表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/349

2ndステージ4:神魔法の正体

「待ってくれ―――氷樹に行く前に1つ教えてくれないか?」


 そう俺は真剣な面持ちで、フルートに言う。


「さっき、この小屋の前で黒い何かに襲われたんだが―――あれは何だか知っているか?」


 そう聞くと、フルートは顔を曇らせながら答える。


「あれはね―――神話にあったロギウスの仲間、だと思う……」


 だと思う?

 ずいぶんとあいまいな答えだ。

 フルートにはちゃんと分かってないって事か?

 そしてフルートは続けて説明をするのだった。


「まあ、私が知っているのはあいつらが時空城から大量に出てきていて、敵って事だけ―――あとの事は、専門家である、アニオンに聞くしかないわ」

「専門家?―――アニオンなら何か知ってるって事か?」

「恐らく、何らかの情報はつかんでるはずよ。 世界の全てを知る女、アニオン―――であるからね」


 すげえ、異名だな。

 全てを知る女って―――いったい、どんなことをしたら、そんな風に言われるのだろうか?


「―――じゃあ善は急げ、氷樹へ行こう!」


 そして、俺とボル、フルートの3人は、3人の太古の魔導士最後の1人である、アニオンの元へと訪れるために氷樹へと向かうのであった―――



 一方、其の頃。

 時空城王の間では、天野翔琉から奪った神魔法の発動を試みる男がいた。

 否、正確には身体は女の男が魔法の発動を試みていた。

 しかしながら、身体に光のオーラはまとわせることが出来るものの、光の翼は生えなかった。


「くそ! どうなっているんだ!」


 そういって、再び男は魔法を発動させようとした。

 しかしながら今度は発動するどころか、発動した男の女の身体を吹き飛ばした。

 その瞬間に光の塊は男から飛び出て、少年の姿になった。


「―――いい加減にしてくれるかな?」


 という少年。

 その少年に向かい話す男。


「貴様―――何故俺に逆らう? 貴様の所有者は、俺なのだぞ!」


 そういうと少年は首を横に振る。


「いいや、違うね。 僕のあるじは天野翔琉さ。 君は彼から、僕を奪い取っただけじゃないか。 僕はそんな奴に、真の力を貸すつもりはないもんね」

「確かにそうだ。 だが奴はすでにこの世界にはいない。 だが、何故その魔法ごときが自我を持ち、こうして体まで持っているのだ?」

「もしも―――他の魔法ならそうだったかもしれないね。 でも残念ながら、僕は違うのさ。 この神魔法様はな‼」

「おのれ―――神魔法光天神。 いや、アマデウス―――と呼ぶべきか?」

「ははっ。 懐かしいね、その名前。 まさか、君にそう呼ばれる日が来るとはね、ロギウス―――」

「まあいい、いずれにせよあと少しで、貴様は俺と完全に融合し、貴様の魔法は我の物になるのだからな―――はっはっはっは~」


 そう高笑いするロギウスを背に、アマデウスは外を見て


「翔琉―――待っていてくれ。 今に逃げ出して、そっちに行くからな。 僕があんな男の魔法となって融合させられる前に―――」


 そういって再びアマデウスはロギウスの中へと引きずり込まれていった。

 そしてここは、ロギウスの精神世界。


「翔琉―――我が主」


 そういい、アマデウスはロギウスの中にいた。

 ロギウスは、朝方には眠り、夜から活動するため、今は眠りについている―――そして、今の人格はディルとなっている。

 ディルは半ば強制的に封じられているため、その魂は眠りについているのでロギウスにも干渉できない深層心理の深くに眠りについている。

 アマデウスは、ロギウスが眠っている間だけディルの魂と会話することができるのだが、今日はディルの声が聞こえなかった。


「どうしたんだろ? ディル―――」


 そういうと、アマデウスの前にディルが現れた。


「ごめんね。 ちょっと、眠ってたみたい―――」


 とディルはアマデウスに言う。


「全く―――僕が、君の話し相手になってるんだから、ちょっとは気にしてよね!」

「ごめん、ごめん。 で? 今日は何を話してくれるの?」

