあるものをそんな雑に扱っていいものなのか?


「はい!」


 フルートは見事キャッチした。

 一瞬嬉しそうな顔をした風に見えたが、すぐに真剣な面持ちになって


「じゃあ、開くわね!」


 そういって、フルートが巻物を開くと、いつものように文章を読む間もなく、突然あの女が出てきた……

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