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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:第1章‐7人の大魔導士‐
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1stステージ5:ライとの出会い

そして、ようやく城の前へとたどり着くことができた。

 日が落ちかかっているので、城の堀の水には、赤と黒の空の景色が映し出されている。

 そして、夕ご飯の時間帯であるため、とても美味しそうな匂いがする。


 あーあ……お腹すいた……


「ここにディルがいるのかな?」


 そういいながら、ふらふらっと歩いている。

 注意力散漫となってしまって、完全によそ見をして歩いてしまった結果―――――どん、と目の前の虎の獣人とぶつかってしまった。

 ぶつかった衝撃で、俺は後ろに大きくしりもちをついてしまった。

 顔を上げると、そこには甲冑を着ていて、ずっしりとした筋肉質な感じで首元にマフラーをしている虎の獣人はこちらを向いて、ぎろりと睨んでいる。


「おいおい、どこ見て歩いているんだ?」


 と虎の獣人は俺をがばっと、掴みあげて言った。


 やばい、絡まれた。


「すみません! つい、よそ見をしていました。 本当にごめんなさい」


 と俺は謝るのだが、虎の獣人は今度は俺の胸倉をつかんで


「謝れば何でもすむと思ってんのか? 取りあえず、面かせや!」


 と怒鳴って、俺は虎獣人に連れて行かれそうになる

 どうしよう……

 そう俺が思っているとき、ディルがすっと現れて


「ねえ、やめなさいよ。 弱い者いじめは良くないよ」


 と虎獣人の肩に手を置く。

 虎獣人は、ああ? とディルの手を振りほどき後ろを向く。

 そして、ディルの顔をみて態度は一変した。


「お前……ディルじゃねえか!」


 そういい、俺をつかんだまま、ディルの方に笑顔を飛ばす。

 苦しいんだけど……!

 ディルも俺の事をお構いなしに


「あれ? ライくんだ! 探したよ♪」


 と言う。

 談笑する雰囲気なのは分かるけど、取りあえず俺を何とかしてくれ!

 俺が苦しそうにしているのを見てディルは慌てて


「ライ、その人放してあげて! 私の連れなの!」


 と言うと、ライも俺が苦しそうにしているのが見えたようで、慌てて手を放す。

 ドサッと地面に落ちて、その場でゲホゲホとむせている。

 危ない危ない。

 もう少しで、意識が消えるところだった。


「すまねえな! 大丈夫か?」


 とライは俺の近くでかがんで、背中をさする。

 俺は、ライの方を向いて


「だ……大丈夫です……」


 と言う。

 声が震えていた。

 九死に一生を得るとは、このことであるのだろうか?

 しばらくすると、呼吸もだいぶ楽になった。

 それを見計らって、俺にディルはその虎獣人の紹介を始めた。


「翔琉、紹介するわね。 この人はライ、私の仲間の一人よ」


 俺は急いで起き上がって、はじめまして、とお辞儀をした。

 先ほどひどい目にあわされたのに、よく平気な感じで俺はお辞儀できたな……と自分を感心していた。

 するとライは頭をかきながら


「おう! 翔琉っていうんだな。さっきは悪かったな。ここ最近、仕事がうまくいかなくてむしゃくしゃしててな。 つい、当たっちまった。 んじゃ、改めまして俺様の名前はライ。 7(セブンス)大魔導士(ウィザーズ)の一人だ! よろしくな!」


 と言って、握手してきた。

 さっきとは全然違い、社交的な人(虎)である。

 ん? そういえば、7人の大魔導士って何だろう?

 そう思ってディルの方を見ると、目があった。

 やれやれ、と言わんばかりに、ディルは説明をし始めた。


「7人の大魔導士っていうのはね、この世界で強い力を持つ魔導士の中でもさらに強い力を持つ者の事よ。特に7人の大魔導士は別名:魔法守護者(マジックガーディアン)と言って、光以外の属性の各エキスパートたちなんだ。 ライはその中で、雷属性の大魔導士……つまり、この世界における雷属性の達人中の達人、と言ったところかしら」


 すごい人なんだな……と思った。

 と言うかそんなすごい人でもうまくいかない仕事っていったい何だろう?


 ライは頬を赤めて、照れながら


「よせよ、ディル。 照れるじゃねーか。 と言うか、ディルの方が俺よりすげえんだから」


 と言う。

 ディルが7人の大魔導士であるところのライよりすごいとはいったいどういう意味なんだ?


