2ndステージ21:地獄は消える
神々しく輝きを放つ、光の神魔法。
そして、聞き慣れない発言にメイオウは
「零式光天神だと?」
と、思わず聞き返してしまう。
零式光天神。
初めて聞くその単語。
メイオウは、警戒を怠ってはいないが、この時過信していた。
所詮、俺の神魔法は完全版ではないと……
「こけおどしもいいところだ……今や、神魔法は我が主の元にあるのだ。それは光天神などではなく、所詮まがい物だ」
そういい、ニヤリと不敵に笑うメイオウに反発するように。
「いいや、まがい物は君達の方さ」
そういってアマデウスが俺の中から出てきた。
メイオウは、アマデウスの姿を見て、目を大きくした。
「貴様は! アマデウス!」
「ははは。 やあ、久しぶり。 といっても、こうして直接話すのは何千年何億年ぶりなんだろうね?」
「ああ、貴様が消えてからは会ってはおらんかったからな……で? まがい物が俺達、と言うのはどういう意味だ?」
「いやいや、簡単な事さ。 神魔法の化身である僕が違う、って言ってるんだから違うんだよ。 そんなことも分からないなんて、馬鹿じゃない」
そういってアマデウスはメイオウの方に手を出すと、メイオウの神魔法が解けて、アマデウスの手元に集まる。
そして、アマデウスはそれを食べた。
「ごちそうさまーーーーまた力を取り戻せたよ。 おかげ様で……」
「貴様……何をした?」
「何って、元々僕の力なんだから、元に戻っただけだよ」
表情が険しくなるメイオウをよそに、あくびをしながらアマデウスは俺の中へと戻っていく。
お疲れ様。
あとは、俺に任せてくれ。
この、新しい力で、奴を倒して見せる。
「じゃあ、そろそろいいかな?」
といって、俺は手を合わせ魔法を放つ。
先手必勝だ。
「光の魔法:聖典右翼」
背に生えた翼が大きくなり、その翼の羽根がメイオウに降り注ぐ。
それをメイオウはよける。
ヒラヒラと舞い落ちる、羽根を退ける。
しかし、よけれる数などを出す俺ではない……。
空が覆い尽くすほどの、夥しい光の羽根。
幾億もの数の羽根が、メイオウに襲い掛かり、最終的にはメイオウの身体にへと突き刺さっていた。
この魔法は、破壊不可能な神魔法の力を宿した羽根で、相手を攻撃する魔法。
故に、メイオウは、回避する、という事しか出来なかった。
まあ、回避出来ずに、攻撃を食らっているのだが……。
「貴様……何をした? つい数時間前までの貴様とは、まるで違うな……貴様はいったい何をしたんだ? 天野翔琉‼」
苛立ちの声を浴びせるメイオウに対して、俺は冷静に言った。
「それは、秘密。みすみす敵に情報与えるなんてことはしないよーーーー」
メイオウは、自身に刺さった羽根を身体から外し、体勢を立て直す。
「ふん、まあいい。この程度でやられる我ではない」
そしてはらはらと羽根が宙に舞う中、俺に魔法を放つ。
「地獄魔法:紅蓮埜炎!」
その魔法はまさに、地獄の炎と言うのにふさわしい炎の塊だった。
血より濃く、黒く煮えたぎる炎の雨が俺に降り注ぐ……
もはや、火山が降ってくるのに等しい攻撃。
否、それ以上だ。
隕石の落下……それに近い。
ーーーーが、もはや俺にとってはそれは攻撃にすらならない。
隕石の落下?
その程度……余裕でなんとかできるさ。
だって、ディルのこの世とは思えない修行をクリアした、俺だし。
「光の魔法:天照大御神」
そういうと、炎の雨は勿論の事、これまで決して晴れることのなかった上空の重くのしかかるような雲まで押しのけるほどの、強力な光を放つ。
光は、全ての闇を打ち払った。
空は、夕暮れ時の真っ赤な空だった。
「なんなんだ! こいつは何者なんだ!」
メイオウは、俺に対して怒鳴る。
「そんな……なんだ、この異常な強さは……! 零式光天神……これほどの威力とは……貴様! 化け物か?」
失礼だな……
そんなこと言われたくないな。
「いいや……俺は普通の人間だよ。 普通で普通すぎる、努力家な男……それが、天野翔琉だ」
そういって、俺はメイオウに向かって光属性最強クラスの攻撃魔法である神之憤怒を放つのであった。
「この俺が! ちっ……! ここはひとまず……!)
そう思ったメイオウは、自身の最大限の力を発揮させて、奴は逃げた。
詰めが甘かったようだ。
残念、逃げられた……
でも、仕返しは出来たし、追い払うことも出来たから充分か……
【時空城】
悪の居城。
そんな、城の中に1つの炎が舞い降りた。
その炎は、人の形になり、ボロボロの姿のメイオウとなった。
メイオウの目の前には、どかりと玉座に座るロギウスがいる。
その隣には、残りの3人の大魔王である者たちが立っていた。
海の悪魔王:ポセイドン
影の冥界王:シャドウ
氷の霊界王:コールド
そして、彼らはすぐに消えた。
だが、ロギウスの怒りは消えていなかった。
憤怒の表情……大気が震える。
「おい……メイオウ……主は、我に何と言った?」
「申し訳ございません……(くそ! あの小僧め……)」
「主は、我に言うたよな……? 指令は全うする、と……」
「申し訳ございません……(何故、我がここまで……)」
「それがどうだ? ぬけぬけと負けて帰ってくるとは……貴様は
……我を馬鹿にしているのか?」
「申し訳ございません……(あの、零式とは何だったのだ?)」
「主が約束をたがえ……さらには何もできなかった……とはのう……」
「申し訳ございま……」
「くどい! いつまで貴様は謝るのだ?」
玉座から、降り、メイオウの顔を足蹴にするロギウス。
苦しそうに、うずくまるメイオウの顔は、血だらけだった。
「申し訳ございません……(くそ! 我が主! 申し訳ない!)」
「もう良い……貴様は下がれ……永遠にな」
「え?(何を? 我が主……)」
そういって、ロギウスはメイオウに、時空間魔法をかける。
苦しむ間もなかった。
この魔法を受けた瞬間、メイオウは、狭間の世界へと飛ばされた。
メイオウの消えたあとに残る、炎をロギウスは足で踏み潰し、消す。
その後、玉座に座る、ロギウス……。
落ち着きを出すために、近くにあったグラスに飲み物を注ぎ入れ、それを飲み干す。
その表情は、悪魔以上の悪魔みたいな顔をしていた。
「翔琉……ディル、そしてアマデウス……貴様らは必ず、葬ってやるわ……」
そういって、持っていたグラスを割るロギウス。
何を考え、何をしようとしているかは、ロギウス本人にしかわからない。
だが、1ついえるのは翔琉たちの旅を妨げる策ができつつあるということだけは、はっきりしているのであった……




