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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:第1章‐7人の大魔導士‐
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1stステージ7:湖の夜

 急な入り方で申し訳ないが、どうしてこうなってしまったかを俺は説明してほしい。

 何故に虎獣人に求婚されているのだろうか?


「翔琉、俺の嫁になってくれよ‼ 大丈夫、優しくするから――――」

「何を優しくされちゃうんだ? 俺は‼」


 声を荒らげて言う俺なのだが、ライは全く聞こうとしてくれない。

 むしろ幼児体型のまま、どんどん詰め寄って来ている。

 手つきがすごく(いや)らしい――――変態オヤジか‼

 するとディルが大きな欠伸をして


「体力を回復させたいから今日はこの別荘で休みましょうか」


 と提案した。

 俺は即答で


「うん、そうしよう! もう寝よう! もう寝よう!」


 と言い、寝室の方へダッシュで逃げ込んだ。

 そのままベッドにダイブした。

 勿論白衣と学生服の上を脱いで、ズボンのベルトを外して、半袖に学生服のズボンと言うスタイルである。

 流石にベルトを外さないと、寝心地が悪い。

 今日は色々な事があった(一番最後の出来事が一番疲れた気がする)。

 一刻も早くに元の世界に帰りたいのだが、そのためには7人の大魔導士たちの力を借りなければならない。

 しかし、焦ってしまって失敗してしまうくらいならば、時間を少し掛けてでも安全に確実に成功に向かって歩むべきなのだろう。

 それに慎重に進まなければならないだろう。

 何せ、この世界は俺のいた世界ではないのだから……。

 本当に今日はいろいろあった。

 異世界へ紛れ込んだり、魔法を覚えるために地獄の特訓を行ったり、大魔導士を探しに行くたびに出る羽目になったり――――あと


「翔琉!一緒に寝るぞ」


 その大魔導士に恋を抱かれたことだ・・。

 雷の大魔導士ライ。

 現在は5歳児くらい大きさの虎の獣人、本当の大きさは筋肉むきむきのごつい虎の獣人だ。

 先ほど着込んでいた甲冑などは脱いだようで、現在はパジャマ姿に近い格好になっている。

 ライは俺めがけてベッドにダイブしたが、俺は横に転がりそれを回避した。

 ベッドは勢いよくはずみ、ライはその上でバウンドしている。


「嫌だよ」


 と俺が言うと、ライはバウンドした状態からこちらへとはねながら近づいて


「寝るもん! 一緒に寝るもん!」


 と5歳児のような返しをして、そのまま俺にしがみついてきた。

 あの触り心地の良い毛並みが、先ほどまで学生服の下に隠れていた皮膚にあたる。

 もう、抱き枕にしたいような気持ちよさである。

 だが、いくら身体が5歳児くらいだからと言って、精神まで少し幼すぎやしないか?


「そりゃそうだよ。 今は身体が5歳児なんだから、それに比例して精神年齢も幼くなるはずだよ」


 とディルの声が俺の後ろから聞こえた。

 後ろを振り向くと、俺のベットの上にディルが寝転んでいた。

 いつの間に……

 しかも、下着姿である。

 中学1年生には少し刺激が強すぎる!