「え? それってどういうことですか?」


 とライに尋ねる。すると、ライはコホンと軽く咳払いをして、こう答えた。


「いいか翔琉。 世界には世界魔法連合(ワールドマジックユニオン)っていう組織があってな、その組織が色々と役職を決めているんだ。 見習(ファースト)い・魔導士(ロウウィザード)中魔導士(ノーマルウィザード)・7人の大魔導士、そしてこの上に3(トライ)太古(エンシェント)魔導士(ウィザーズ)がいるんだ。 ディルは3人の太古の魔導士の一人で、太古魔法の一種である時空間魔法を使うんだ」


 ディルってすごい人だったんだ。

 俺そんな人に、最初に出会ってたのか。

 あー、だから市場であった人たちは”ディル様”って言ってたんだ。

 納得納得。


「ディルってすごいんだな」


 と俺が言うと


「まあね」


 とディルは照れている様子。この世界の人は照れやすいんだな……。


「だがどうして急に連れ人なんて……ディルは弟子を取らないことで有名なのに……」


 とライが言いかけた時、大勢の人(主に男性)がディルに向かって走ってきた。

 お祭り騒ぎになるのではないだろうか?と言うほどの、大人数であった。

 俺とライはその集団に弾き飛ばされてしまった。


「ディル様! 弟子にしてください!」

「ディルさん! 修行させてください!」


 そんな風に言われて、すっかり囲まれてしまったディル。

 するとディルは


「あれ?ライ君と翔琉がいなくなっちゃった。 もう、またはぐれたら大変なんだから――例のごとく君たちには止まっててもらうかな――――」


 とボソッと言って


(タイム)魔法(マジック)静止(しすい)


 とディルが叫んだと思ったら、その瞬間、俺とライとディル以外は止まった。

 止まった―――完全に停止し、ピタリと全てが固まってしまっている。

 音も無く、舞う木の葉や、流れる噴水の水に至るまで何もかもが止まっている。

 そして、囲まれていたディルがそこから、ジャンプしてこちらに飛んできた。

 それを見ていたライは笑いながら


「ほらな」


 と言う。

 そのままライは話を続ける。


「あいつは弟子をとるのが好きじゃないからこうやって時を止めてその間にいなくなるんだ」

「なるほど……」


 と俺はディルを見ながら言う。


 ディルってすごいんだな……。

 もしかして”地獄の特訓”の時に周りが止まっているように見えたのは、もしかしてディルが時間を止めておいてくれたからなのか?

 いや、止めておいたら普通なら時間は止まったままで、3時間なんて経っていないはずだろう。

 ではいったいあれは――――


 と考え事をしていたのだが


「場所を移しましょ。ゆっくり話せる場所がいいわ」


 とディルが言ったので、取りあえず指示に従うため、いったん考えるのを止めよう。

 先ほどの話は、ディルに今度聞いてみる事にしよう。

 俺とライは、ディルが地面に書いた、丸い陣の中に入る。

 俗にこれが魔方陣と言う奴なのだろう――


「空間の魔法:斜辺へいこう


 ディルの手が光り、魔方陣が消えたと思ったら、なにやら町ではない景色になった。

 霧に覆われていて良く見えない。


「ここは?」


 と霧の中、うっすらと見えるディルの影に向かって俺は尋ねると


「さっきの魔法は、瞬間移動の魔法で、今ここは町のはずれの湖の真ん中にある私の別荘よ。 あと、時間停止も解除してあるからそろそろ」


 という。

 すると、霧も晴れて、先ほどまで無音だった世界に音が響く。

 小鳥のいい声が聞こえ、水の流れる音が聞こえる。

 そして、風が吹いてきた。

 周りが水に囲まれており、後ろには一軒の家が建っている。

 ここは、ディルの家なのかな?


「相変わらず、手際が良いな」


 とライは感心してニコニコと笑顔を振りまいている。

 ディルは、コホンと咳払いして、ライに


「じゃあ、ライ。 今回私に連れ人がいる理由を教えるわね―――とりあえず、詳しいことは家で、ご飯でも食べてからにしましょうか。 翔琉がお腹すかせて死にそうな顔してるし」


 ふふふっと軽く笑って俺とライを家の中へと案内する。

 やった!

 ご飯にありつくことが出来る―――

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