2ndステージ17:地は眠り、悪は立つ
地の大魔導士の神殿。
その内部は神聖な場所と言うよりかは、植物の楽園ともいえる場所であった。
地下に残された、息ずく太古の自然。
そして、森にいなかった、虫や動物の姿もちらほら見えた。
この場所はどうやら、動物たちの楽園のような場所なのだろうか?
「ここが、グランがいる地の神殿か……」
辺りを見回すと、奥の方へと行くことのできる通路を発見した。
薄暗い中を、ゆっくりと慎重に進んで行く。
すると、広い空間へと出ることができた。
地の大魔導士の神殿の祈りの間……
そう思わせる、装飾と、鮮やかな水晶の壁の部屋。
そして、中央にある巨大なクリスタルの中の、グランはいた。
閉じ込められてる?
はたまた、閉じ込めたのか?
「グラン……この中に……」
と、俺が言いかけたところで、クリスタルに軽くひびが入った。
その中から現れたのは、まぎれもなくグランであった。
服装が前回と異なり、タキシードのような姿になっていることについては、あえてツッコミは入れない。
しかし、全くと言っていいほど、似合っていない。
その様子に耐えきれなかった、ディルとアニオン、そしてエンまでもが腹を押さえて笑っている。
その笑いに呼応して、グランの目が静かに開く。
その眼はエンの時と同様に、暗く恐ろしい眼だった。
黒々しく輝く、邪悪な思念が、彼の眼から伝わってくるようだった。
「来るわよ!」
とフルートが言うのと同時に、グランは俺たちに向かって魔法を放つ。
「地ノ魔法:地界宝剣」
グランが地面に振動を与えると地面からたちまち、岩の刀が生えてきて、俺たちに向かってくる。
刀……なんて、生易しい強度では無さそうだ。
壁などに生えていた、結晶などは、意図も簡単に切断された。
さながら、豆腐を切るように、すんなりと、ざくりと斬り分けられたのだ。
それを見たアニオンが、皆の前に立ち魔法を放つ。
「負極魔法:明鏡止水零!」
アニオンの魔法が刀の動きを鈍くした。
しかし、追撃のように、グランは次なる魔法を発動していた。
「地ノ魔法:地解明察」
地面を思いっきり踏みつけるグランに呼応して、アニオンの下に落とし穴が現れた。
アニオンはそこに落ちそうになるが、ギリギリのところでボルの空間魔法によって助けられた。
ナイス!
この隙に、俺はフルートの準備が整うまで、時間を稼がなければ……
「神魔法:未完全版光天神‼……ん?」
俺は神魔法を発動させた。
すると、前回とは違い、翼の形が前より格好良くなっていた。
雀のような小ささから、鳩くらいの大きさになったのだ。
さながら、某人気漫画の劇場版で、翼を生やしていた猫のように……
(僕が戻ってきたから、本来の力の5分の1の力を出せるようになったんだよ~)
とアマデウスが俺の心に語り掛ける。
なるほど……力の源である、アマデウスの帰還により、ある程度は力を使えるようになったってことだな。
(名付けて、神魔法:未完成版光天神‼ これで、光属性の最強魔法までは使えるようになったよ。 でも、他人に貸し出すのは、まだ無理かな)
最強魔法使えるなら、充分だろ。
よし、フルートの魔法がの準備が整うまで、何としてでも食い止めなければ!
「行け! 光の魔法:聖邪光纏!」
この魔法は1発、どうにか当たれば、なんとか、洗脳を解除させることもできる。
しかしながら、グランの岩壁に阻まれてしまう。
「やはり、ダメか……」
手練れ相手に、いきなり一撃必殺系の技は効かないか……。
ましてや、身動きがとれるのだから、尚更だな。
「くそ、じゃあ地道に牽制するしか……」
その時……
花びらが、舞う。
桜吹雪のように、多くの花が散り、グランを包み込む。
「ーーーーみんな、お待たせ。 植物魔法:華楼樹……花弁に包まれた人間を、花の香りの中に閉じ込めて、封印する魔法……」
一瞬動きが止まったかに見えた。
花々が、グランを囲み終わったその時……グランが神魔法を使用してきた。
「神魔法:地天神!」
花々は、見るも無惨に、黒々しく色を変え、枯れていき、花の香りは消え失せた。
これから、彼の猛攻が始まるのかと思いきや……それは無かった。
何故ならば、彼の神魔法は消失したのだ。
もっと正確に言うと、地天神発動と同時に、アマデウスが俺の体内よりでて、グランの地天神を食べてしまった。
「げっぷぅ……ふう。 元々、僕の魔法なんだから、奪い返すことなんて簡単だよ♪」
と満足げな顔をしているアマデウスに、呆気を取られたグランの隙をついて、フルートがアニオンとともにグランの拘束に再び成功する。
その拘束を外そうとするグランであったが、その一瞬の隙をついて俺は手に光を集める。
「今だ!」
フルートの声を合図に、俺はその手に溜めた光を放つ。
「いっけぇええええええ!!!!! 光の魔法:聖邪光纏!!!!!」
その聖なる光はグランに見事命中し、彼の中の黒い何かは光によって消滅した。
【そのころ、時空城では】
地の属性をかたどったモニュメントが壊されて、その様子にロギウスは怒り狂う。
「またしても・・! しかも、今回は奪っていた魔法を奪い返すだと! こんなのは聞いていないぞ! おのれ!!!!!」
虚しい城の中に、怒号がこだまし、その直後何かの破壊音が聞こえたのち、爆炎が城から出る。
その爆炎の中、ロギウスは静かに言う。
「ここで、引き下がる我ではないわ・・」
そういうと、爆炎が何か生物のような形をした何かとなって、ロギウスに跪き
「我が主様……およびでしょうか?」
と言うのであったーーーー




