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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第4章‐混血の息子と死の雷‐
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2ndステージ32:死を退けし者

「翔琉! 目を開けてくれ! 翔琉!」


 ボルは声がかれてしまうんじゃないかと言うほどの、大声で叫び、涙を流している。

 その傍らで、ジンライは、俺の服の袖を掴み、大声で泣きわめいている。

とてもじゃないが、見ていられないほどに泣き叫んでいる。

辛く。

悲しく。

悲痛で。

苦しい、泣き声。

 そんな中でも、戦いは続いている。

 アニオンとフルート、そしてディルの目には涙、グランとエンの顔には悲しみがあるのに……


「くそ! よくも!」

「グラン! 封印の準備……うちが突っ込む」

「おぬしも落ち着け! そんな事では、カウンターを食らってしまう!」


 そうして議論をしているうちに、ライは俺の肉体めがけて進行を始めようとする。

 その行く手を阻むかのように、グランの魔法による岩石がライに向かって襲い掛かる。


「翔琉の元へは行かせぬぞ!」


 しかしながら、ライはその攻撃をかわす。


「天野翔琉ノ肉体ヲ捕縛スル」


 そういって攻撃を乗り切ったライは、俺の肉体へと近づいていく。

 次の瞬間、ボルとジンライは吹き飛ばされ、俺の肉体はその場に横たわる。

空いたお腹からは、血がいまだに流れている。


「しまった!」

「ママ!」


 ライが俺の肉体に触れようとしたその瞬間、俺の身体から強い光が放たれた。

 その衝撃で、ライは吹き飛ばされる。

光はやがて、翼の形状になり、そして、俺は起き上がった。


「もう……誰かがやられるのは……見たくない……」


 俺は血を吐きながらも、立ちあがった。

 腹の穴は完全にはふさがっていないが、銃弾程度の穴にまでなっていた。

 おそらく、アマデウスが治してくれたのだろう。

 俺が起き上がったのを見てみんなは絶句する。

 思わず息を飲んだ後に、全員が涙して、俺の名を呼んだ。



「光の魔法:光治……」


 そういって俺は身体の全ての怪我を治す。

 一番に修復されたのはやはり、お腹の傷。

 内臓も治されたようで、いつものようにずしりとおさまっている。


「翔琉……よかった……」


 そういって、ボルは俺の方を見つめ、涙を拭く。


「安心してみんな……もう、油断しない……誰も、傷つけさせはしない」


 そういって俺はライをにらみつける。


「全く……心配させて……ねえ? アニオン」

「そうだねフルート。 後で、私の料理食べてもらおうかしら」

「我輩らは食べなくていいよな? エン」

「そ……そうですね、グラン!(助かった……)」


 フルート、アニオン、グラン、エンの雑談が聞こえる……

 そして、ディルの声が聞こえる。


「ほら、翔琉! 何してんのさ! 早くけりをつけてきなさいな!」


 その言葉を合図に、俺とライの戦いが再び始まるのであった。

今度は、油断しない。

ここでけりをつける!


「行くぞ!!!!!」


 そういって俺はライに突っ込んでいく。


「光の魔法:聖邪光纏!」


 普段は槍上の姿をしているこの魔法なのだが、現在は光の剣となって俺の手に出現する。

 修行によって、魔法の形状を変化させる技法を身につけていたので、剣の形に変換する事ができたのだが、今何故この形状にしたのかと言うと、先ほどの戦闘からふまえて、遠距離攻撃は現在のライには通用しないと言う判断をしたためである。

 あのすさまじい速度で動かれてしまっては、ため動作のいる槍の形状は、この戦闘において不向きである。

 そして何より、相手が近接戦闘で仕掛けてくる以上は、こちらも近接戦闘で対応するしかないのだ。

 普段は、遠距離で攻撃するのが得意なので、正直近接戦闘は苦手である。

 だが、この魔法は本当に当たりさえすれば、ライを正気に戻せる魔法である。 この剣の攻撃が少しでも、当たりさえすれば、ライの中にある洗脳の邪悪な意思を取り除くことができるので、その効果を考えれば五分五分と言ったところであろうか―――


「ソノヨウナ攻撃ナド我ニハ効カヌ」


 そういってライは両手に雷の剣を出現させて、俺の方へと猛スピードで向かってきて、俺の攻撃を左の剣で防いで、右の剣を振り下ろす。

 2刀流なんて、ずるい……

 俺はそれを、とっさに輝天鏡で弾く。

 しかし、その衝撃に耐えきれなかった輝天鏡は、本来の役割である”相手の攻撃の反射”が完了する前に砕けてしまった。

 なんて威力なんだ!

 その砕けた一瞬を利用して、ライの攻撃をかわして、距離を取る。


「この魔法じゃ、耐えきれないのか……じゃあ、光の魔法:光盾!」


 そういうと俺の周りに小さな盾ができる。

 これで、タイミングを計ってカウンターを決めれれば……


「危ない! 翔琉! 後ろだ!」


 ボルの声に俺は反応して、急いで後ろに盾を回す。

 そして、盾に剣が当たりカウンターが決められると思いきや、盾が粉々に砕ける。

 これでも防げないのか!

 急いで後ろを振り向くと、ライが無表情に左手の剣を振り下ろそうとしていた。

 俺は体制を直し


「だから……後ろから襲ってくんなよ!」


 そういって、持っている聖邪光纏で、ライの持つ左の剣をはじく。

 そして、ライの体制が崩れたところを狙って聖邪光纏を突き刺しにかかる。


「これで、決める!」


 しかし、聖邪光纏がライを突き刺さりかけたところで、ライは距離を取る。

 そして、はじかれて無くなっていた左手の剣を再生させる。

 くそ……惜しかったのに……


「コレデ決メルノデハ無カッタノカ?」


 無表情のくせに、軽口を吐きやがって……

 だが、そんな中、俺はにやりとライに笑う。


「うん。 そうだよ。 もう終わりだよ……」


 俺はライのいる場所の足元を指さす。

 しかし、ライが下を見る前に、それはすでに終わっていた。

 地面から飛び出した光の剣が、ライを突き刺していたのだ。

 この剣は聖邪光纏である。

 そして、その場に剣が突き刺さったまま、無表情で声も出さずに倒れてしまった。

 その様子に周りにいたみんなは唖然とした顔で俺を見ている。

 そんなみんなに俺はにこりとして


「作戦成功! ね? 終わったでしょ?」


 俺は周りのみんなにピースする。

とっさに、ライが退く場所を計算して、導いて、そこに剣が出るようにしておいたのだ。

つまりは、時限式のまきびし、といったところだろうか。


「さてと……じゃあ、ライを起こして、魂記憶を……!」


 その瞬間、口から吐血した……

 先ほど復活する前に、蓄積されていたダメージが反動的に出てしまったようだ。

 口の中が鉄のような味で満たされていき、周りのみんなが慌てて駆けつける前に俺は眠るように、その場に倒れこんでしまった……

お腹に穴があったのに、無理しすぎたかもね。


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