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2ndステージ1:反撃の狼煙

 そのあと、警察が来て事情聴取を取ったり、検査をされたりした。

 俺が家族ときちんと話をすることができたのは目覚めてから、5時間後の事だった――――


「兄貴―――今まで何してたんだよ」


 そういうのは俺の弟である翼である。

 昔はあんなにも、お兄ちゃんお兄ちゃんと言っていたのに、今では兄貴か。

 歴史を感じるものがある。

 しかし、なんか髪の毛とか染めたりしてちゃらくなってる。

 昔では考えられないな。

 なんか、置いてきぼりにされたみたいだ――――

 そんなことを考えていた俺は、弟の質問に対して


「いや、それがさ―――爆発した後から記憶がないんだ」


 と言うしかなかった。

 当然だ。

 魔法の世界の話しなんかしたら絶対信じてくれない。

 むしろ、頭がおかしいと思われてしまう。

 あの世界の事は、この世界では言わない方がいいな―――


「それにさ、なんで兄貴―――あれから、だいぶ時間が経っているって言うのに、なんで身体が成長してないの?」


 と聞く弟。

 俺の身体は13年前の姿と変わっていない。

 検査の結果も異状なしと診断されたので原因は不明である。

 しかしながら、それは当然である。

 俺にとってはたったの2週間やその位だと思っていたのに―――この世界では13年もたっていたのだ。

 通常の人間の身体ならば、13年も月日が流れたのならば、普通は身長が伸びたりして、身体に何かしら変化が表れてもいいものだ。

 しかしながら、俺の身体は全くと言っていいほど、事件前から変わっていない。


「なんでだろうね」


 真実は不明である。

 でも恐らく、タイムスリップが原因だと考えられるだろう。

 タイムスリップには2種類ほどパターンがあるらしい。

 1つ目が、魂(精神)だけを、未来の自分に送る方法。

 この場合、肉体は未来の自分の身体になるので、今回の場合には当てはまらない。

 2つ目が、肉体と精神を移動させる方法である。

 某子供向けの人気漫画のように、タイムスリップしても肉体に変化が訪れず、そのまま記憶も精神も残されたままになる方法である。

 今回の場合は、この後者の方が当てはまると推測できる。

 つまり、あの時のオールドアは、タイムマシーンのような役割をしてしまい、時間軸を間違えた状態で通ったことになる。

 こんなことができるのは、時間魔法を完璧に扱えるディルくらいなものだ。

 そういえば、最後にロギウスって名乗ってたよな。

 ロギウス……この名前には聞き覚えがある。

 何処で聞いたんだっけ?

 ……

 …………

 ……………………

 ………………………………‼

 そうだ、あの時。

 トルネが、話してくれた神話。


 ”オールドア……それは太古の昔に、この世にまだ神がいた頃、当時の神が創り出した異世界への架け橋――――そして神は、その扉をくぐり様々な世界へ渡ることができた。

 神は様々な世界の話を人々に聞かせる。

 魔法のない世界―――神の世界―――楽園のような世界。

 そして神は、人々にそれを授け、神は違う世界へと旅立っていった。

 人々はそのドアを用いて、平和に暮らしていた。

 しかしながら、とある欲望にまみれた1人の人間とその仲間たちのせいで、世は混沌を招く時代になり、この世界どころか、オールドアで繋がる違う世界においても混沌へといざなっていった。

 神は深く嘆き、怒り、神は直々に降臨した。

 そして神は、神に仕えた3人の偉大なる魔導士と7人の聖なる魔導士と協力して、欲望にまみれた人間と、その仲間たちと対峙した。

 神は、3人の偉大なる魔導士と7人の聖なる魔導士とともに、その者たちを打ち破った。

 その者の仲間たちは降伏したが、その主導者と思われる欲望にまみれた人間は、最後まで抵抗した。

 そして、最後まで抵抗した欲望にまみれた人間は、神によってその場で即座に処刑された。

 現代において、その人間の事を世に伝えるため、書物に書き残した。

 神は事を終えると、7人の聖なる魔導士たちに、オールドアが2度と悪用されないように―――と、封印術を授けた。

 そして、3人の偉大なる魔導士の1人に、世のことわりを監視する役目を与えた後、元の神の世界へとお戻りになられたという―――”


 その欲望にまみれた男が確か―――ロギウス!

 伝説の罪人―――神に逆らった男。

 でも、ディルと何の関係が?

 悩んでも悩んでも、きりがなかった。

 そんな悩んでいる顔を見た両親は


「まあ、なんにせよ、よかったわ。 あなたが無事で―――」

「そうだな。 よかったよ……」


 そういって、父と母は再び涙を流す。

 今まで心配かけてごめんね……

 そう思うと自然に涙が出た。

 そして


「ごめんね」


 と俺は言っていた。



 とにかく、あの世界へ行った場所に行ってみれば、何か分かるかな?