「な‼ なんでディルまで‼」


 俺が慌てて目を塞ぐと、ディルは近寄ってきて俺の背中の骨をなぞるかのように触ってきて


「仲間外れは嫌だもん―――――ふふっ」


 と言うのだ。

 えっと、この状況を説明するならば、カオスである、と俺は言うだろう。


 幼児に下着女子って、俺はいったいどういう状況で寝ることになるんだよ‼


 すると突然ライが、ガバっと俺の腕を引っ張って


「翔琉‼ 腕枕して‼」


 と言い、その腕を掴んで丸くなってしまった。

 それを見ていたディルも


「私も私も‼」


 と言って、残っていた腕を持って行ってそのまま頭にひいて寝転んでいる。

 完全に悪乗りである。

 すぐに2人は寝息を立てて寝始めてしまった。

 俺も寝ようとしたのだが―――――ディルの寝息が腕に当たっていてこちょばしいし、ライのよだれが腕に流れていて、ベトベトしていて、気持ち悪い。

 俺もすぐに寝たかったけど、中々寝付けない。

 幼児と下着姿の女の子に、腕枕って……とあるマニアな人ならば喜びそうな光景である。


 やばい、寝れない。

 仕方無い、外に出てみるか


 と思ったが、ライが腕にしがみついて離れない。

 仕方ないので、ディルを起こさないように静かに移動させ、ライが腕にくっついたまま外へと俺は出たのだった――――



 夜の湖、と言うのに訪れるのはこれが人生で初めての事だった。

 月のような惑星が2つ湖畔に映っている。

 風の音と水の波紋―――何というか、落ち着く空間だ。

 湖畔には砂浜があってそこに腰を下ろした。

 それを見上げると、満天の星空。

 都会では見られない光景だろう。

 もし、見れたとしても、プラネタリウムにでも行かない限り、見れないだろう。


「綺麗な景色だな~」


 そういうと、ちょうど流れ星が流れていった――――願い事でもしておけばよかっただろうか。


「みんな、心配してるんだろうな」


 元の世界にいた友達や両親――――そして弟の翼の事を思い浮かべると、心配が次第に募ってきたが、水面を見ていると自然に落ち着いた。

 湖は穏やかで、水面は一点の曇りもなく、透き通った美しい水である。

 心が洗い流されるかのような気分になる。


「そりゃそうだろうぜ、この湖は魔法の湖なんだから」


 そういってライが起きた。

 道理で先ほどから、腕がゴソゴソ揺れているわけだ。

 ふあ~と欠伸をしている。


「ごめん、起こしちゃった?」


 俺はライに尋ねるが


「大丈夫だ! 俺の毛皮はあったかいから外でも中でも変わらねえぜ」


 と言う。

 まあ、それならいいんだけど……とりあえず


「じゃあ、まず腕を放してくれる? 今は寝てるわけじゃないんだったら、腕枕する必要ないもんね」

「おう……それもそうだな」


 と渋々放してくれた。

 渋々かよ‼

 俺の横に、ちょこんと座ったライは、心の奥を見透かすように


「どうした翔琉。 明日からの旅が不安か?」


 とライは聞いてきた。

 俺は空を見上げながら


「うん、少しな。 この世界に来てから魔法やら色々あったから、疲れてるのもあるけどね―――――」

「そうか……だろうな。 誰だって、いきなり違う場所に来たら戸惑ってしまうものだよ。 翔琉は良く、耐えていると思うぜ」


 ライは慰めてくれているのだろう。

 優しいな。

 これで求婚とかしてこなかったら、最高なんだけどね、ははっ……


 少し沈黙が続いた後に、ライが口を開いた。


「俺の身の上話を少ししてもいいか?」


 といい、服を脱いで湖の水に飛び込んだ。

 ネコ科の動物は濡れるのが嫌いだと聞いていたが、獣人の場合は違うのかな?

 それにしても、これから話をするというのに水の中に飛び込んで行ってしまった。

 しかも、全然顔を出さない。

 え?

 まさか、沈んだ?


「ライ?」


 俺は慌ててズボンをまくって、水の中へと入っていく。

 辺りを探したが、見当たらなかった。

 もうだめかと思ったその時、ザバーンと水面にライは上がってきた。

 その勢いで飛んだ水しぶきが俺にかかってしまって、びちゃびちゃになってしまった。

 くそ……心配したんだぞ……それなのに、この仕打ちかよ―――――


「おいおい、ライ……酷いよ。 せっかく心配して探したって言うのに――――」


 と俺が少し顔をムッとさせると、ライは笑いながら


「ははは。 悪い悪い、わざとじゃないから。 別に翔琉の濡れ場が見たかったとかそういうのじゃないから、ははっ」


 なんか今本音が混じってなかった?

