2ndステージ28:やんちゃ坊主
俺の子供だと言い張る、小さな虎さんがいます。
虎さんの名前は、ジンライという。
ジンライは、古の儀式によって、生まれた命だと言う。
「だとしても、もしそうだとしても……」
と、俺がたどたどしく焦りながらボルに言う。
「だとしても……この知能の高さは異常じゃないか?」
そういうとボルは首を左右に振る。
「いいや、あの儀式においてできた子供は、血液を採取した時点での血の持ち主たちの、両方の力を受け継ぐことになっているーーーーつまりは、翔琉の知識の分がそのままこの子に宿ったって事だろう……」
え?
俺の力、受け継いでるの?
いやいや、それでも知能高すぎない?
「そうだ! 皆さん、僕のママを知りませんか?」
そういって、ジンライはうきうきしている。
「ママって……誰?」
とエンが聞いていた。
俺はドキドキしながら聞いた。
ジンライは、にこりと可愛らしい笑顔をして
「そりゃあ、勿論。 天野翔琉って人ですよ♪ 僕、まだ会ったことないから、楽しみなんです!」
そういってエンに言う。
エンは部屋からこっそり抜け出そうとしている俺に指をさし。
「あの人が、天野翔琉だよ……」
俺はドキッとして、部屋からダッシュで逃げ出す。
そのあとを、ものすごい速さでジンライは追ってくる。
「ママ待って~! お話したいんだ!」
そういって走ってくるジンライをとうとう引き離すことができずに、俺は例の噴水のある場所へ戻ってしまう。
息を切らして、今にも倒れそうにしている俺に、ジンライは抱き付いて
「ママ! なんで逃げるの?」
と大声で言う。
それを聞いていたみんなが俺の方を一斉に見る。
「「ママ!?」」
特に、ディルとアニオンの目が怖い。
「どういう状況なの? ちゃんと説明してね……」
そういって、アニオンが指を鳴らしている。
暴力反対……
後から駆けつけてくれた、ボルとエンのおかげで、どうにか納得はしてくれた。
「この子が、翔琉のね……」
そういってフルートは、ジンライを見る。
ジンライはほっぺを膨らませて
「あんだよ? おばさん。 なんか、文句あんのか?」
と言う。
態度悪いな……
最初にあった時の、ライを思い出す。
「このガキ……やっちゃっていいのかしら?」
とフルートは俺の方を見て、すごい笑顔だけど、後ろに鬼が見えるくらいの気迫が出てます。
怖い……
「止めなさいよ。 子供相手に大人げない」
とアニオンが笑いながら言うのだが、ジンライはアニオンを睨めつけて
「うるせー、ババアだな」
と言う。
その瞬間、アニオンの笑みが消えて、鬼の形相になった。
止めろ止めろ、君たち。
大人げない。
「ストップ、ストップ! 2人共、落ち着いて! 子供の言うことなんだから、気にしちゃダメでしょ?」
とディルが急いで仲裁に入るのだが……
「ブスは黙ってろ」
とジンライが言うと、ディルまでもが豹変してしまった。
「いい加減にしろよガキ……」
え?
ディルってこんなになるの?
ちょっと、え?
女性人達、みんな怒ってらっしゃる。
このままでは収拾がつきそうにもなかったので、俺はジンライの頭を叩いた。
コツン。
「え? ママ何するの?」
とジンライは泣きそうな顔でこちらを見ていた。
泣きたいのはこっちだよ……
「ダメでしょ? 人に向かってそんな態度取ったら」
「え? なんで?」
「なんでじゃない! 人に悪口言うと、いいことなんか無くなるよ!」
「何? 僕に、説教してるの?」
「うん。 説教してるよ」
やった~と、ジンライは叫ぶ。
どういうことですか?
この状況。
「始めて、ママに説教してもらえた。 嬉しいな~」
「おいおい、説教してるのに、その態度は無いだろう」
俺はややため息交じりに、続けて話す。
「いい? 他人に悪口は言っちゃだめだよ。それは、悪いことなんだからね? 分かった?」
そういうとジンライは、分かったよママ!
と言って俺の足にしがみついてきた。
やれやれ、とんだわんぱくな子供だな……
誰に似たんだか……でも、くそ可愛い‼