「あのさ―――事故現場見に行きたいんだけど、いいかな?」


 すると、母と父は、顔を真っ赤にして。

 ダメ、と言ったのだが――――必死に頼み続けた結果、リハビリが済んでから、と最終的には折れてくれた。

 俺はその条件をクリアすべく次の日からリハビリに専念した。

 1週間かかったが、走れるレベルまで回復できた。

 そして、俺は事故現場である中学校へと行く。

 そこにはかつての友人たちはいなく、すでに廃校になっていた場所だった。

 そして、あの爆発の後何もしなかったようで、2階の理科室には大きな穴が空いている。

 そこに俺は足を運ぶ。

 理科室―――俺の運命を変えた場所。

 そして、あの世界へ移動した場所。

 ここにあった、様々な研究のレポートや、俺の当時使っていた参考書が焼け焦げて散らばっている。

 そして、ガラス器具なども―――あの世界……[魔がさす楽園]。

 本当にあれは夢だったのだろうか?

 夢だったら、記憶にない空白の13年間は何をしていたんだろう俺――― 


「俺は―――何をしていたんだろうな」


 そう言った瞬間、俺は激しい頭痛に襲われた。

 キーンと耳鳴りもして、足元がふわふわしたような感覚に襲われ、その場に倒れこんでしまった。


「あぁぁぁぁ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


 痛い。

 痛い痛い。

 痛い痛い痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼


「何なんだよ、これ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


 ズキン、としたのを最後に、痛みは引いた。

 一体なんだったのだろうか?

 そして聞き覚えのある声がした。


 ”翔琉くん―――”


 誰だ?

 いや待って、その声は―――フルート?


 ”翔琉くん―――この魔法が発動しているってことは、やっぱりそうなってしまったって事なんだね……”


 フルートの声―――という事は、あの世界での出来事は夢じゃなかったんだ‼


 ”この魔法は以前、君に記憶のコピーをしたときに、もしもの事を考えて仕込んでおいたものだ。 メッセージだけを伝えるだけの魔法だから、君の声は聞こえないし、私も君の質問などには答えられない一方的に私がしゃべるだけのものだ。 そこを最初に分かっていてほしい――――”


 ああ。

 承知した。


 ”早速だけど、この魔法が発動したということは君は現代に帰れているということだろう―――まずは、おめでとう、と言っておく”


 まあ、元の世界には戻れたけど―――でも、時間軸はめちゃくちゃだ。

 俺の時代じゃない。

 こんなのは、別の世界と言ってもいいくらいだ。


 ”さて、この魔法の発動条件は、君が元の世界に戻って、さらにディルに何かが起こった時に発動する魔法だ。 もしこれが発動しているということは、やはりあの時のディルはすでに―――”


 すでに?


 ”すでに何者かに憑りつかれていた、と言うことなのだろう。”


 え?

 フルートは気づいていたの?


 ”実は、私の家に来た時―――ディルの中にうっすらではあったのだが、邪悪な者の気配を感じてはいた。 でも、それはあの時密漁者どものものだと思ってしまったんだ”


 確かに、あの時密漁者が来ていた―――だから、フルートは勘違いをしていたということか?


 ”でも、やはり気になってね。 直接調べると、ディルの中の何かに感づかれてしまう―――と言うわけで、あの場において君にしか仕込む時間はなかった。 その点に関しては反省している。 すまない―――”


 いいや、フルートのせいじゃない。

 一緒にいたのに気付けなかった俺にも非はある。


 ”一番痛い方法になってしまった事を深く詫びよう”


 うん、それは謝れ。


 ”そして、もし君がそのことで悩んでしまった際―――ディルを助けに再びこちらの世界に来たいと言うなら、その手段を教えるけど―――どうする?”


 俺は―――ディルを助けたい!

 助けてくれた仲間に恩返しがしたい!

 それに、元の時間軸に返してもらわないと、困るし。


 ”――――君ならそういうと思ったよ”


 教えてくれ!

 どうすればいい?


 ”君がこの世界に来た時に、君がいた世界での、君のいた場所で、7人の大魔導士の名前を言えばいい。 それも、属性順に。 炎・水・雷・闇・氷・風・地の順番だ。 そうすれば、オールドアが君の前に現れる―――これが君の世界からこちらの世界に来れる、方法だろう。 他にも方法はあるけど―――今の君にはそれでいいだろう”


 ああ。

 ディルを助けるために俺は[魔がさす世界]へ再び行くよ。


 ”もしこちらの世界に来たらまずは私を訪ねてくれ。 そうすれば、取りあえず君の力になるよ”


 ありがとう、フルート―――


 そして、フルートの声は消えた。

 魔法が切れたのだろう。


「じゃあ、行きますか![魔がさす世界]に。 悪いな。 翼―――お兄ちゃん、また、ちょっと出かけてくるわ。 母さんと父さんをよろしく頼む!」


 俺は理科室に書置きをした。


 {父さん、母さん、そして翼へ。少し旅に出ます。でも、安心してください。必ず帰るから。俺の帰りを待っていてください。  翔琉}


 そして、せっかくだから、不老不死の研究成果も、忘れないようにメモしておこうっと。

 よし! じゃあ、行こう。


「エン・リュウ・ライ・ホルブ・ヒョウ・トルネ・グラン!」


 すると、俺の目の前に光の扉が現れた。

 そして俺はその扉に進んでいくのであった。

 待っていてくれ!

 みんな!

 今一度、あの世界へ戻るとしよう!

 いざ、反撃開始だ‼

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