 聞かなかったことにして、ここは水に流そう――――水場だし。

 俺は、岸へと戻り、服を乾かす。

 ライはそのまま泳ぎ始めた。

 話はいつ始まるんだろうか――――と思いきや、ライは話し始めた。

 まさか、泳ぎながら話をするとは……

 まあ、背泳ぎだから、クロールや平泳ぎと違って、話しやすいのか。


「実はな、俺昔奴隷だったんだ」

「大魔導士なのに?」


 と俺は驚いた。

 奴隷――――古いにしえよりある、社会の進歩の中であった非人道的行動の1つである。

 そしてライは泳ぐのを止めて、ざばっと岸に上がってきた。


「大魔導士は今の話しで、昔は違った……」


 と言い、身体を身震いさせて水を振り払う。

 今回は遠くで行ってくれたので、水しぶきはかからなかった。

 ふう、と何かを達成したようないい顔をして、ライは話を続ける


「俺のいた村ではな、獣人迫害があってな・・人間たちは俺たちを奴隷にしていたんだ。 来る日も来る日も労働……休めば鞭で叩かれるそんな日々だった」

「魔法は? 使わなかったの?」

「使わなかったんじゃない。 使えなかったんだ――――特殊な道具を付けられていて魔法を封じられていたんだ」

「そうなんだ……」

「そのあとに、当時の大魔導士が来て俺たちを助けてくれたんだ。 俺は当時は人間が憎くてたまらなかったが、その大魔導士達は好きだったな……そんでその中にいたディルの父親ディンは俺にこういったんだ、『いずれお主には、運命の人物が現れる。そのもの、異世界から来訪せし光の力をもつものなり。 ぬしに安らぎと平穏をもたらす。』と。 ディンさんは、ディルと同じく時空間魔法の使い手――――未来を予知できる男、と呼ばれていた。 つまりはディンさんは俺に予言をしてくれたんだ。 でも、異世界からなんてそうそう人が来るものではない。 だからな翔琉……ディルがお前が異世界から来たって話してくれた時に、お前が運命の人だと思ったんだ。 異世界から迷い込んだ翔琉が――――」

「ディルのお父さんがそんなこと言ってたんだ……なんか考え深い話だね……でも当時嫌いだった人間を好きになるなんて、ある意味運命って皮肉だと俺は考えてしまうよ――――」

「まあな。 今でも一部の人間は嫌いだけど……翔琉!お前は別だ!正式に俺と結婚して子供を作ってくれ……何なら今からでも‼」


 え?

 横を向くと、鼻息荒く元のごつい姿に戻ってしまったライがそこにはいた。

 そのまま俺を押し倒してきた。

 え?えええええちょっとちょっと


「まってライ! 俺、男だから子供作れないしそれに……‼」

「うへへへ……クンクン、うわーい、翔琉の匂いだ~。 さてと、次は翔琉の味を楽しむぜい♪ 取りあえず、首筋でも舐めてから――――」


 そういって舌なめずりをして、いっそうに鼻息を荒くして、ゆっくりと顔を近づけてくる。

 だ……誰か助けて‼

 その願いが叶ったようで、家の方からディルが猛スピードで走ってきて


「お前らはなにやっとんのじゃい‼」


 とディルがライを飛び蹴りした。

 ぐはっ、と言いながらライは湖に、投げ出され、ドボーンと水に落ちた。


「ふう……ディル! 助かったよ。 あと少しで完全に18禁な行為が始まってしまうところだったよ」

「全く……トイレに起きてみればベットから翔琉とライがいなくなっていて、窓から外を見ると怪しげな行為をしてたから、何事かと思ってこっそり外に出てみたら、ライが突然翔琉を押し倒して襲い掛かってるじゃないの。 それは、びっくりだわ‼ 完全に目が覚めたわ‼ ライの奴ったら、いったい何を考えているのやら――――」


 ばしゃーん、と湖から大量の水しぶきが上がり、ライが飛んで現れた。

 飛ぶ、と言うか湖の上に浮かんでいる状態である。


「ディル……俺様の求愛邪魔してんじゃねえよ。 俺は翔琉とこれから子供つくるんだよ……翔琉の身体を厭らしくベロベロ舐めた後に、子作り始めようと思っていたのによぉ……」


 なんかもう暴走状態なようで・・目が赤く輝き周囲に緊張が走るような圧迫感。

 と言うか、本当に危なかったんだな、と痛感した。

 危ない危ない。

 腐女子なら喜びそうな展開ではあるけれども、この物語は、そういう物語じゃねえんだよな――――


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