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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第2章‐地は野に栄える‐
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2ndステージ14:兄の思い

寝静まった後の事である。

現在の時刻は0時である。

いつもながらに恒例なのであるのだが、目が覚めてしまった。

どうしても、目が覚めてしまう。

何故だろう?

そして、ここも恒例なのだが、ライの代わりに、ボルが俺の身体に密着しすぎと言うほどに、密着している。

何故だか、アマデウスが外に出ている。

俺の上をくるくる回りながら寝ている。

まるで、混乱に陥った時の表現みたいな絵、ひよこたちが宙を回るがごとくディルも回っている。

まあ、熊だがな。

とりあえず、のどが渇いたので台所で水でも飲もうかな、と俺は腕にひっついてるボルを連れて寝室から台所へ行くのである。

台所にいくと、明かりがついていた。

そこにはフルートがいた。

そして、俺の姿に気づくと


「どうしたの?」


 と眠そうな顔をして目元をこすりながら聞いてきた。


「うん。 フルートも眠れないの?」


 と聞くと、フルートは


「私は、これから寝るのよ」


うとうとしながら彼女は寝室へ戻っていった。

いったい何しにここにいたんだ?

とにかく俺は水が飲みたかったので、そばにあったグラスに水を入れてごくごくと飲む。

その音に反応して、ボルが目覚める。


「ーーーー翔琉、また眠れないのか?」


 そういい、あくびをしてすぐにニコニコしながらボルは俺の腕から降りて、近くにあった椅子に座り俺の方を向く。


「なんでゆっくり眠れないんだろうな? 俺も不思議に思うよ」


 俺はグラスを洗い場において、ボルの正面にある椅子に座る。


「俺がくっつきすぎて、ドキドキしたとか?」


 ボルは頬を赤めて、デレデレしながら言う。

 そんなボルに対して、俺は悪戯めいた顔とボルのほっぺたを軽くつまんで


「ドキドキと言うよりは、モフモフはしたよ」


と言う。

そんな風に言い返す俺の、ほっぺに触れている手を肉球で軽く押しのけながら、ボルも笑う。


「そうだ! ちょっと早いけど、朝風呂でも行く?」


 俺がそう聞くと、その提案に対してボルは


「朝風呂? ああ、行くか?」


 俺とボルは、昨日の地下の温泉へと向かうのである。



温泉にはもちろんの事、誰もいなかった。

そして、暗がりになっていた洞窟の上にはまるで星が出ているように光る鉱石が多くあり、疑似的な星空を演出していた。

きれいな景色に見とれつつ、俺達は湯につかる。


「こうして、星空があって、水場があるとあの時の事を思い出すよ」


とボルが言う。

あの時……それは、すなわち俺とボルが友達になったあの夜か。


「あの時に翔琉が俺に、色々教えたり、怒ったり、慰めたりしてくれてなければ、今の俺は無かったと思うよ」

「ああ、ディルの海辺の別荘だったよねーーーー」

「うん。 あのほんの少し前までは、殺し合いしていたのになーーーーそして、ディルの別荘に着くなり、翔琉が”砂遊びしようぜ”なんて言って、俺と砂遊びした時には普通に拍子抜けしちゃったけどな」

「だって、あの時ボルの目には殺意のこもった冷たい目をしていたからね。 また、戦闘が始まるくらいなら、あの場はああいう雰囲気にするしかないじゃん」


ボルは嬉しそうに、俺の方を見つめる。

そして、その顔のままボルは俺に言う。


「まあ、意外と楽しかったけどな。 砂遊びとか、やったことなかったし、遊びなんてものもしたことがなかったからなーーーー」


 そういって、ボルは鼻歌交じりになり、上機嫌だ。


「そういえば、あの夜……なんで、ボルは外に出てきたんだ?」


そう俺が聞くと、ボルは固まってしまった。

え?

これ、やばい質問だった?


「いや~、いい星空だ」


 そういい、上を見上げるボル。


「ここ地下だし。 星じゃねえし、空でもねえよ。 え? ボルなんか隠してる?」

「それはいったい、何のことでしょうか?」

「ボルが、敬語を使ったってことは怪しいな」


 俺はボルに詰め寄ろうとするがそれに合わせて、ボルも遠ざかる。

あれ?

なんで隠すんだろう?


「いやいや、翔琉さん。 やめてくださいよ……」

「おい、何を隠している? ボル。」


その攻防は10分程であった。

ひたすら問い詰めていた。

そしてようやく、ボルが語りだすのである。


「分かった、分かったよ。 怒らないって約束してくれよ?」

「内容にもよるけどね……で?」


ボルがやや泣きそうな顔をしながらこちらを見るが、今は同情の余地はない。

さっさとはいて、楽になってもらおうではないか。


「うう……あのな、翔琉。 あの時はな、翔琉を味方にできれば、俺は教団に戻れるんじゃないかと思って……その……あの……」

「で?」

「ーーーー洗脳しようとしました……」

「ふーん……」

「ごめん……翔琉」

「ふーん……」


 とまあ、やや重い雰囲気を出しているとボルが泣き出してしまった(幼児体型中)。

 普段なら、文字通りあやしたり、猫かわいがりするのであるがそれをさせないための空気である。


「わーん……ごめんなさい、翔琉……わーん!」


 ネコ科であるのに、泣くときは犬の鳴き声みたいな泣き方をするのか!

 とまあ、冗談はほどほどにしてあげて許してやるか。


「大丈夫だよ、ボル。 気にしてないから」

「グスン……本当?」


いやまあ、少しは気にしてるけど。

いまさらな。

過去の事だから攻めても仕方がないし。


「だって、あの時のボルは、今のボルじゃないんだからね。 だろ?」


 そういうと、ボルは俺の目を真剣に見て


「うん……そうだよ」


と言う。

その眼には、嘘をついている眼ではなくて、純粋な目であった。


「変に考えすぎるのも良くないよ。 時には言うことも大切だよ」

「そっか! うん、分かった!」


 一気に明るくなったな、ボル。

 まあ、気にしていたことが1つ晴れただけでもよしとしよう。

 さて、そろそろ温泉からあがるかな……


「まって、翔琉。 もう1つせっかくだから言いたいことがあるんだ!」


 温泉から出かかっていた俺に言う、ボル。


 「うん、自分に素直になっていろいろ話してくれるのなら喜んで聞くよ」


 嬉しそう顔をして、ボルは俺に言う。


「実はこの間、フルートの作った家で寝泊まりした時、翔琉の腕におもらししちゃったんだ。んで、ばれるのが怖くてその場にあった、翔琉の服で拭いたんだ」



さて、ボルが湯船の中に沈んでいる中、俺は急いで服を洗濯しに戻る。

裸でダッシュ!

すると、洗濯はすでにされていたのである。

と言うか、洗濯中である。

この世界においては、道具魔法を用いて何事も行うのだが……

あれ?俺洗濯の場所には……

ああそうか!さっきフルートがいたのってもしかして。

だとしたら、フルート。

それをせめて説明してくれよ。

俺さっきまで、ボルのおもらし付きの服を着ていたって事じゃん。


「はあ……やれやれだよ」


 そういいながら俺は、近くに置いてあった、浴衣に着替えた。

 その数分後、ボロボロのボルがやってきた。


「怒らないって……言ったのに……」


そういって、ボルはその場に倒れてしまうのであった。

流石に、服汚されたまま着続けた俺のメンタルになって考えてくれ。

ついつい暴力で訴えてしまったがこれは、怒って当然だ。

隠し事も、許せる範囲と、許せない範囲がある。

これはちょっと、中学1年生には耐えられないかな。

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