2ndステージ18:楽園は地獄に変わる
「いやいや、おぬしらーーーー助かった礼を言う」
グランはその場で頭を深々と下げる。
そして、アニオンは
「グラン……良かったわ、助けられて」
そう言うと、グランは目を見開いている。
「お主、アニオンではないか! 152年ぶりじゃのう……」
「そんなに、年月経ってねーよ」
「あっはっはっ……そうじゃったのう」
「ボケすぎたろ!」
そう言って、アニオンはグランにツッコミを決めている。
あれ?
意外と仲よし?
「……ところで、グラン。 地の魂記憶はどこ?」
「魂記憶? なんで、そんなものを?」
「実はーーーー」
と、これまでの経緯や、事情を説明する。
「なるほどのう……伝説の大罪人が復活したのか……ならば、我は役割にしたがい、役目にしたがい、そやつを討つ手助けをいたそう。 翔琉……お主の力に、ならねばならぬしな。 オールドアで、そのように約束をしておるからのう……仲間になり、共に神話の悪を打ち払おうぞ」
そう言うと、グランは、少し下がっていろ、と言い中央に自身の魔法の力を送る。
そうすると書物が浮いている台が浮上してきた。
「ーーーーこれが、地の魂記憶じゃ」
「これが、地の魂記憶……」
早速俺たちは、魂記憶をフルートに翻訳してもらう。
「汝ら真実を求めるのならばすべての書物を揃え……と、またまた途中で終わっているわ。 そして、雷に続く……だって」
またかよ、あの女本当におちょくってるのか?
「おちょくってるよーん」
と、書物からデイが飛び出してきた。
でたよ、悪ふざけの象徴……
「嫌だな、翔琉君。 悪ふざけの象徴とか、わらわを愚弄するでないぞ!」
「ご先祖様……」
「ここには、ディルがおると思うのじゃが、ディルよ。 元気じゃったか? まあ、元気とは言っても今は霊体じゃからのう」
本当になんでこんなにずばずば当ててくんだよ。
時空間魔法って、こんなに強力なものなのか?
「さてと、ふざけるのはこの辺にしてっと……」
やっぱりふざけてたのかよ。
ああ、腹立つわ~。
みんなの声が聞こえてくる。
「ーーーーまずは、この神殿の攻略おめでとう。 と言えばいいかな? まあ、こうして魂記憶を見ているわけだから、成功してなきゃおかしいのじゃがな」
早くいいから本題を話せよ。
「さて、この素晴らしい状況に水を差すようで悪いけどーーーー今、主らは重大な危機に陥っている。 悪いことは言わないから、この神殿から早く脱出しなさい。 じゃないと、奴が来てしまう」
「奴??」
とフルートが聞く。
すると、珍しく深刻な顔をするデイ。
「ロギウスの腹心である、4大魔王の1人、地獄大神王メイオウ……かつて神に逆らったロギウスの、反乱の同士の1人……神話の時代に、私と2人の大魔導士によって、漸く討ち果たせたほどの実力者……おそらく、今のあなた達じゃ勝てないわね」
「メイオウだと!」
と一番驚いたのはアニオンであった。
「師匠……いったい何者なのですか?」
エンは、恐る恐る尋ねる。
「メイオウはかつて、素手で大地を割って、二つに分けたほどの実力を持つ魔導士……この世界の常識を遥かに凌駕する魔導士よ。 恐らく、7人の大魔導士と、3人の太古の魔導士で、束になっても勝てるかどうか……」
「大地を……割るだって?」
そう俺が言うと、デイがニコニコしながら再び語りはじめた。
「今のあなた達は、逃げることに集中しなさい。 そうね、アニオンとか言ったかしら? あなたの負極魔法を用いて、取りあえず奴が追ってこれないと思う、空中聖域へ移動しなさい。
そこなら、邪悪なものが追ってはこれないし、ロギウスも手は出せないわーーーーじゃあ、頑張ってね♪」
といってデイが消えた。
直後に地震が起きた。
グラグラと、足元が揺れる。
そして、天井のクリスタルが、崩れ落ちてくる。
このままでは、神殿が崩れてしまう。
「今は猶予がないわね……みんな、急いでさっきの入り口まで戻るわよ!」
といい、俺たちはアニオンのあとに続き、祈りの間を後にする。
ヤバイ!
脱出しよう!
自然豊かな、太古を思わせた神殿内部。
その、豊かな植物たちに、動物や虫たちは、喜びを感じていた……ずだった。
しかし、そんな楽園はもう無かった。
この世の地獄……それがふさわしい言葉だろう。
悪夢のようで、悪魔のような光景。
身の毛もよだつほど、無惨な光景。
植物や、動物、虫たちは焼き殺されていた。
それも、炎ではなく、溶岩で……
生きながら、殺された。
苦しそうな表情を浮かべる、動物たちの近くに、そいつはいた。
ーーーーまがまがしい黒い炎を放つ男……メイオウ。




