2ndステージ11:逃亡者
【今から、2時間前】
先の戦闘によって、神魔法の真の使い手である天野翔琉の帰還を、炎の大魔導士エンの敗北により知ったロギウス。
ロギウスにとって現在、天野翔琉以上に恐ろしい存在はいない。
何故なら、神魔法を元々所持していた天野翔琉が自身に近づくと、神魔法が本来の主である天野翔琉本体へと戻ってしまう可能性があるからだ。
また、オールドアへと翔琉を衝撃波によって飛ばしたのは、実際はロギウスではなく、ディルであったということにも危機感を覚えていた。
あの時、肉体の支配をしていたにもかかわらず、衝撃波を与えることにより、翔琉を無理矢理逃がしたという事実がある。
実際はあの場で、翔琉を殺す予定であったロギウス。
危険分子は完全に排除しておきたかったのだが、その時はうまくいかなかった。
そのため、翔琉の行きつく先の時間を精々捻じ曲げる事しかできなかったのだ。
その結果翔琉は13年後の未来へと飛んでしまった。
それで、全てが片付く予定だった。
しかしながらまたしても失敗した。
その事実を知り、余計にいらだちが隠せなくなったロギウスは何をしていたのかと言うと、心の世界で封じ込めていたディルを痛めつけてやろうと封印を解きディルと戦っていた。
勿論精神世界で。
そのまま消滅させてやるという目論見のようだが、実際はやや押されがちである。
「伝説の罪人さんが、この程度なんてみんなに笑われちゃいますよ」
「ふん! 何を言う。貴様なぞ、すでにボロボロの布きれみたいではないか」
確かにロギウスの言う通りで、ディルはもはや精神的に限界まで来ている。
しかしながら彼女には強い味方がいるのである。
神魔法は取り込まれてもその意思は、はっきりとしている神魔法の化身、アマデウスである。
少年の姿をしてはいるものの、さすがは神魔法の化身である。
実力はディル以上である。
しかしながら少年は本来の力を出し切ることができなかった。
その原因は大部分をロギウスに奪われているためである。
そんな彼でも、ディルと協力することによって普段と大差なく戦うことができているのである。
「ロギウス。 僕がいることを忘れてほしくないな」
「ふん。 力なき貴様など、取るに足らぬわ」
「とかいいつつ、結構力が均衡しているよね」
そういって、ディルは挑発する。
流石に神話に残る伝説の罪人がこの程度の挑発に乗るわけが……
「貴様らなんぞ、一瞬で消して見せるわ! ボケがぁ!」
乗るのかよ……と思ったディルは、呆れ顔である。
だが、ディルには勝機があった。
この魔法さえ成功すればロギウスの精神世界から抜け出せるかもしれない……そんな魔法がある。
「永遠に消え去るがいい! 消滅魔法:粉砕消去!」
そういって、ロギウスが手を宙にかざした瞬間。
その時がやって来た。
「その魔法を待っていたわ! 時空間魔法:永久之夢!」
そういうと、精神世界に亀裂が走る。
「貴様! まさか、その魔法は!」
と焦るロギウス。
そして、にこりと笑いディルとアマデウスは亀裂から逃げ出すことに成功する。
「やられた……我が、あの娘の挑発ごときで、策に踊らされるなど」
そういいながら、ポツンと1人ただただ虚しくその場にいるロギウスであった。
時空間魔法永久之夢……相手の魔法が、異空間で放たれ、それが命を奪う魔法の時のみ発動できる、限定魔法。
異空間を破壊して、術者を逃すことのできる、防御関係の魔法である。
こうして、ディルとアマデウスは、ロギウスの異空間から脱出したのだったーーーー
外の世界、正確に言えばディルは自身の肉体の外に出ることに成功した。
久々に感じる空気はやや重く何より暗かった。
そんな中で、ディルは自身が現在霊体であることを認識したのは、すぐだった。
魂となった彼女は、同じく魂の存在となっているアマデウスとともに時空城からの脱出を試みる。
結界の近くまで来たところで、ロギウスが追ってきた。
憤怒の表情をみせ、黒々しく、禍々しいオーラを放って……
「逃さぬぞ! 小娘! そして、アマデウス!」
そんな中彼女たちは冷静に結界の外に出ることに成功する。
実はこの結界、魂は簡単に通ることができる。
そのため、魂の塊によって肉体を形成しているといっても過言ではない時限亡者たちは楽々に時空城から外へと行けるのである。
「残念でした。 私たちの勝ちね(ギリギリだったわ・・)」
そういって、ディルとアマデウスは時空城から離れていくのであった。
その光景を見ていたロギウスは顔からマグマが出るかと言うほど赤くなっており
「あのもの達を即刻捕まえてまいれ! 捕まえられない場合は、消滅させてしまえ!」
と時限亡者たちを追撃のために向かわせるのである。
そして、ディル達は翔琉の元へと向かうべく、アマデウスの翔琉の察知能力を頼りに翔琉の元へ向かうために、温暖帝へと向かい、こうして再開することに成功したわけであった。




