2ndステージ24:目覚め
あの遠くに見える川はなんだろうか?
なにやら、死んだじいちゃんが川の向こうに見える。
こっちにおいでって、手を振ってるのかな?
待ってよ、じいちゃん。
待って……
待っ……
ガバッと、起き上がった。
心臓が張り裂けそうな、この激しい痛みはなんだ?
「もう、美味しいからって、何もみんなして、気を失うことないじゃないの」
アニオンは気が付いた俺に、真っ先にこのセリフを言った。
「ーーーーどのくらい寝てたの?」
と俺がアニオンに聞くと、懐中時計を取り出して
「あれから、2時間くらいよ」
と言い時計を見せる。
2時間か……
だいぶ気を失ってたんだな……
辺りを見回すと、俺のそばにいるアニオンと空中にふわふわ浮いているディル意外はみんなぐったりしてた。
ディルはこちらに近づいてきて、耳元で
「ドンマイ」
と言ってクスクス笑っている。
あいつ……他人事だと思って……
そう思い、俺はディルを睨みつけた。
そんな中、フラフラになりながら
「翔琉……無事だったか?」
と言いながら、ボルが近づいてきた。
その顔つきは、今にも吐きそうなほど、顔色が悪い。
「まあ、大丈夫だよ。 一応……」
と俺が言うと、ボルはそのまま俺の方に倒れ込んできてしまった(幼児姿で)
「ちょっと、横になるね」
と俺の膝元で目を閉じてすやすや寝始めたボル。
先ほどの料理に毒は入っていないと言っていた割に、一番影響を受けている様子だった。
まだ、辛いんだな……
そう思いながら、ボルの頭を優しく撫でる俺。
その行動が吉とでたようで、ボルの表情が和らいでいった。
しかしながら、不死鳥を倒せるレベルの料理食べて、よく生きてたな……意外と頑丈なのかな?
そう思っていながらも、やはり先ほどのがまだ効いているみたいで、俺も少し眠りについた。
俺が再び目覚める頃には、さっきまで死にかけていたみんなは元気になっていた。
後に話を聞くと、少しだけ回復したフルートが、薬草を用いて、お茶を作ったらしい。
それを、具合が悪そうにしているみんなに飲ませたところ、たちまち良くなったらしい。
そんなものがあるなら、さっきの朝食の時に飲ませてくれよ!
と思うのだが、どうやらフルート自身、アニオンの食べ物を見たせいで、思考が麻痺していたらしいのだ。
とりあえず、俺も例のお茶を貰って飲んだところ、苦みが強かったが、先ほどあった身体の気だるさがなくなった。
効き目が早い事に感心しつつ、飲み干したお茶の容器を台所に置いて、次の目的地である雷の大魔導士の神殿についての話しを始めるのであった……
「雷の大魔導士の神殿って、どこにあるんだ?」
と俺が首を傾げて聞くと、アニオンが地図を出してある場所を指差して
「ここよ」
と言う。
俺は地図に目を近付けて、確認してみると、そこに書いてあるのは、“雷鳴湖“と書いてあって、湖の真ん中に小さな島らしきものがある場所であった。
「ここはね、雷の湖なのよ」
とアニオンは、続けて話し始める。
「雷の湖って、どういうことなんだ?」
「湖自身が、雷なのよ。 別名:雷水っていう、特別な水でね……水みたいに液体なんだけど、特性は雷そのもので、まず素手で触るなんてことしたら、手が丸焦げになるわ」
と真剣な目をして語るアニオン。
「そして、雷の大魔導士の神殿はこの湖の真ん中にある島にあるわ」
と再び地図を指し示すアニオン。
じゃあ、空から行くことになるのかな?
と思っていると、アニオンはそれを見透かしたように
「ちなみに、空からの侵入は出来ないわ」
と冷淡に言うのである。
俺は不思議そうな顔をして
「え? なんで?」
とアニオンに聞くと、アニオンはあのね……とどこからか出した、小さいスケッチブックに描いて説明をする。
「それはね、この水の特性が常に雷と同じようなものであることが起因しているの。簡単に言ってしまうのなら、あそこにあるのは地上にできた雷雲っていうわけ。ただし、普通の雷雲と違って、地面に雷を落とすんじゃなくて、空に向かって雷を落とすの。だから、そんな水の上空から行くって事は、雷地帯をかわしながら行かなきゃいけないの。しかも、地上と違って、空中には避雷針になるものがないから、浮いてるものがあれば、それが雷によって追尾される事になるからよけい難しいのよ」
と言い終わり、スケッチブックの最後に“おしまい“と書いてあった。
アニオンはどうやら料理の時とは違って、絵は凄く上手であった。
まるで、漫画を呼んでいるかのような分かりやすくて見やすい絵であった。
料理もそれくらい上手かったらいいのにな……
「じゃあ、結局どうやって行くんだ? 空からは無理だし、水中なんてとてもじゃないけど進めないよな・・」
と俺は再び首を傾げる。
すると、グランがにこりと笑い
「我が輩の魔法で橋を造る」
と言うのである。
“計画で言うのならば、まず彼の地へと赴き、我が輩の地の魔法で巨大な橋を造る。そして、その橋を渡って目的地へと到着すると言う感じだな。橋の強度なら問題はない。雷属性の弱点である氷属性の魔法でコーティングするし、水属性の弱点である地属性で橋を造るわけだから問題はないだろう“
と自信満々に語るグラン。
そんな自信はどこから来るのだろう?
「じゃあ、行きましょうか」
と言ってアニオンは張り切って外へ出て行く。
俺たちもその後に続いて外へ出て行く。
待ってろ、ライ。
今、助けてやるからな!




