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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第4章‐混血の息子と死の雷‐
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2ndステージ31:死の世界

暗い世界……

何もない……

真っ暗闇。


「翔琉!!!!!」


 その声の主は、ディルだろうか。

 ディルが俺の近くに来ているのは分かった。


 もう……周りがどういう風になっているのか分からない。

声しか聞こえない。

奇跡的に意識が残っているのは、ある意味良いことなのだろうか?

痛みすらない。

でも、血が無くなって、だんだん冷たくなっていく感覚は分かる。


「負極魔法:神経無(しんけいむ)! 翔琉の痛覚を0に! だけど……傷までは0にはできない……くそ!」


 アニオンの声が、その場にこだまする。

 痛みがないのは、アニオンのおかげなのか……

 流石にアニオンの魔法でも、傷を0にするということは不可能なんだな……

 リュウでもいてくれたら、回復させてくれたのかもな……

 とめどなく、血が流れ出ている俺のお腹……

 お腹と言っても、中身の一部がぐちゃぐちゃだし、穴も開いちゃってるけどな……

 何かに抱かれているのだろうか……何だか、頭のあたりに、気持ちのいい感触がする。


「ママ! しっかりして!」


 そう言っているのは、ジンライなのだろうか?

 いや、俺の事をママなんて呼ぶのは、この場ではジンライ以外はいないだろう。


「翔琉! 俺だ! 分かるか! しっかりしろ! 翔琉!」


 その声は……ボル?

 しかもかなり近い場所だ。

 ああそうか、ボルが俺を抱えているのかな……

 この感触はあの時、星空を見た時に感じた感触か……

 遠くでは爆発音らしきものも聞こえるな……あと、雷の音も……


「ライィィィィィィ! あんたよくも翔琉を!」

「師匠! 今は奴を翔琉から引き離すことが先決です! 落ち着いてください!」

「うかつ……我が輩が寝ている間に、このような事が……」


 あの声は、アニオンとエンそして、グランだな……

 そっか、アニオンが復活したって事は、あの魔法を解いたって事か。

 だから、雷の音が聞こえたのか……

 よかったよかった……


「ぐはっ……」


 俺は口から大量の血を吐いた。

 だらだらと、よだれのように垂れ流される大量の血。

ゆっくりとだが、目を開けることが出来た。


「……み……んな……」


必死に絞り出せた声は、瀕死と言う言葉を説明するに十分なほどだった。

 その声に反応するかのように、ボルは俺の手を握りながら


「翔琉! 翔琉!」


 と言う。

 そして俺の顔には、あったかい水が落ちてくる。

 1つ……また1つと、次第に大きくなっている気がする。

 俺は、ボルの手を握り返そうとするが、手に力が入らない。

それどころか、もう身体を動かす事すらままならない。


「俺……死ん……じゃ……う……のかな?」


 振り絞って声を出しているのだが、そのたびにお腹から血が出てくる。

 どばどばと、あふれ出てる。

 光治で回復させたいけど……そんな気力……今は無いかな……


「なあ……俺……俺……」


 そういうと、再びあったかい水が俺の顔に大量に流れてきて


「もうしゃべるな! 傷が……傷が……」


 ボルの声が俺の頭の中にこだまする。

 ああ……俺……死ぬのかな……


「ママ! 嫌だよ! ダメだよ! パパを元に戻すんじゃなかったの?」


 そういって、腕を引っ張っているのは……ジンライかな……

 涙が出てるようだ……俺の手に、その雫が落ちてくる。


「ジ……ジン……ライ……泣かないで……くれ……」


 そういって俺はジンライの頬を撫でる。

 その頬は震えていて、ジンライの涙が手をつたって、下に流れていくのが分かった。

 そして、俺の目からも涙が流れているのが分かった。

 その涙は、だんだん冷たくなっていく、俺の肌には熱湯のように感じるほど熱かった……

 俺は力を振り絞って言う。


「……後は……頼んだよ……ボル…………」


 そういうと、全身の力が抜けて、意識が消えていった。

 その中で聞こえるのは、みんなが俺を呼ぶ声だった……



 ここはどこだろうか?

 白くて広い空間……

 俺は死んだのだろうか?

 こんな体験は、前にもあったよな……

 理科室が爆発した時だったよな……

 あの時も、今みたいな感じだったよな。

 そして、ディルの声が聞こえたんだっけ?

 あの時は、違う世界に飛ばすための爆発だったみたいだけど……流石に今回はダメかもな……


 ”おいおい、こんなところで死んじゃあダメだよ”


 その声はアマデウスか……

 お前何してたんだよ


 ”寝てた”


 ほう(怒)。


 ”ごめんごめん”


 ごめんで済んだら、俺が死ぬわ。


 ”そうだね……”


 ところで、俺が気を失っている今、何が起こっているんだ?


 ”うーん……ライに苦戦してるねみんな。 雷の音が聞こえるようになったのは、戦況を変えるに足りるかと思ったんだけど、それでも神魔法を駆使しているライには苦戦してるね……”


 なあ、アマデウス。

だったら、いつもみたいにお前が神魔法を吸収してしまえばいいんじゃないのか?


 ”それは、毒の影響で出来ないんだよね、どうしても……”


 そうか……アマデウス。

もしも、俺がこのまま死んでしまったら、みんなの力になってやってくれよ。

俺の最期の頼みだ。


 ”この状況下でも、他人の心配をすることができるなんて……やっぱり、君はすごいよ翔琉……”


 俺はすごくない……いつもがむしゃらに生きているだけだよ……後悔しないためにもね……


 ”じゃあ、今君は後悔なんて何もしていないの?”


 ……後悔はしていないけど、やり残したことはあるよ。


 ”じゃあ、そのやり残したことを済ませずに、君は死のうとしているの? それは即ち、後悔していると同義じゃないのかな?”


 全く……その通りだね。

 まだ、死にたくない。

 死ぬわけにはいかない……


 ”仕方ない、我が主。 ギリギリまで神魔法を高めて、僕自信が君に光治をかけるよ。 本来は絶対出来ないんだけど……精神世界でなら、なんとかできるはず! 感謝のしるしに、後で頭なでなでしてくれよ”


 ああ……してやるよ……生きてたらな……

生きてたら……頭なでなでどころか、添い寝してやるよ。

お前の武勇伝が描いてある、絵本でも読みながらな……

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