2ndステージ8:浄化の光
神殿の入口……そこは、炎によって閉ざされていた。
まるで、西遊記に出てくる、炎の山……火焔山のように。
芭蕉扇を使わなければ、通れないような炎を、扇を扇ぐことなく、アニオンは、手を使って払いのけた。
さながら、雑木林を抜けるときのごとく……炎の中を払いのけて進んだのだ。
炎は見事に消え失せた。
「馬鹿弟子程度の炎なら、魔法を使うまでもないわ……」
え?
今の、素手?
魔法じゃなくて?
あなた、何者なんですか?
そんな疑問を露知らず、彼女は奥へと進んで行く。
俺たちも、その後を付いていく。
そして、俺たちは神殿の奥にある、祈りの間に来ていた。
そこには炎の球体の中で眠りにつくエンがいた。
エンはいまだに眠っているのだが、そこにアニオンが
「いつまで寝てるんだよ。 馬鹿弟子が!」
と一括を入れると、目が覚めて球体が解ける。
彼の目は、何も見えないような黒い目だった。
そして、彼は言う。
「侵入者ハ排除スル」
そういった瞬間に、彼の身体が炎に包まれる。
あの姿は……!
「神魔法炎天神だ!」
そう俺が驚きながら言うと、アニオンは
「え? 神魔法ってあなたが使うものじゃないの? 翔琉君ーーーー一応そう言う風に聞いてるわよ!?」
とアニオンも驚きを隠せないようで、その頬を汗が伝う。
「神魔法は、翔琉の努力と好奇心のおかげもあって、最近知れた事実があって、実は神魔法は他人への貸し出しが可能なんだ!」
ボルがアニオンに向かいそう説明する。
アニオンは、悩みながらも考えた、あっさりとした結論を述べる。
「じゃあ、あの魔法を抑えるにはあの魔法が切れるまで待つか……それとも、貸し出しを止めさせる魔法が必要になるわけね」
そういって、彼女はエンの前に立ち魔法を使った。
「負極魔法:通信負荷」
アニオンの手からは、シャボン玉のようなものが飛び出し、エンに向かうが、エンが
「炎ノ魔法:断炎」
というと、シャボン玉ははじけた。
そして炎がアニオンに襲い掛かった。
その瞬間、舌打ちをしたアニオン。
「今の魔法は、周りの者とのやり取りを0にする魔法だったのに(あの攻撃を壊すなんて、やるようになったわね……馬鹿弟子)」
そういって、彼女は回避しようとしたが間に合わなかった。
それを見事におさめたのは、ボルの空間魔法であった。
ボルの空間魔法によって、炎は空間の裂け目へと消えていった。
「ありがとう、ボル君。 助かったよ」
そういって、軽くお辞儀をするアニオン。
ボルも若干、このセリフに対して照れているようで頭をかくボル。 しかしながら、エンの攻撃は再び始まる。
「炎ノ魔法:炎帝龍」
炎の塊が無数になり、俺たちを包み込むように飛んできたのであった。
「しゃあない! あの魔法を使うぞ! いいな? フルート!」
「ええ、お願い!」
そういうと俺は例の魔法を発動させた。
その魔法とはもちろんあれである。
「神魔法未完全版光天神‼」
そういうと俺に光の翼が生えた。
雀の羽根ほどの……
その姿を見たボルが笑顔でこういった。
「神魔法を……流石、俺の友だ、翔琉」
その光景を見たアニオンは驚きを隠せなかった。
何故なら神魔法は敵の手に落ちたと考えられていたためである。
しかしながら、彼女は現実に神魔法が奪われた少年が未完全ながらも、その魔法を発動させているのだ。
彼女はその光景に希望を見出していた。
「翔琉君……まさか、奪われた神魔法を君は使えるの?」
自然に彼女は声を出していた。
疑問を解消するため。
そして、俺の言った言葉で、彼女はついつい笑ってしまうのであった。
「なんか、取りあえず発動させてみたらできた」
彼女は笑っている。
そんな単純で、適当な答えが他になかったためだからであろう。
だがその答えが彼女には希望の光を強くすることになった。
最終的にロギウスを倒すのは彼なんだ、この世界やディル達を救ってくれるのだろう……そんな事まで思っているくらいだ。
そういう風に素直に思えた彼女の顔は優しい顔になっていた。
そんな優しい顔の彼女や、ボル、フルートに襲い掛かる炎を俺は神魔法をもって打ち払う。
そして、エンの姿が見えると、エンに俺は光属性の邪を滅する魔法、光の魔法:聖邪光纏を放つのであった。
浄化の光を与える魔法ーーーーこの魔法ならば、洗脳を解き、神魔法を解除させることもできるだろう!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そういうと、エンは苦しみだし彼の身体から黒い何かが出た。
時限亡者ではなく、負の塊と言える何かは彼の身体から抜け出て、聖邪光纏の光をあびて消滅した。
その時を同じくして、時空城の炎のモニュメントは砕け散り、ロギウスは弾き飛ばされる。そして、彼はこの時初めて気づく。かつて、自身がこの世界から追い出すように異次元へと飛ばした天野翔琉の帰還を……。
「まさか……奴が?」