「うーんとね―――翔琉がこの世界に帰ってきたみたいなんだよ」

「え? 本当?」

「うん、翔琉の匂いと気配がしたからね」 

「匂いって――――まあ、よかった。 無事だったんだ」

「うん。 そうみたい。 でも、翔琉は僕の力を奪われているから―――完全な神魔法は使えないと思う」

「完全な神魔法?」

「うん―――僕が、翔琉の中にいないと、完全に力を引き出すことが出来ないと思う―――でも大丈夫。 翔琉の中には僕が少し残っているから、きっと何とかしてくれるよ」

「そうね、あいつの才能は気持ち悪いほどすごいからね――――」

「それ前にも翔琉に、同じこといった時、翔琉は心の中で悪口言われたって嘆いていたよ―――」

「ははっ―――冗談も通じないなんて……頭の固い男だね」

「まあ、それが翔琉だからね。 だから、好きになったんでしょ? ディルは」

「ええ。まあ、そのせいで―――その気持ちを利用されて、身体をロギウスに乗っ取られたんだけどね……」


 そして、アマデウスに再び語るのはディルの思い出話。

 過去の誤りと自責の念であった。


「私は―――時と空間の監視者。 過去に干渉することも、未来へ干渉するのも―――そして、異世界へと干渉することは本来禁止されている。 でも、もしも世界のはざまに落ちたものや、異世界から、またはこちらの世界から干渉する者がいるならば―――それに干渉することを許可されている。 そして、様々な時や空間を見ることも―――まあ、日課ね。 そんな中で私はある世界で、ある少年を目にする―――少年の名前は天野翔琉。 ごくごく普通の少年であったら、そのまま何事もなく見逃していた―――でも、彼は普通の人ではなかった。 全てにおいて何事にも才能を持つ超天才だった―――のにもかかわらずに、彼はひたむきに自分の夢に向かって努力し続ける。 そんな姿に私は魅かれた。 だって、私はそんな人物を見たことが無かったんだもの。 才能あるやつは、努力しないし、才能ない奴は努力しても無駄だと悟り、努力を怠る―――そして、才能なくても努力し続ける奴は、いずれ挫折を知って、夢を諦める。 生涯好きな事を探求して、一生同じことが出来る奴なんてごく少数で、希少だ。 そして、そんな希少な彼を見ていく中、私は恋に芽生えた。 そんなひたむきに生きる彼に――――だけど、それは叶わぬ恋―――違う世界で生きる彼には私は干渉することができない―――それはルール違反と言うものだ。

 そんな時、私は過去の世界からこの世界へ干渉する魂を見つけた。

 そして私はいつものように元の世界へと戻そうと、監視者としての使命を全うしようとした――――しかし、私はその魂にこういわれた。


「意中の男をものにはしなくていいのか?」


 そう語りかけてきたんだ。

 その一瞬の隙を突かれて私の中に魂は侵入した。

 憑りつかれてしまった。

 あいつは私の身体を操り、翔琉の世界に干渉した。

 そして、翔琉の世界では爆発が起き、翔琉は世界のはざまに落ちてしまった。


「良かったな―――意中の男が、手に入るぞ」


 そういって、魂は再び私の身体を操ろうとしたけど、私はその魂を封印することで奴の動きを封じた。

 そしてそのあと、私は翔琉をはざまから救い出して、元の世界へと戻そうとした。

 でも、奴を封印しているせいで私の魔法では戻せなかった。

 だから、オールドアへと導いた。

 そして、翔琉が帰ってしまう前の夜中―――思い切って、告白しようとしたんだ。

 でも、あの変態―――トルネに邪魔されてしまった。

 だから、決めたの。

 諦めようって―――

 何度も―――何度も―――

 そのあと、教団本部へ乗り込んだり、始まりの塔へ行ったり―――

 思いは遺恨を残したままだった。

 そんな中、頂上でデイ様と戦った時―――ついに私の中の封印が解けてしまった。

 あの封印魔法は、精神が不安定になると崩れてしまう。

 封印が解けて、私は肉体を奪われてしまったんだ――――」


 そうディルはアマデウスに言う。

 泣きそうになりながら。

 赤裸々に―――忌まわしき、自分自身の過去を、彼女は語ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